表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日日の不良はカードからビーストを召喚するんだぜ?  作者: スカッシュ
第4章 少年院からの脱走者、先原盛幸の暴走! 編
46/112

第43話

 追いかけた先に見えたのは西高の校舎だった。

 先原につけた焼肉のタレの匂いをフェンリルに嗅がせて追跡してやっとのことで追いつくことができた。

いくら潜水能力を持っていたとしてもフェンリルのスピードにはついていけないだろう。

「そこだ!」

 うっすらと地面に濃い影が見える。

おそらくあの影が先原とフォルネウスだろう。

「隠れても無駄だ! 諦めて出てきやがれ!」

「く……」

 そこは西高のグラウンドだった。

ついこの間陽介が立っていたバッターボックスの近くに俺とフェンリルが立っている。そしてマウンドにはゆっくりと地面から姿を現した先原とフォルネウスがいた。

「なつかしいなぁ……」

 グラウンド全体を見渡している先原。

あいつは去年このグラウンドで野球をしていた。

少年院に入っている間に忘れていた記憶が思い出したのだろうか。

「お前、なんであんな事件を起こしたんだ?」

 懐かしんでいる先原に水を差すように俺が言うと、先原はこっちを見てきた。

「俺は親父に期待をされていたんだ。親父はなぁ、自分がなれなかった代わりに俺を野球選手にしようとしていたのさ。漫画やドラマとかでよくある話さ」

 今までのような狂った言動はなく、先原は演説でもするかのように饒舌に語り出した。

「その話は昨日お前の親父さんから聞いたよ。問題なのは、なんで対戦相手をボコボコにしたんだってことだよ」

「甲子園に進むためには仕方のない犠牲だったのさ。俺が半殺しにしたあいつはかなり有名なエースで将来を期待されていた。そんな相手と対戦しても勝てないってことは目に見えていた。だからボコった。ボールを握ることすらできないぐらいにしてやれば俺たちの試合は楽になる。甲子園に近づけるんだ」

「そんな方法で夢を叶えたって意味ないだろ! お前はそれでいいのかよ!」

「感情なんてどうでもいい。相手の気持ちなどどうでもいい。すべては親父が叶えられなかった夢を叶えるための犠牲だ……俺は再びこの球場に戻ってくる。それにはもっと薬が必要なのさ。俺が俺でいられるための薬がな……」

「もうよせ! これ以上罪を重ねるな! ビーストの力を濫用するな! 俺の二の舞を……踏むな!」

「だまれ! 俺も俺を止めることはできない!」

 フォルネウスの能力で再び地面の中に潜り込んだ先原だが、俺がさっきつけた焼肉のタレの匂いは健在だ。

 しかし動きがさっきまで違う。

マウンドからバッターボックスまで一秒も経たないうちにフォルネウスの牙が俺の足元に襲いかかってきた。

「くそ……」

 なんとかジャンプしてかわすことができたがこうもスピードが速いとなるとちんたらしていられない。

 フェンリルに跨ってグラウンドを走り続ける。とにかく攻撃を食らわないように逃げ回るしかない。

「ここまでくれば……」

 グラウンドからかなり離れた校舎の隅までフェンリルを走らせた。

フェンリルから降りて校舎の壁にもたれかかりながら一息つく。

 もたれかかっている壁から何かの気配を感じる。

ふと横を見てみるとフォルネウスの牙が俺に向かって開かれていた。

「馬鹿め! フォルネウスは壁の中も移動できるんだよ!」

「しまった!」

 休みかけた体を無理やり動かして攻撃を回避する。

だが少し遅かったらしく、牙が俺の腕をかすめた。

「く……」

 大きな刃物にひっかけられたかのように俺の腕に一本の傷ができる。

そこから容赦なく赤い血が川のように流れ始めてきた。

痛みに耐えながら俺は壁から現れた先原と対面する。

「くくくはは……無様だなぁ?」

「無様だぁ? 薬と暴力を快楽だと思っているお前よりかはマシさ」

「強がりをいうな。そうだ! お前にチャンスをやろう。金を出せ、そうすれば命だけは助

けてやる」

 先原は開いた手の平を俺に差し出してきた。

「金ならある。だがお前にはやらねー。なぜならこの金はナポリタンを食うための金だか

らな。薬中野郎のお前に差し出す金は一円たりともねーんだよバーカ!」

「そうか。なら死ね」

 勢いよく飛び出してきたフォルネウスの牙が俺の眼前に広がった。

「く……反撃しろ! フェンリ――」


「ヨルムンガルドォ!」


 なんとかフェンリルで反撃しようとした瞬間、真横から冷たい風が吹き荒れた。

「大丈夫か! 永一!」

 そこには聖来の姿があった。

ヨルムンガルドを召喚していて、氷の息吹を吐きだしていた。

「しゃらくせぇ!」

 氷漬け寸前になっていたフォルネウスだが、強靭な顎の力で氷を噛み砕いた。

「ところがどっこい!」

 続いて現れたのは陽介だった。

陽介もすでにミノタウロスを召喚していて、ミノタウロスの右拳がフォルネウスの横っ

面を思い切り叩いた。

「おせーよバカ」

「しゃーねーだろ。たんまり出たんだからよ」

「お前のお通じ情報なんかいらなイテテテテ!」

「エーイチ! お前怪我をしているじゃないか」

 俺の近くにちょこちょことやってきたのはチェックだった。

「さっきやられたんだよ。中林のユニコーンの力が必要だなこりゃ」

「おいおい。オレっちと最初に会った時のことを忘れたのか?」

 チェックが小さな手をかざすと小さな光が俺の片腕を包んだ。

すると徐々に痛みが引いていって血の流れも止まった。

「そういえばお前も持っていたんだよな。回復能力」

 前に上級国民バカの銃で横腹を撃たれた傷を治してくれたことがあったのを思い出した。

「ユニコーンほどではないけどな。応急処置ってやつだ」

「いいや十分だ。これで全力戦えるぜ」

 俺、チェック、陽介、聖来の三人と一匹が揃った。

 さぁ反撃といこうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ