第85話
俺たちは何かあった時のために施設の中でスタンバイをしていたのだ。
副会長である須藤の合図で俺と陽介、聖来の三人は岩井の前に姿を出した。
最初は生徒会の四人が岩井に仕掛けるということだったが、どうやらうまくいかなかったか、何かしろのハプニングが起きたということだろう。
……どうやら今回は後者のようだ。
「なんであいつ抱き合ってんだよ!」
俺たちの目の前で、高渕と生徒会の書記である男子生徒(たしか名前は細山)は抱き合っていたのだ。
「ホモだホモ!」と陽介が指をさし、聖来は恥ずかしそうに顔を背けていた。
「どうしてこうなっちまったんだよ!」
俺の放った疑問になぜか鼻から血を流している須藤が答える。
「どうやらあのビーストは女性を洗脳させるだけでなく、男性になんらかの影響を与えてしまうようですね」
なんらかの影響、というのは男と男が抱き合っちまうということなのだろうか。
だとしてもこの絵面は見たくない。
「目を覚ましやがれ!」
抱き着いたまま離れようとしない高渕の頭に空手チョップをお見舞いする。
「いててて……なにをするんだ。暴行罪で訴えるぞ」
「こっちだって空気読めないガチホモ罪で無期懲役にするぞコノヤロー」
高渕にかけられた洗脳? は解けた。どうやら軽く頭を殴れば元に戻るらしい
ならばもう一人の方の洗脳も解いてやらんとな。
「いてっ! 何をするんですか! ていうか今まで僕は一体なにを……」
「あんたもあいつのビーストの攻撃を受けていたんだよ」
「そうだったんですね。しかしなぜでしょう……不思議と胸がドキドキしています。会長と抱き合っていたような、そんなおぼろげな記憶があるんですよ」
「うん忘れろ」
「わかりました。きっと夢か幻ですね。でもそれがもし真実だとしたら……僕ぁイッコーにOK――いや、なんでもないですっ」
なんてことだ。ここにいま本物のガチホモが生まれようとしているじゃないか。
これも岩井のビーストの力だとすればいろいろとめんどくさいな。
「まー要するにだ。あいつのビームに当たらなきゃいいことだろ。簡単じゃねーか」
まさに陽介の言う通りだ。
男だろうが女だろうがどうにかしちまうあのビームに当たらないように戦えばいいだけの話だ。
それならば移動スピードが自慢の俺のフェンリルが一番有利だろう。
「こいや! フェンリル!」「フェェェェン!」
本来なら俺たちに襲いかかってくるであろう女たちも副会長さんたちのビーストのおかげで身動きが取れない状態だから気にすることなく戦うことができる。
「覚悟しろ! お前のふざけたハーレムごっこもこれで終わりだ!」
「くそ、なめるなよ! オーク! やれっ!」「オックゥ!」
奴のビーストが大きくジャンプして鼻からピンク色のビームが発射される。
また副会長たちを狙っているのか、それともわざと俺たちに当てて場を混乱させようとするつもりなのかと思ったが、どちらも違っていた。
あいつは拘束されている状態の女連中にビームを当てたのだ。
「バカな!」
洗脳をしたところで身動きが取れない上に眠っている彼女たちにそんなことしても無意味なのに、あいつは全員にビームを当てたのだ。
「う、うぅぅぅぅ……」
「はぁぁぁぁぁ……」
「きししししししし」
ビームを当てられた女たちがうっすらと目を覚ましながら奇妙な声を上げている。
その目にはハートマークが浮かんでなく、真っ赤になっていた。
「「「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
俺は目を疑った。
アラクネの糸で拘束されている女たちが、自らの力だけで、その糸を引きちぎったのだ。
「す、すげぇ……あいつらのどこにあれだけの筋肉が!?」
「いやそこじゃねぇだろ!」
両目をキラキラと輝かせているアホの陽介。
しかし問題は華奢な彼女たちがなぜあれほどの怪力を突然発揮できるようになったのか。
原因があるとすればただ一つ。
「お前、女たちに何をした!?」
「いやなに、若干ピンチだったから再び洗脳してやったまでだよ。最も、人間の体のリミッターを外せるぐらい強めの洗脳をしてあげたからね。今の彼女たちは目的を滅ぼすまで戦い続ける狂戦士と言ったところかな?」
「こぉの、外道野郎が!」
あいつはハーレムの王でもなんでもねぇ。
人を人と思わない最低最悪のクズだ!




