第65話
「君の存在ははっきり言って害悪だ。君のような口やかましい存在がネチネチネチネチ嫌味を言われるこちらの身の気持ちを少しでも考えたことがあるかい? 考えたことがないようねぇ? 生まれがよかっただけで人生を勝ち誇っているクソ自己中野郎になんか私の気持ちなどできるはずがないのだよこのウスノロが」
「あ、あんた誰に向かってそんな口を聞いてるんだ! お前なんか俺の一言で生かすも殺すも――」
「今は私がしゃべっているんだぁぁぁぁぁ! 貴様は一ミリたりとも口を動かすんじゃあないぃぃぃぃぃ!」
「――――!」
私の目の前にいるクソ少年は両手で口を塞いで小さな声さえも出すことを封じた。
優位な立場に立っていた少年の目尻には涙が溜まり、足はガクガクと震え初めていた。
「ふむ……利口だ。しかし君はさんざん私のことをイジメてきたね。君の生産性のない無意味な行為の連続によってストレスがたまりにたまって交感神経が必要以上に刺激されてしまったではないか。こんな状態じゃぐっすり眠ることができない。君はその責任を取ってもらうよ」
私は自分の手を前に出した。
その手には何も握られていないが、ほんの一瞬で手の内に一枚のカードが出現したのだ。
「そ、それは! それはぁ!」
なんの前触れもなく現れた一枚のカードにより、少年はこちらを指さしながら後ずさりをし始めた。
このリアクション。マジックを魅せられた時の反応とは違う。
まるで前にも味わった苦痛や痛みを再び目の前にしたような、そんな感じがする。
「むぅ……君はこのカードのことを知っているようだね?」
まぁ彼がこのカードによってかつてどんな思いをしてきたなんてことは私には関係のないことだ。
私が今行わなければならないこと、それは私をイラつかせた彼をこの場で駆除することだ。
「君がここで死ななければならない原因はたった一つ、この私を敵に回したということだ」
私はそう言った後、カードを持った手を真上に振り上げた。
「いでよ! 我がビースト!」
カードの中から出現したのは一匹の真っ赤なビーストだ。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
ビーストの姿を見た少年はすぐにその場から離れようと走り始めようとしていた。
それに対し私はすばやく彼の襟を掴んで動きを止めた。
首が絞められることによって出られる「ぐえぇ」と気持ちの悪い声を出させて私は彼の逃
亡を阻止した。
「どこへ行こうというんだい? 処刑はまだ始まったばかりだぞ?」
「ご、ごごごごめんなさい! もうあんな生意気な態度はとりません! 許してください! お願いします!」
両目から大量の涙を流しながら懇願しているが……
「NO、NO、NO。今更そんな反省をしてもだめなんだよ?」
私は許すつもりなどカケラもなかった。
「私に精神的ストレスを与えることは殺人よりも罪が重いんだ。君はそれを償わなくてはならない、わかるね? つまり死ねってことさ」
私はこれから目の前の彼を殺す。
それはこの日の安心なる安眠を意味するのだ。
◆
問題は解決した。
心の中にスッとさわやかな風が吹くのを感じる。
この感覚はまさにストレスという障害が心の中から消え去ったサインなのだ。
「さて、邪魔者を始末したもんだから予定が少し狂ってしまった。今日の買い出しにいかないといけないのだが間に合うだろうか……」
私はスマホを取り出し時刻を確認する。
するとトップニュースのおしらせが来ていることに気づく。
最新のニュースがくるとこのように自動的に連絡がくるアプリをダウンロードしているのだ。
「少年院から脱走者か……物騒な世の中だ」




