第66話
ここのところ気分がいい。
なぜならストレスを感じる面倒な出来事が起きていないからだ。
仕事も順調に進んでいるし、大それたトラブルが発生することもない。
ああ、なんてすがすがしい気分なんだ。
おかげで毎日心地よい安眠を取ることができている。
それもこれも私の最愛のビーストのおかげなのだ。
ビーストは私が邪魔だと感じる人間を一瞬で消してくれる。
タチの悪い不良も、あおり運転を繰り返すカスも、口やかましいクレーマーも、上級国民を語るクソガキも、すべてこの世から消してくれるのだ。
私にストレスを与えてくる腐った連中さえいなくなれば、余計なストレスを感じることなく平和な毎日を過ごすことができる。
つまりトラブルを運んでくる人間を片っ端から殺してしまえば私は死ぬまで幸せに過ごすことができるのだ。
心の濁りがなければ大金なんて必要ない。
私に必要なのはストレスのない安全で完全な生活の日々。
私はそんな生活を繰り返して早二十年。
ストレスのない平穏なる安眠を望むために消してきた人間の数は……数えたことがないなぁ。
しかしそんなことはどうでもいいのだ。
私は私の人生さえ充実していれば他人の人生などどうでもいい。
そして私はこれからもストレスのない人生を送るために、ビーストの力を利用し続けるのだ。
◆
「あんたが遠藤真久か」
ある日夕方、南高の制服を着た三人の学生が私の前に現れた。
一人は私よりも少し背の小さく、もう一人は私よりも背の高いうえに筋肉質な体をしている。そしてやたらと私のことを睨みつけている少女が一人。
「なんだね君たちは?」
「なんだねじゃねぇよ。俺はあんたのことを聞いたんだ。あんたが遠藤真久かどうかYESかNOで答えろや」
「ふむ……とりあえずYESと答えよう。それで?」
瞬間、少年の拳が眼前に飛んできた。
「くっ……」
私はそれをギリギリで回避するが、隣にいた少女がすぐさま私の懐に入ってきて、腹部に蹴りを入れられた。
「ぐぅ!」
顔も知らない見ず知らずの少年少女にいきなり暴力を繰り出されてしまった。
まったくもって理不尽すぎる。
「な、なんだね君たちは……誰かに恨みを買っているのならば人違いじゃないかね?」
「人違いなもんかよ。あんたが自分で認めたんだぜ? 遠藤真久ってな」
そう言ったのは筋肉質の少年だ。彼はなかなかいいガタイをしているにも関わらず暴力を振るってくる様子はない。
「ならばなぜ私をこんな目に合わせるのだ? 私がなにかしたのか?」
「したのかだぁ? だったら思い出させてやるよ!」
少女が一枚の写真を見せた。
「私の兄貴はなぁ、お前に殺されたんだ!」




