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10 海が囁いている

神殿前の魔熊との攻防


「我は練る練る大地の恵みに大いなる慈悲を《土壁》」


アルパインの前に《土壁》が現れた。


「この《土壁》は! まさか?! ランの? 」


「閣下! ご無事でしょうか! 我ら聖戦騎団! 助太刀致します」


アズールと聖戦騎団三十人が参戦する。


「お前らは、エメラルド翁の孫? アズール殿か! 」


アルパインは一瞬勘違いした。


土系統の魔術はランベルトの十八番であった。


(おれは、馬鹿にもほどがある)


(しっかりしろ)


「神殿には我らの女神ラザア様が、女性の試練を戦っておられる! 皆! 熊如きに邪魔はさせるなよ! 」


「「「オオオオオオオ! 」」」


 聖戦騎団の士気は高い。


「「「ガウウウウゥ! 」」」


 だが、魔熊はたかがか三十人程度の餌が来たところで怯まない。


「ぐううううう!」


「がふっ! 」


 聖戦騎団が押されている。よく見れば彼らは所々に包帯が巻かれている。彼らは、神殿で治療を受けていた団員達である。正直に言って皆、中~重症で本来なら安静が必要な状態である。


「怯むな! 我らは今、まさにラザア様の為に戦っている! 聖戦騎団としての本懐である! 人生でこれ以上の見せ場はないぞ! 」


「その通りだ! 」


「ラザア様に頂いた『回復薬』や『魔力回復飴』にかけて! 」


「終わったら、憧れのラザア様にサインを貰うんだ」


「お言葉を頂くんだ」


「もしかしたら、頭撫でて頂けるかもしれないぞ!」


「手作りのお菓子とかくれるかもしれないぞ! 」


「あの手が捏ねたお菓子を俺は食べるんだ! 」


 聖戦騎団の士気は更に高まったが、状況は危うい。




「待て! お前たち! ハイになりすぎだ! 命を粗末にするな! 」


 アルパインが叫ぶが、聖戦騎団に声は届かない。


「正義は我にあり! 」


「我ら! ラザア様の為に! 」


「「「東の女神ラザア・ウェンリーゼ様の為に! 」」」


 聖戦騎団は命懸けの推し活をしている。


 しかし、悲しいかな。一人、一人と戦闘不能になるものが続出した。


「ガルラアアアア! 」


 一回り大きな恐らく群れのボスであろう魔熊は、援軍である聖戦騎団を見掛け倒しと判断したのだろう。


 後衛にいた魔熊も含めた二百七十体全軍で総攻撃を仕掛けた。


(くそう! 撤退もできん! )


(ワシのようなジジイが死ぬならまだ分かるが! )


(若い連中が死ぬのは耐えられん! )


「ドウラララアアアア! 熊ども! これを見ろ! 」


 アルパインが足元にあった『現代版流体金属』を丸く変形させた。


「こいつは、古来の死神って言われた『爆弾』だ! 熊どもお前らすべて道連れにしてやる! 」

アルパインかは物凄い圧を感じる。

「ガウゥゥゥゥ……」

言葉こそ分からないがアルパインの気迫に魔熊達は一瞬たじろいだ。


「閣下! お待ちください! 」


「親父! 待ってくれ! 俺が代わりに! 」



「お前らはだまっちょれ! 息子たちを先に死にいかせる親がどこにいる! 死ぬ順番はもう決まってるんじゃ! もう、あいつらに置いてけぼりはもう! たくさんだ! 」


アルパインは止まらない。

(生まれてくる息子の顔見たかったが)

(若いやつらが俺の前で逝っちまうのは耐えられん)

(なぁ、ボール、ラン、お前らもそう思うだろう)


「うおぉぉおおお! ! くたばれ熊どもがぁ! 」

アルパインが突撃した。




それは奇跡というものだったのだろうか。

夢か幻か。


遥か東から内陸に潮風が吹く。


バシュン

その刹那に、アルパインの後方に八つの光が弾けた。


誰かがアルパインを後ろから止めた。

いや、動けなくした。

「誰だ! ワシを止めるな! 『ゴン! 』イタッ! イタッ! イタッ! 何しやがる! 」

後ろからアルパインに向かって複数人が拳骨を食らわす。この場で最上位者であるアルパインにこのような無礼を働くのは、軍法会議でいえば通常死罪である。


「ガウゥ! 」

五体魔熊がアルパインに襲いかかる。


「止めるな! 殴るな! 熊が! 」


『正射必中・五月雨』

その声はアルパインの脳を混乱させた。

何故ならアルパインの耳はその声の主を知っている。

男からしたら、いけ好かない女ったらしなそれでいて、ハンサムなその声を。


シュッ!

「「「「ガウゥ! 」」」」

一瞬で魔熊五体の眉間に正確無比な光の矢が放たれた。


「なんだ! ? 魔力の矢? 」

アルパインは目を疑った。

魔力の矢を発生させる弓をアルパインは知っている。


皆中(かいちゅう)

・種類 弓 〖古代アーティファクト〗

・ 効果とストーリー

古代の弓当ての名人が使用していた弓、一説には天界の神樹の枝を聖獣が神に供え、その枝を削り作られたといわれている。


的まで28メートルの距離ならば〖必中〗命中補正(極大)


的まで28~60メートルの距離ならば〖正射必中〗正しい姿勢で射てば命中補正(中~大)


自身の魔力を矢として放つことができる。通常の矢を放つことも可能。


ベルリン家秘蔵のアーティファクトにしてハンチング・ベルリンが息子に託したジョーの苦手な弓であった。



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