第80話
「さぁ行け! 僕の下僕たち!」
「「「「「「「「「「はい! 克也様!」」」」」」」」」」
多数の女たちが波のように襲い掛かってきた。
これが全員俺のファンの人たちと言うのであれば嬉しい話かもしれないが、あいにくこの女たちは全員金属バットやスタンガンといった物騒な武器を持ってやってくるため素直に嬉しいとは思えない。
下手したら自分の命に関わるほどのピンチに俺の脳内には「逃亡」の二文字が浮かんでいた。
「もうだめだ! 逃げるぞ高渕!」
「そうしたいのはやまやまなんだがなっ!」
それ以前に高渕はもうすでに他の女たちと戦闘を始めていたのだった。
逃げようにも逃げられないこの状況。
俺はやむを得ずフェンリルを召喚することにした。
「こいや、フェンリル!」「フェェェェン!」
いつものように狼のビースト・フェンリルが召喚された。
「な、なんですかあれは!?」
「お、狼? なんでこんなところに!?」
「た、食べられますわぁぁぁぁぁ!」
突如として出現した狼のビーストに突然女たちは腰を抜かす。
「ビースト? ほう、驚いた。僕以外にもビーストを操る者がいたとはな」
驚いていないのは当然岩井克也ただ一人だ。
大概のビースト使いはみんなそう言うが、俺はもう慣れてしまっている。
「ならばその力、なぜ我欲のために使用しない? ビーストの力はいいぞ。力で他者を思い
通りにできる」
たしかにフェンリルには女を洗脳する能力は存在しないが、暴力によって誰かを支配
することは容易いだろう
実際にそんなことをしている奴はいた。
吉岡朔朗という男だ。
あいつは蛸のビーストを使い、イジメを繰り返していた奴らに復讐をしていた。
本人はそれで満足していたようだが、俺はそんなふざけた奴と同じになるつもりはない。
「俺がビーストを召喚する理由は、お前みたいな奴を懲らしめるためなんだよ! そうだよな、高渕!」
「一般人に向かってビーストを使用するのは気が引けるが、こんな状況じゃやむを得ないな!」
そう言って高渕もビーストを召喚した。
「来たれ! 我が忠実なる僕!」「ルダァァァァ!」
施設の中に狼と鷹のビーストが出現したことによって、武装した女たちもさすがに戦う気をなくしたようだ。
「ひぃぃぃぃ!」
「こんなの勝てませんわ!」
「克也様助けてー!」
純粋に驚くもの、敗北しか見えていない者、岩井に助けを求める者がぞろぞろ現れる。
そうか、わざわざビーストの力を使わなくても、ビーストの存在自体が強烈な脅しとなっているんだ。
しかし――
「関係ない、やれ」
岩井は高圧的に指示を出した。
それと同時にオークの鼻から再びビームが発射され、女たちはそのビームの餌食になってしまう。
「おまかせください克也様……」
「たとえこの身が朽ちようと……」
「必ずあなたの希望にこたえて見せます……」
再び強い洗脳を当てられてしまったのか、さっきまで弱気だった女たちがビーストを前にしているにも関わらず、一歩一歩と近づいてくる。
試しにフェンリルが「フェェェェン!」と咆哮してみるが、それでもひるむ様子はない。
これじゃまるでロボットだ。
命令を確実に実行するために動かされているロボットのように見えてきやがる。
「「「「「「「「「「死ねぇぇぇぇぇ!」」」」」」」」」」
一斉に襲いかかってきて、もう駄目だと思ったその時、背後から強烈な冷たい風が吹いてきた。
後ろを振り向くと見慣れた女が俺たちの前に現れていた。
「たくっ! 情けねぇ奴らだな! こんなところでもたもたしてんじゃねぇよ!」
松浦聖来参戦!
まったくいいタイミングだぜっ!




