第52話
「ちっ……なんで来ねぇんだよ」
永一が喫茶店に来ない。
これは聖来にとって、なんだかムカムカすることであった。
「そういえばあの教会に行ってからだよな。永一が姿を消したのは」
永一の代わりに今日は陽介が来店していた。
そして永一の影響なのか、陽介もナポリタンとレスカを注文していた。
陽介もずいぶんとお気に入りになっているそうだ。
「教会? どこにあるんだよ、その教会って」
「あー……忘れた」
「ちっ、使えねぇ」
「シンプルにひでーなオイ」
「しっかしまーあれだな」と陽介は話を続ける。
「永一ってのはきっとあれだな。ああいう女が好みなんだよきっと、うん」
「あ?」
洗っている皿を思わず割ってしまいそうなくらい聖来の握る手が強くなった。
「俺も一目で見たけどいい姉ちゃんだったぜ? 清楚っていうの? 母性が溢れてるって
いうの? スタイルもよかったし永一なんか絶対ゾッコンになっちまうちゅーの!」
「てめぇ……もう一回いってみろゴルァ……」
手に持っている皿を今にも陽介に叩き付けんと腕がぷるぷると震えている。
「な、なんだよお前。そんな怖い目で見るなよ」
身の危険を感じた陽介だが、店に入ってきた客人の登場で少し安堵する。
「ほ、ほら! お客さんだぞ。接客しろ接客……ん?」
来店した人物は陽介と聖来が知っている男だった。
「なんだ、君たちか」
東高の制服を着て眼鏡をかけている男子。
東高生徒会長、高渕清だった。
「なんでテメーがここにいるんだよ」
なにかと嫌味なことばかり言う彼に陽介は警戒をしていた。
「僕もこの店のコーヒーがお気に入りなんでね」
そう言ってカウンター席に座った高渕の手には一枚のビラが握られていた。
「なんだそれ?」
陽介が見たそのビラには子供の顔が写されていた。
「ここ最近になって行方不明になっている子供だそうだ」
「へー。お前が探すのか?」
「君たちには関係ない」
そのビラに写っている子供だが、陽介には見覚えがあった。
「あ、なんかそのチビ見たことあるぜ」
「なに?」
席を立って高渕が陽介に近づいた。
「どこだ! 場所を教えろ!」
「近い近い! え、えーと、どっかの教会で見たんだけどよ、場所がどこなのかは覚えてねーんだよ」
「教会……ならあそこか?」
そう呟いた高渕は注文したばかりのコーヒーを飲むことなく店を出て行った。
「おいどこいくんだよ!」
陽介が後を追いかけるが、店の外にはもうすでに高渕の姿はいなかった。
「あり?」
見上げると青い空に鳥が一羽飛んでいるのが見えただけだった。




