第81話
「いけぇ! ヨルムンガルド!」「ガルドォォォォォ!」
ヨルムンガルドの吐き出す冷たい風が施設内の気温を一気に下げた。
凍える体を守るためにその場でうずくまる女たちと岩井、そして俺と高渕。
そう、思いっきり巻き込まれているのだ。
「さささささ寒い寒い! おおおおお俺たちまで氷漬けにするつもりか!」
「だったらさっさとそこから離れな!」
「たくっ。君の仲間は頭でっかちばかりだな!」
「頭でっかちは陽介だけで十分だって言ってるだろ!」
体は寒いが何はともあれチャンスはチャンスだ。
今にも氷漬けにされるのではないかと思うくらいに冷え切った両足を聖来のいるところまで何とか前進させる。
こうして俺たちは押し寄せる女たちの脅威から脱出することができたのだ。
◆
「しかしどうしたものか……」
俺たちは今、喫茶・安心地帯にいる。
聖来の助けがなかったら間違いなく集団リンチにされていたであろう。
そして今俺たちは高渕を含めたメンバーで作戦を立てているのだ。
「しかしどうしたものか……」
「それはさっきも言っていたぞ」
「知ってるよ分かってるよいちいち言わなくていいんだよ!」
こちとら「嫁嫁クラブ」というふざけた施設を壊滅させるにはどうすればいいか考えているのに隣でコーヒーをすすっている高渕が横やりを入れてくる。
「ふー……ならば僕にいい考えがある」
コーヒーカップを置いた高渕がそう言ってきたが、それは果たして本当に成功するのかな? とふと思ってしまった。なぜなら今言ったセリフを言ったらだいたい失敗する、というジンクスがあることをどこかで聞いたことがあるからだ。
「あー、まぁ頭のいい生徒会長様の考えとやらを聞いてみたいけどよぉ……」
俺は一つ、大切なことを思い出してしまったのだ。
「陽介はどこだ?」
「へ? お前ら一緒に行ったんじゃねぇのかよ。私はチェックに言われてお前らを助けに行ったけど、その途中に陽介はいなかったぞ?」
「そう言えばあそこから逃げる途中陽介の姿がなかったよーな……あいつ一体どこに?」
「おー! やっぱりここにいたか!」
勢いよく扉が開いたと思ったら、そこから姿が見えたのは陽介だった。
「お前今までどこにいたんだよ。さっきお前の話してたんだぜ?」
「わりーわりー! あれからあの筋肉ねーちゃんと二人で筋肉について語り合ってたんだよ! そしたらいきなりお前らが走ってどっか行っちまったじゃねぇか! 俺を置いてけぼりにするなんてひでーぜ!」
そういえばこいつは施設の前で門番をしていた女と謎の筋肉張り合いをしていたんだった。
俺たちはそれに乗じて嫁嫁クラブへと侵入できたわけだが……
「あの女も岩井に洗脳された一人、なのか?」
「だとしたら命令に対して忠実なはず。彼の登場がきっかけで洗脳が少し解けた? まだ完全にはわからないがあいつの洗脳能力も完璧ではないということか……」
探偵のように手を顎に当てて深々と考える高渕。
「それよりもよ、お前がさっき言ってたいい考えってやつを聞かせてくれや」
「ああそうだったな。では単刀直入に言おう。君たちの力を貸してほしい」
「なに?」
「へ?」
「は?」
俺と陽介そして聖来が高渕の意外な言葉を聞いて首を傾げた。
「正直僕としては君たちのような輩と組んで行動するのは非常に非常に非常に非常に心苦しいわけだが、相手のビースト使いの戦力が僕の思っていたよりも上だとわかってしまった以上こちらも手数を増やしたい。そこで提案なんだが、君たちと僕たち生徒会でチームを組んで嫁嫁クラブなる施設を叩き潰そうではないかと考えているのだ」
「お前……そんなに俺たちと組むのが嫌なら無理しなくていいんだぜ?」
高渕が俺たちを嫌っていることは十分理解した。
だがこいつの言い分もわかる。
戦力アップか……それに東高の生徒会メンバーのビースト能力も知ってみたいし……
「わかった。お前らと協力するよ」
ここはいっちょ不良&優等生のビーストチームで戦うことにしますか。




