第38話
俺たちは陽介を襲ったビースト使いが少年院行きになった野球部員ではないかを調べるために西高にやってきた。
さっそく俺たちは校内に入って調査開始といこうかと思ったが、そこで思わぬ男と再会することになる。
「なんで君たちがここにいるのかい?」
「それはこっちのセリフだコノヤロー」
他人を見下すしゃべり方をする目の前の眼鏡の男。東高の生徒会長、高渕清と出会ってしまった。
以前俺たちはユニコーンのビーストカードを持っている中林秋咲のことを調べるために頭のいい生徒たちが集う東高に足を踏み入れかけたことがあった。
しかしこの高渕という堅物クソ眼鏡インベーダー生徒会長によって門前払いをくらってしまって東高に入ることができなかった。
しかもこの男は俺たちが東高よりも劣っている南高の生徒だということだけでなにかと見下してくるのだ。今この男と目線を合わせただけでその時の記憶が思い出してイライラしてくる。
「あんたこそこんな所で何してんだよ。ここは東高じゃなくて西高だぜ? もしかしてテストで悪い点数とってこっちの学校に転校する羽目になっちゃったとか?」
「君たちじゃないんだからそれは絶対にありえない」
「てめぇ俺のテストの点数見たことあるのかよ? 俺はこの間社会のテストで75点取ったんだぞ! どうだすげぇだろ!」
社会の問題のほとんどは選択問題なので勘で解いたら偶然いい感じの点数が取れたことがあったのだ。
「僕は全教科90点以上だがなにか?」
「ん、んんんんだと~?」
それに対して高渕はガチの優等生だった。これはこれでウザい。
「もういいじゃねぇか永一。俺なんかほとんどのテスト30点くらいだぞ」
「陽介、それは慰めになってないからな? あいつらに俺たちがバカな連中だってことをカミングアウトしているだけだからな?」
俺たちのやり取りのくだらなさを感じたのか、高渕は「はぁ」とため息を吐いた。
「まったく。西高の生徒会長との会合でここに来たのに南高の劣等生と会う羽目になるとはな。今日は厄日だよ」
ムカツクことばかり言ってくるこの男のそばに一人の女子生徒が近づいてきた。高渕と同じ制服を着ているということは東高の生徒だろう。
「会長。そろそろ次の時間が」
「ああそうだな。すまないな、須藤くん」
須藤と呼ばれたクソ眼鏡インベーダーのとなりに立つおかっぱヘヤーの女子生徒もまた眼鏡をかけていた。これまた堅物そうなしゃべり方をする女子で、なんだか秘書っぽい雰囲気を出している。
「なんだよお前も隅に置けねぇな。彼女連れとはなかなか見せつけてくれるじゃねぇか」
カップルを茶化すのは不良の特権だ(俺ルール)。肘をつんつんと突いてクソ眼鏡インベーダーを煽る。
「勘違いするな。彼女は僕の恋人ではない。彼女は東高の生徒会副会長であり僕の側近だ。それ以上でもそれ以下でもない」
眼鏡をクイッと上げながらそう説明した。
「お、おいおいそんなハッキシ言う必要ないんじゃないのか? 隣のその娘がかわいそうじゃないか」
恋人じゃないなんて言われたら、たとえそうじゃなくても傷つくものだ。しかし隣に立っていた眼鏡女子も同じく眼鏡をクイッっと上げてこう言い始めた。
「まったく言ってその通りです。会長とは恋仲ではありません。そもそも私に恋人なんてものは必要ありません。私の欲を満たしてくれる存在、それは『誰が攻め』で『誰が受け』であること、それのみです」
攻め? 受け? なんの話だ? 空手とか柔道とかの武術に関する話なのだろうか? 俺にはよくわからなかったし陽介も理解している様子はなかった。
ただ、聖来だけなぜか頬を赤くしている。なにか知っているのだろうか?
「ちなみに今私はあなたと隣にいる彼を見比べてどちらが『攻め』を担当するべきかを思考しているところで――」
「もういい須藤くん。そこまでだ」
ちょっと待て。そいつ頭の中で一体なにを考えていたんだ? 俺と陽介がなんだって?
「気にするな。彼女の悪いクセだ」
「いや気にするわっ!」
「とにかく西高の生徒たちの迷惑はかけるなよ」
それだけ言ってクソ眼鏡インベーダーは去って行った。去り際に副会長さんが軽く頭を下げてから去って行った。
「けっ。人を疫病神扱いしやがって。あれで成績が優秀だっていうんだから余計に腹が立つぜ」
「ところでよー。副会長が言ってた『攻め』とか『受け』とかって何のことだったんだ?」
それは俺も気になっていた。聖来がなにか知ってそうな感じだったので訪ねてみると「聞かない方がいい」としか答えてくれなかった。とても気になることだが今は情報収集が最優先だ。
「それじゃあ手分けして少年院行きになったやつのことを調べよう」
俺たちは手分けして情報を集めることにした。
◆
解散して一時間後、俺たちは集合してそれぞれが集めた情報を言い合った。
「まず少年院行きになった野郎の名前は『先原盛幸』。元野球部で中学時代はかなりの実力の持ち主だったらしい。当時の監督からは『神童』とも言われてたそうだ」
俺が分かったことはこれだけだ。
「ジンドー?」
「ものすごいガキってことだよ」
「ふーん……聖来はなにか情報は手に入ったのか?」
「あー……なんでも親父さんが厳しいって話くらいしか聞いてねぇな」
「厳しい親父さん……ねぇ」
俺の父親は厳しいと言うよりかは純粋にクソだった。とにかく俺と母親に暴力を振るっていた過去しか記憶にない。
もしかして先原も俺と同じように父親から暴力を受けていたのだろうか?
「厳しい親父さんに加えて南高野球部の厳しい練習。きっと先原って奴は相当なストレスを抱えていたと思うな」
「ストレスがたまりにたまって薬に手を出したってことなのか? 考えられない話じゃないな」
もちろんこれは憶測だけどな。
「陽介はなにかわかったか?」
「ああ。ここの学校の学食はうちよりも種類が豊富ってことがわかったぜ!」
「お前死ねよ」
何しに来たんだよお前は。
「ちっ……ま、情報はこんなもんか。先原盛幸がビースト使いかどうかははっきりしないが、今後ビーストがこれ以上悪さをしないように俺たちでなんとかしようぜ」
こうして俺たちは西高を後にした。




