第69話
「マンダァァァァァ!」
遠藤が召喚したビーストは、赤くて、細い、二足歩行の蜥蜴のビーストだった。
「私はこいつを手に入れてから順風満帆な人生を送ってきたのだよ。気に入らない人間やむかつく人間、睡眠を妨げるようなストレスを与えてくるようなウザイ人間をこいつの力で葬ってきた。そして今、君たちも私にとっては邪魔でしかない存在である故に、ここで死んでもらうよ?」
とうとう本性を表した遠藤。
向こうがその気ならこっちも遠慮をする必要はない。
「みんな! 召喚だ!」
俺の号令で、陽介と聖来が自分のビーストを召喚した。
「フェンリル!」「フェェェェン!」
「ミノタウロス!」「ミノォォォォォ!」
「ヨルムンガルド!」「ガルドォォォォォ!」
これで戦いは三対一だ。
こっちの方が圧倒的に有利な状況だ。
負ける要素がどこにもない。
「ふむ……君たちもビースト使いだったのかね。ならば手加減する必要はないだろう」
遠藤は俺たちの方に指をさして「やれ」と呟いた。
その一言だけでサラマンダーは口から真っ赤な炎を吐きだした。
「なにぃ!」
大きな灼熱の炎の餌食になったのは陽介のミノタウロスだった。
「ミノォォォォォ!」
ミノタウロスはその炎だけで強制退場してしまう。
「嘘だろ……俺のミノタウロスが一撃で……」
膝を地面につけて落ち込む陽介。
だがサラマンダーは容赦なく次の炎を吐きだそうと陽介に標準を合わせてきた。
「させるかぁ!」
抵抗したのは聖来だった。
聖来のヨルムンガルドの吐き出す氷がサラマンダーの全身を包み込む。
「どうだ!」
一瞬「やったか!?」と俺も思ったが、その予想は裏切られてしまった。
氷漬けにされたサラマンダーは一瞬でその氷を内側から破壊したのだ。
「ぬるいぬるい。その程度の攻撃サラマンダーにとってはぬるま湯程度にすぎないのだよ」
「くそっ! 続けろ! ヨルムンガルド!」
氷を砕かれてもなお聖来はヨルムンガルドに氷の息吹を吐き続けるよう指示した。
それに対抗するかのようにサラマンダーも口から炎を吐きだして攻撃を相殺させる。
氷と炎。
冷気と熱気のぶつかり合いはものの数秒でサラマンダーが勝ち取ってしまった。
「ガルドォォォォォ!」
炎攻撃に押し負けてしまったヨルムンガルドは全身を焼かれてビーストアウトになってしまう。
「弱い弱い弱い弱い。君たちはその程度の力で私をどうこうしようと考えていたのかね?」
サラマンダーの口が聖来に向けられる。
このままでは聖来が尾坂の二の舞を踏んでしまうだろうと思った瞬間、俺はアイツに指示を出した。
「今だぁ! チェックぅ!」
「任されたぜ!」
チェックは聖来を庇うようにサラマンダーの前に立ちふさがると同時に自身のビーストであるネメアを召喚した。
「メアァァァァァ!」
そしてすぐさまネメアの能力であるバリアを出現させたのだ。
そう、すべてはこのためだったのだ。
チェック曰く尾坂を殺したビースト使いは俺たちよりもはるかに実力が上だということがわかっていた。
なのでこちらのビーストが一、二体倒されてしまうことが目に見えていたであろうチェックがこのような提案をしてきたのだ。
「隙をついてオレっちのネメアで返り討ちにする」という提案を。
今がその絶好のチャンスだった。
相手が俺たちを格下だと思い込んでいるその時にネメアのバリアでカウンターを仕掛けるという相手の不意をついた反撃作戦だったのだ。
「なにっ!?」
これには余裕をこいていた遠藤も油断していた。
「よっしゃ! そのまま押し返しちま――」
「なぁんてね」
サラマンダーの炎はネメアの発生させたバリアを貫通させて、ネメア本体の体を焼き尽くした。
「メアァァァァァ!」
悲鳴を上げると同時にビーストアウトしてしまうネメア。
「な、なんてことだ……オレっちのネメアのバリアを上回るほどの攻撃力だと……一体お前、自分のビーストをそこまで成長させるために、何人もの人間を殺してきたんだ!」
「そんなものを数えるくらいなら、ひつじの数を数えて眠りについた方がよっぽど意味がある。もっとも、ひつじの数を数えれば眠りにつけるというのは迷信だがね」




