第47話
「今日はパトロールだ!」
空は快晴、気分は上々。
学校が休みの土曜日の朝から俺は陽介を公園に呼び出した。
起きたばかりなのか、陽介は欠伸をしたり目をこすったりしている。
「なにかするのかよ永一?」
「聞こえなかったのか? パトロールさ。いついかなる時に新手のビーストが出るかわからないだろ? 事が大きくなる前に俺たちが見回ることで事件を未然に防ぐんだよ」
これはビーストカードを持っている俺たちにしかできないことだ。
「一般の警察官がパトカーに乗って町中をうろうろしているパトロールとはわけが違う。気合い入れろよ!」
「ま。たまにはこうして散歩するのもありかもしれねぇな」
「散歩じゃない! パトロールだ! ビースト使いである俺たちしか認知できない事件をいち早く発見してことが大きくなる前に未然に防ぐんだよ!」
俺は今まで様々なビースト使いと戦った。
校内で暴君の如く君臨していた吉岡朔朗。
気に入らない生徒を無理やり言うことを聞かせていた桑名礼介。
妹を殴り続けていた中林明咲のクソ兄貴。
こいつらは皆ビーストの力を使って自分の理想を実現させようとしていた自分勝手な連中ばかりだった。
だがこの間戦った先原盛幸という男はそれを上回るほどの自己中野郎だ。
薬を服用していたということもあるが、あいつは自分の理想のためならば平気で他人を傷つける狂った思考の持ち主だった。
そこらへんは今までの三人と同じかもしれないがその行動範囲が広すぎたのだ。
校内、校外問わずビーストの力を振るう存在だ。
もしかしたら今後も似たような奴が出てくるかもしれないと思った俺は自主的に町中を警備することに決めた。
陽介を連れてきたのは、ついでだ。聖来も誘ったのだがバイトがあると言うのだからしょうがない。
「んで? どこを見て回るんだ?」
「そうだなぁ……」
俺は道端に落ちていた木の枝を拾って、それをまっすぐ縦に置いた。
手を離すと当然木の棒は倒れた。
倒れた先を指さして「あっちにいこうぜ」と言いながらパトロールを開始した。
◆
「こんなところ通るのは初めてだぜ」
「そうか? 俺はなんとなく見覚えがあるんだけどなぁ」
町内パトロールを初めて一時間が経過した。
自分の知っているところから少し離れた見知らぬ地区を探索していたが、俺はなんだかこの場所を知っているような気がしてならなかった。
「チビの頃ここらへんで遊んだような記憶があるんだがなぁ……」
倒れた木の枝だよりに始めたパトロールだが、自分の記憶の一部を思い出すようなことになるとは思わなかった。
「ん? なんだありゃ?」
陽介が何かを見つけたようだ。
「あれは……教会?」
少し古いが、それはまさしく教会と呼ばれる見た目をした建物だった。
その建物の入り口から修道服を着た20代ぐらいの女性が現れた。
「ああいうのってシスターっていうんだろ?」
「ああ……ああいうのはアニメの世界だけかと思っていたが、いる所にはいるもんなんだな」
しかも俺たちが住んでいる町にだ。
「ここだけの話、俺って巫女さん派なんだよ」
「知らんがな」
筋肉のことしか興味がないと思っていた陽介だが意外な好みを持っていたがそんなことはどうでもよかった。
それにしてもあのシスター、彼女もなんだか会ったことがあるような気がしてならない。
俺たちの存在に気づいたのか、シスターがこっちにやってきた。
「こんにちは」
「あ、ども。こんちはっス」
とりあえず挨拶してみると、そのシスターさんはじーっとこっちを見つめてきた。
「な、なんスか?」
「間違っていたらごめんなさい。あなた、矢崎永一君じゃないかしら」
そのシスターはなぜか俺の名前を知っていた。
「なんで俺の名前を?」
「やっぱりそうなのね! 覚えてないかしら? あなたは小さい頃少しだけこの教会でお世話になったのよ?」
この教会でお世話になった? そんなこと言われてもよく覚えていない……いや、少しだけ記憶が蘇った。
俺はこの教会を知っている。そして少しだけここで過ごした記憶も確かにあった。
すべてを、思い出した。
「あんた、ヒロ姉ちゃんか!」




