第42話
「どうしてここがわかったんだ?」
「偶然だよ。お前とチェックの声が聞こえたからな。離れて行動していたと思ったら、どうやら偶然にもお互い近場で先原を捜索していたんだな」
聖来とチェックの声がわずかに聞こえたので、もしやと思い駆けつけたのだ。
「ん? おい井下はどうしたんだ? 一緒だったはずだろう?」
「あー……なんか急に腹を壊したらしく公園のトイレに引きこもってるぜ」
「あいつ使えねぇ……」
井下の大便を待つ暇はないと思い、ダッシュでやってきたってわけだ。
「あいつが先原か?」
「ああ。あいつのビーストは今も地面の中を泳いでいるはずだ。地面だけじゃなく壁の中も移動できるみたいだから少しも油断できねぇ」
「ズルすぎんだろ……おいチェック。あのビーストのことなにか知らないのか?」
チェックはこくりと頷いた。
「ああ、今やっと思い出したぜ。あいつのビーストのことをよ。あいつが操っているのは鮫のビースト・フォルネウスだ」
「鮫? だから地面を泳いだりするってのか」
「地面だけじゃなくて壁の中を潜ることができて移動することができる。静かに獲物に近づいて強力な牙で対象に食らいつく攻撃的なビーストだ」
さらにフォルネウスの上に跨ることによって先原自身も地面の中を移動できるらしい。それなら少年院の脱走も容易なはずだ。
「く……あの時のビーストか……」
「なんだよ。フェンリルのことを覚えているんだな」
先日西高のグラウンドで陽介に噛みつこうとした時のことだろう。
「よってたかってぞろぞろと……めんどい奴らだ……」
薬中毒だと聞いているが意識はまだはっきりしているそうだ。
闇雲に人を襲っているわけではないらしいが放置するわけにもいかない。
「あばよっ!」
フォルネウスに跨った先原は地面の中に潜り始めた。
「待てよ!」
去ろうとする先原の背中に目がけて俺はあるものをつけた。
見事にヒットしたのを確認あと、先原は地面の中へと姿を消した。
「おい永一。お前一体何をしたんだ?」
「ここに来る前に用意しておいた焼肉のタレだ」
「は? なんでそんなものを?」
「この焼肉のタレの匂いを頼りにあいつを探すんだよ」
「おいおいそんなの警察犬でもいないとできないんじゃ……あ」
どうやら気づいたようだ。
そう、俺のフェンリルは狼のビーストだ。
狼は犬の仲間なので当然嗅覚が鋭い。
その力で先原を探索することを思いついたのだ。
「ふっふっふ。今日の俺はさらに冴えている!」
召喚している状態のフェンリルの鼻に焼肉のタレを近づける。
すると思った通りフェンリルは匂いを嗅ぎ分けているのだ。
しばらく様子を見ていると「フェン!」と反応した。
「ビンゴ! 思ったとおりだぜ!」
フェンリルの背中に乗って先原のいるところへと走り始める。
「おーい! 陽介はどうするんだよー!」
「見つけたら連絡するからよー! なんとか合流してくれー!」
こうして俺は夜の町をフェンリルに乗って駆けていった。




