第84話
「な、なんですかこれは!」
「う、動けません!」
「ねばねばしますわ!」
オークに洗脳されたばかりの女たちの体の周りには、白い糸が巻きつけられていた。
「な、なんだこれは!」
「驚いたか。その糸は僕の優秀な仲間のビーストが放ったものだ」
高渕は天井に指をさした。
そこには巨大な蜘蛛の糸にぶら下がっている一人の女子生徒の姿があった。
彼女こそ東高生徒会副会長、須藤静姫だ。
岩井が突如現れた高渕、細山、眞城の三人に注目している間に、ばれないように天井に移動していたのだ。
そしてオークの洗脳攻撃を発射したと同時に彼女の使用する蜘蛛のビースト・アラクネの吐いた糸で体を拘束したのだ。
「頭脳プレーでは、こちらが一枚上手だったようだな。観念しろ、お前一人では俺たちのビーストには勝てない」
「素直に警察に自首することをお勧めします」
「これ以上の悪行は僕たちが許さない!」
「諦めた方がいいわ」
高渕、須藤、細山、眞城の四人が岩井を追い詰める。
「おのれぇ……ならばそこの二人を洗脳してやるまでだぁ!」
「くるぞ!」
オークの鼻からピンク色のビームが放たれる。
そのビームは女性である須藤と眞城の二人に向けられていた。
「ふはははは! 女の仲間を連れてきたのが大失態だったな!」
「そうは!」
「させない!」
須藤と眞城を庇うように高渕と細山が前に出た。
そのおかげで女子二人はビームにヒットすることなきを得たのだ。
「あなたがそういう手段を取ることは把握済みです。あなたのビースト能力は女子のみに効果が発動される。つまり男性に当たっても意味はないってことね」
須藤が得意げに解説するが、何やら高渕と細山の様子がおかしかった。
「どうしたんですか、会長?」
高渕と細山が何故か見つめ合っていた。
「…………」
「…………」
ギュッ。
しばらく見つめあった二人は、いきなり抱きしめ始めた。
「どどどどどどどうしたんですか会長!? 細川くん!?」
「な……」
狼狽する須藤。それに対し眞城はポカンと口を軽く開けた状態だった。
自分たち以外にも見ている輩がいるにも関わらず、男二人はいきなり体を密着し始めたのだ。
「くっくっく……まさかオークにこんな能力まであったとはな」
岩井自身もどうやら自分のビーストの能力を知り尽くしてはいなかったようで、このような事態は想定外だったようだ。
「怪我の功名とはまさにこのこと。天は僕に味方をしていると見たよ!」
予期せぬ出来事とは言え手柄を立てたオークの頭を優しくなでる岩井。
「会長! 細山君! いい加減離れてください!」
高渕の腕を引っ張って細山から引きはがそうする眞城だったが、須藤はなにもしなかった。
「副会長も手伝ってください! このままでは――」
眞城の口が止まってしまった。
なぜなら須藤の鼻から鼻血が流れているのを見てしまったからだ。
「副会長、どうしたんですか? 鼻から血が出ていますよ?」
「え? …………はっ!」
手で自分の鼻を触れることで初めて自分が鼻血を流していることに気が付いた須藤。
「ち、違うのよ! 別に予想もしなかったシチュエーションだったからつい反射的に興奮していたとかそんなんじゃないから! 別にどっちが攻めでどっちが受けなのかを想像してたわけじゃないから!」
普段は眞城並みにクールを装っている須藤だが、彼女には「BL好き」という趣味を持っていた。
以前も西高で偶然永一と陽介と出会った時も、「どちらが攻めでどちらが受けか」と想像して楽しんでいたこともあったぐらいだ。
「とにかくこのままではラチがあきません。みなさん、お願いします!」
須藤の合図で登場したのは永一たちだった。
「待たせたな! 決着をつけてやる!」




