第78話
「一体何者だい君たちは?」
施設内で見つかった俺と高渕の前に現れたのは、さっきまで複数の女に囲まれていたこの施設の主だった。
「あんたが岩井克也か?」
「そうだけど、なんで僕の名前を知っているんだい? この施設のことは他言無用だと命
令しておいたんだけどなぁ……まぁいいや」
気づけば俺たちの周りには複数の女たちに取り囲まれてしまっていた。
「ようこそ『嫁嫁クラブ』に。と言っても君たちはここで消えてもらうけどね」
消えてもらうという尋常じゃないワードに俺は固唾を飲んだ。
「おいおいここはあんたが女とイチャイチャするための施設だろ? それなのになんで俺
たちが消えなくちゃならないんだよ」
「理由ならハッキリしている」
高渕が顎で何かを指していた。
その先には注射器と白い粉がテーブルの上に並んでいた。
「ここでは『突風』と呼ばれている覚せい剤が使用されていることは調べがついている。そ
のことを僕たちが警察に報告すれば自分たちの存在が危うくなるのは必然。だからここで
始末する、そういうことだな」
「ご名答」と言いながら拍手する岩井。
「まぁでも? 警察が介入してきてもさ、あいつらは何もできないと思うよ? なんでか
って? 僕のレディたちが守ってくれるからさ!」
すると周りに立っている女性たちは皆一斉に様々な武器を取り出した。
木刀、スタンガン、ナイフ、鉄パイプなど、ガチで喧嘩をする際に使用する得物ばかりだ。
「あんたどこかの組にカチコミでも行くのかよ。しかも女ばかり揃えやがってさ。恥ずかし
くねーのかよ、女に守ってもらってばかりでよ」
「レディたちは僕にとって恋人でもあり道具でもあり捨て駒でもある。この中の一人が連
行されたとしても『本望です』と答えるのさ。それが僕の忠誠の証ってやつ?」
「何が忠誠だ。どうせビーストの力でこいつら全員洗脳かなんかしてるんだろ!」
俺がそう言うと岩井は一瞬ピタリと動きを止めた。
「……へぇ。知っているんだ、ビースト。これは僕だけの力だとばかり思っていたけどさぁ
……いやぁいるところにはいるんだねぇ」
すると岩井は右手に一枚のカードを出現させた。
「やっぱりお前ビーストで!」
「ああそうさ! 僕はこのカードを手に入れてから順風満帆な人生を送れているんだよ!
このカードのおかげで異性から好かれるようになり、このカードのおかげで働かなくても
生きていけるようになったのさ! このカードがあれば無敵! 僕の人生はバラ色同然な
んだよフハハハハハハハハハ!」
こいつは自分さえよければ他人の人生などどうなってもいいと考えていやがる。
つまり遠藤真久と同類の人間というわけだ。
だったら、手加減してやる道理はねぇ!
「人様の人生を足蹴にした人生なんて、クソだね! 覚悟しな! 今からてめぇをぶっ潰す! 覚悟しやがれ!」
「覚悟するのは君たちの方さ! いでよ! 僕のビースト!」
岩井のカードが光り輝き始めた。
一体どんなビーストが出てくるのかと思っていたが……思っていたよりそれは小さいビーストだった。
「こ、子豚?」




