第54話
「誰だ!? 姿を見せやがれ!」
天井に現れた謎の存在に向かって指をさすが、相手は降りてくる様子はない。
その代わり相手ビーストから何かが発射された。
聖来のヨルムンガルドと同じように氷などを吐き出すタイプの能力なのだろう。
俺は反射的にその発射されたものをジャンプでかわした後、それを確認した。
「糸?」
それは白くてやや太いまっすぐ伸びた糸だった。
ただの糸ではない。糸の先は床にささっているのだが、ささっているというよりはくっついているようにも見える。
まるでのりやボンドをつけたような粘着さがあるのだ。
「なかなかやるわね」
天井にいたビースト使いが降りてきた。
かっこよく着地するのかと思っていたが足が床についた瞬間「きゃん」とかわいい声を上げながらその場でずっこけた。
「うわっ、かっこわる」
ていうか女だったのか。
しかもその女は東高の制服を身につけているじゃないか。
東高の生徒がなんでこんなところに?
「やはり慣れないことをするのはよくありませんね……ああ、眼鏡眼鏡」
眼鏡がないと何も見えないのか、彼女は自分の周りの床をさぐり始めた。
「……ほらよ」
眼鏡は俺のそばにあった。
それを拾って彼女に差し出すと「ありがとうございます」と礼を言われ、そのまま眼鏡を装着した。
「って、あんたどっかで見たことあるな……」
「そういうあなたも、以前どこかで……」
「そうだ思い出した! あんなあのクソ眼鏡インベーダー生徒会長と一緒にいた秘書っぽい女じゃねぇか!」
少年院からの脱走者でありビースト使いであった先原盛幸の情報を探るために、西高に向かったことがあった。
その時不運なことに東高の生徒会長である高渕清と遭遇してしまったのだ。
そしてその時、高渕と共に行動していたのが彼女だった。
「そういえばあの時自己紹介をしていませんでしたわね。私の名前は須藤静姫。東高で生徒会副会長をやっています」
副会長。あのクソ眼鏡インベーダーの二番手ってことか。
「俺は矢崎永一。南高の生徒だ……っていうかあんたもビースト使いだったのか?」
さっきの糸攻撃を見て思わず聞いてみた。
「……見られたからには仕方ありませんね」
天井に潜んでいた須藤のビーストが俺の目の前に現れた。
それは須藤が所有しているビーストは、一言で言うと大きな蜘蛛だった。
「蜘蛛のビースト・アラクネ。これが私の信頼できるパートナーです」
「なるほど。蜘蛛だけに糸を操る能力を持っていたのか」
「そうですね。ところでなぜあなたがここにいるのですか? しかも地下室から」
「それはこっちのセリフだぜ。なんだってあんたもこんなところにいるんだ?」
「それは言えません」
「なんじゃそりゃ? まぁいいや、早く博美さんを探してこれ以上悪さをしないように説得しねーと」
急いで教会を出ようとした時、「待ってください」と須藤に呼び止められた。
「あなた、彼女のことを知っているのですか? 彼女が何をしているのかも」
「まぁな。俺は昔少しだけここに住んでいたことがあるんだよ。でもあの人は自分勝手な正義のために子供を誘拐しているんだ」
「……どうやら目的は一緒のようですね」
「目的?」
「私も会長もある情報をもとにこの教会までやってきました。そして会長はシスターと共にここを離れています。その間に私が子供たちを救出する。それが今回の目的なのです」
俺は博美さんにこれ以上罪を重ねさせないために説得していたのだが、どうやら彼女はそれ以上のことを考えていたらしい。
「ってあれ? じゃあ今あの高渕の野郎もここにいるのか?」
「ええ。さっき言った通りシスターと共にここを離れています」
「何考えてんだよ! 博美さんはあんたと同じビースト使いなんだぞ! 下手したら殺されちまう!」
焦る俺に対して須藤は「ふふふ」と小さく笑った。
「心配には及びません。会長のビーストは簡単にはやられませんよ」
「あいつの……ビースト!?」
なんてこった! あのクソ眼鏡インベーダーも俺と同じビースト使いだったのか!?




