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今日日の不良はカードからビーストを召喚するんだぜ?  作者: スカッシュ
第5章 美しきシスター、薬島博美の正義! 編
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第58話

「俺を騙したなコノヤロー」

 両手を真っ赤になりながらもセベクの口を塞いでいたのに、高渕はセベク本体ではなく博美さん本人に攻撃をしてビーストを無力化したのだ。

 この手口は以前俺も使用したことがある。

 北高の吉岡朔朗というビースト使いと戦った時もビーストではなく、吉岡本人を叩いて黙らせたことがある。

 高渕は何の口裏合わせもなくビースト使い本人を狙うという戦い方をしていたわけだが……

「敵を欺くにはまず味方からだというだろう」

「おかげで俺の両手がえらいことになったんだぞ! ほら見てみろ!」

 セベクの口の隙間からあふれ出てきた熱湯をもろに浴びた俺の両手はジンジンとはれ上がって、今にも皮膚の内側から噴火した火山の如く血が噴き出るのではないかと思うくらい腫れこんでいるのだ。

「それに関しては僕も予想外だった。でも君なら大丈夫だろ?」

「大丈夫ってなんだよ! お前は俺を何だと思っているんだ!」

 確かにこれくらいの負傷は中林のユニコーンで回復できるから別に大丈夫だろうが、この他人を人間扱いしないこいつの上から目線は本当に腹が立つ。

「それよりも……」

 高渕は気絶させた博美さんの方を見下ろした。

 気を失ったことがきっかけでセベクもこれ以上の行動は不能と判断したのか、自動的にビーストアウトした。

「このまま彼女を放っておくわけにもいくまい。少し拘束させてもらうぞ」


 ◆


「む……ここは?」

 博美さんの意識が戻ったようだ。

「ちょ! なによこれ離しなさい!」

 俺たちがいるのは教会の中だった。

 博美さんの体は須藤が召喚した蜘蛛のビースト・アラクネの糸によってぐるぐる巻きにされている。

 両手だけでなく、両足も同時に巻かれているので完全に身動きがとれない状態だ。

「く……セベク! セベク来て!」

「無駄だ。あなたのカードは僕が回収した」

「返して! それは子供たちを救うための力なの! それがないとあの子たちは不幸に――!」

「あなたの行動は正義かもしれないが、僕たちから見ればこれはどうみても犯罪だ。それを自覚してほしい」

「そ、そんな……う、うわぁぁぁぁ……」

 身動きが取れない状態の博美さんは床に顔を付けながら子供のように泣き叫んでしまった。

「…………こいフェンリル」

 俺は静かにフェンリルを召喚した。

「……何をしている?」

 俺の行動が意味不明に見えたのか、高渕は俺の方を睨んできたがそんなことは気にしない。

 フェンリルは爪で博美さんの体に巻かれている糸を切り裂いた。

 体は傷づけないように糸だけを切って博美さんの不自由を解いたのだ。

「おい! なんてことをするんだ! 逃げ出したらどうする!?」

「心配ねーよ」

 俺は彼女がこれ以上抵抗するとは思わなかった。

 おもちゃを買ってもらえない子供のように泣きじゃくる博美さんを見てそう判断したのだ。

 俺は博美さんと目線を合わせて、一つ質問をした。

「なんでこんなことをしたんだ?」

 シンプルな質問してしばらくしてから博美さんが口を開いた。

「助けたかった……かつて私と同じ思いをしている子供たちを……助けたかったの」

 俺は改めて博美さんの過去を聞いた。

 それは俺がこの教会で世話になっていた時よりもずっと前で、博美さんが子供の頃の話だった。

 博美さんの両親は事故で失い、施設で暮らすことになったが、そこの職員がどうしようもないクズだったのだ。

 両親と仲良く暮らしていたのに、たった一つのきっかけで生き地獄を味わう羽目になった博美さんの前にビーストカードが現れたという。

「そうか……あんたも俺と同じだったんだな……」

 暴力を繰り返す親父から自分と母親の身を守るために俺はビースト能力に目覚めた。

 そこらへんはなんだか似ている気がした。

 話を全て聞いた高渕が「なるほどな」と納得した。

「僕には僕の正義があるように、あなたにはあなたの正義があったのですね。しかしやはり僕から見れば残念ながらあなたの行いは悪行でしかない。傲慢な大人たちから身を守ると言っても、所詮は誘拐でしかない」

 言い方はきついが高渕の言う通りだ。

「そもそもあなた一人の力でどうやって三人の子供たちを養うというのですか? 食費だけでなくその他多くの生活費もあなた一人でなんとかなるとでも? はっきり言って現実的ではない」

「そうね、あたなの言う通り子供たちを守るにしても私だけでは苦しかったわ。子供たちを救う術は持っていても、生かしてあげられるだけの術は持っていない……それでも苦しい思いをしている子供を見て見ぬふりはできなかったのよ」

 気持ちはわからないわけでもない。

 それでも罪は罪だ。

 遠くからパトカーのサイレンの音が鳴っているのが耳に入る。

 これから彼女は自分が犯した罪を償うためにしばらくこの教会を去ることになるだろう。

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