第53話
「今日は何して遊ぶ―?」
「じゃあサッカーしようサッカー!」
「わーい!」
教会の外で遊ぶ三人の子供たち。
そんなに広くない庭でボールを転がしていると、一人の男が姿を現した。
「ここか……」
男は子供たちに近づき、声をかけようとしたが、丁度そこへ修道服を着た女性の姿が。
「何か御用ですか?」
笑顔で出迎えてくれたシスターに対し、男は静かに自分の名前を名乗った。
「僕の名前は高渕清。あの子たちを探していたのだが、あなたが保護していたのですか?」
「ええ……まぁ」
高渕は彼女に疑いの眼差しを見逃さなかった。
「何かを隠している」と高渕は心の中で呟いた。
「そうですか。ですがわざわざあなた個人で保護する必要はないでしょう。警察に届けて保護者のもとへ無事に帰せば――」
「それはだめ!」
急に大きな声を出してきても高渕は驚くことはなかった。
「……なぜ?」
「それは……そうね、場所を変えましょうか」
「なぜ?」
「あの子たちの前では話せないことよ。少し遠いけどついてきて」
◆
そう言われて高渕が連れてこられたのはたくさんの木々が生えている人気の少ない場所だった。
「さぁ、話してください。なぜあの子たちと一緒にいるのですか?」
日差しがあまり入ってこない場所に立たされている高渕は、少し警戒をしていた。
なぜなら人気のないところへ連れていくなんて、何かされるのではないかと疑っているからだ。
その不安は見事に的中してしまった。
シスターの右手から一枚のカードが握られていたのだ。
「あなたも彼と同じかしら?」
「なに?」
「誰も、私の正義の邪魔はさせない!」
カードから召喚されたのは鰐のビーストだった。
森の中にいきなり出現した獣を前にしても高渕は冷静でいた。
「……なるほど」
彼はいたって冷静だった。
まるで何もないところから獣が現れるのを見ることが初めてではないそうだ。
「あなたもビースト使いだったのですね」
「その言い方だと、もしかしてあなたも?」
高渕の手にも一枚のカードが握られていた。
「隠す必要はないでしょう……来たれ! 我が忠実なる僕!」
そして高渕は自分のビーストを召喚した。
◆
「そ、そろそろいいか……こいや!」
地下室に閉じ込められていた俺はフェンリルを召喚した。
「フェェェェェン!」
ビーストアウトされたビーストは一定時間経過しないと再度召喚することはできない。
俺が地下室に閉じ込められていた数分後、体の痛みと喉の渇きをなんとか我慢してフェンリルを再度召喚することに成功した。
「こいつを切ってくれ!」
縄で縛られている俺に向かってフェンリルは爪を縦に振った。
たったそれだけで、もがいてももがいてもちぎることができなかった縄を切断することができたのだ。
前に一度銃を粉々に切り裂いたことがあるフェンリルならこれくらい造作もないことだろうけど。
「持つべきものはナイスなビーストだぜ」
召喚したばかりのフェンリルをすぐにカードに戻した。
今から地下室を出て博美さんにもう一度会うつもりでいるが、その途中に子供たちと遭遇してしまったら二足歩行で移動する狼を見て号泣するか、もしくは遊具か何かかと間違われて足止めをくらうかもしれないと思ったからだ。
地下室から出て階段を上がると、博美さんのビーストと戦った場所に出た。
なんとか教会から脱出することができそうだ。
「待ちなさい」
小さな声が天井から聞こえた。
「なに!?」
見上げるとそこには巨大な影が潜んでいた。
まさか、新手のビースト使いか!?




