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今日日の不良はカードからビーストを召喚するんだぜ?  作者: スカッシュ
第3章 恐怖のスケバン、松浦聖来の覚醒! 編
33/112

第31話

 カードを握った瞬間、頭の中にこいつの名前が響いた。

 そして気づけばこいつを召喚していた。蛇のビースト・ヨルムンガルドを。

 蛇特有の長い体は蜷局を巻いていて、両目は鋭く蛙だけでなく全ての生物を怖がらせるぐらいに凶悪な視線を放っている。

「な、なんだよ……お前もビースト使いだったのか?」

 散々私を痛めつけた男は、初めてヨルムンガルドを召喚したばかりの私を見て腰を抜かしている。

「ああ。今さっきな」

「へ! どんなビーストが出てこようとこいつの相手じゃない! やっちまえガネーシャ!」「ガネェェェェェ!」

 また体が重くなった。私の体はさっきのあいつの攻撃でよろよろになっている。立っているのも限界に近い。

 しかしヨルムンガルドを召喚したばかりなのにあっさりリタイアなんて格好の悪いことはしたくなかった。

 そしてなによりこの場であいつを止めることができるのは私だけだ。

 私が決着をつけなければならないのだ。

「力を貸してくれ! ヨルムンガルドォ!」「ガルドォォォォォ!」

 ヨルムンガルドは口を大きく開けた。そこから生えている牙で噛みついて攻撃するのかと思っていたがそうではなかった。

 ヨルムンガルドの能力はカードを手にした瞬間から知っている。

てつけぇ!」

 ヨルムンガルドの口の奥から突風が吐き出された。しかしただの突風ではない。あらゆるものを凍らせる氷の息吹だ。

「なにぃ!?」

 足元が氷の息吹によって氷漬けになっていく。足の裏から徐々に上に上がっていき、膝まで真っ白な氷に包まれてしまった。

「動きを封じることが得意なのはお前だけじゃないんだぜ?」

 そう。ヨルムンガルドの能力は氷の息吹は対象を凍らせることができるのだ。

「く! くぅ!」

 足が氷によって移動が封じられ、動こうとしても動けない状態だ。拳を叩いて氷を割ろうとしても石のように頑丈でビクともしない。

「く、来るなぁ……! ガネーシャ! やれぇ!」「ガネェェェェェ!」

「させるかぁ!」「ガルドォォォォォ!」

 ガネーシャの能力を発動する前にヨルムンガルドはガネーシャの全身を一瞬で氷漬けにした。

「ガネェ……」

するとガネーシャの体が光となって、カードの中へと返ってしまった。

「そ、そんな……俺のガネーシャが……」

「これでお前は丸腰同然だな」

「や、やめろぉ! 殴らないでくれ! 痛いのは、痛いのは嫌だぁぁぁぁぁ!」

「痛いのは嫌だぁ? お前がしてきたことを棚に上げてよくそんなことが言えるな、ああ!?」

「ご、ごめん! マジごめん! これからは妹をイジメたりしない! だから殺さないでくれ! 頼むからぁ! 頼むからぁぁぁぁぁ!」

「殺したりはしねぇよ。私もそこまでクズじゃねぇ。その代わり今までお前がしてきたことのケジメ・・・はつけさせてもらうぜ?」

 私は拳を硬く握りしめた。そして泣き叫ぶ男の顔面目掛けて渾身の一撃をお見舞いしてやった。


 ◆


「いてて……あれ、どうなったんだ?」

 ガネーシャという象のビーストの能力で動きを封じられ、頭を思い切り殴られた俺は今になってようやく目が覚めた。

 目が覚めると同時に不安な気持ちが頭をよぎる。中林は? 陽介は? チェックは? そして松浦は無事なのだろうか?

 まだ痛む頭を押さえながら俺はあたりを見渡した。

「ってなんだありゃ!?」

 頭の痛みなんか一瞬で吹っ飛んだ。なんと俺の目の前には大きな蛇が松浦の隣に存在していたのだ。

 もしかして新手のビースト使いが!

「松浦ぁ! 逃げろぉ!」

「は? 何言ってんだお前」

「だってお前の隣のソレ! ソレ!」

「心配すんな。こいつは私のだ」

 松浦の右手はカードが握られている。それを前に出すと松浦の隣にいた蛇がカードの中に戻っていった。

「え……なに? 松浦もビースト使いだったってことか?」

「そういうことだろうな」と言いながら俺の前に出てきたのはチェックだった。こいつも目が覚めたようだ。

「最初に会った時こいつにはビーストを持っている感じはしなかった。おそらくオレっち達が気絶をしている間にビースト使いに覚醒したってところだろう。違うか?」

「ああ。あんたの言う通りだよ」

 松浦はビーストカードを眺めながらそう言った。

「ビーストカードは絶望している人間に希望を与えるために出現する代物だ。つまりそのビーストはお前のピンチに駆けつけたってところだな」

「なるほどな。でもなんでこんな奴なんかにも……」

 松浦は自分が倒した男を見ながらそう言った。

「絶望の形もいろいろある。傷つけられたとか事故にあったとかな。お前が倒したそいつにもなんらかの絶望を感じてビーストカードが現れたんだろう。たとえそれがくだらない理由だったとしてもだ」

「不公平だなイテテテ!」

 俺は頭を抱えた。あいつに殴られた頭が再び痛み出した。

「これ病院行った方がいいよな。脳出血とかになってたらどーしよ……」


「それなら私にまかせてください」


 振り向くとふらふらになりながら立ち上がってきた中林の姿があった。

 彼女は頭を抱えながらゆっくりと俺たちの方へと歩いてくる。

「おいおい無理するなよ!」

「大丈夫です」と言いながら中林の手にはいつの間にか一枚のカードが握られていた。

そうだ。そもそも中林もビースト使いだということをすっかり忘れていた。

この子・・・の力で皆さんの傷を治します。お願い出てきて!」

 中林が持っているカードが光り出すと、そこから出現したのは鋭く尖った角が頭から生えている純白の馬だった。

「馬のビースト・ユニコーン」「ユニィィィ」

 静かに鳴くユニコーンと言うビーストはゆっくりと俺たちに近づいてきた。槍のような角で突かれるのか思いゾッとするが、ユニコーンは頭をゆっくり下げると角からキラキラとした光が出してきた。その光が俺の頭の周りをぐるぐると回転している。すると頭の痛みがすっかりなくなっていたのだ。

 僧侶だ。RPGに登場する仲間の体力を回復する僧侶的な存在だこのビーストは。

 以前俺はチェックにも似たような力で傷を治してくれたことがあったが、このユニコーンというビーストの回復能力は段違いだ。もう痛みが嘘のように引いたのだ。

「こんなビーストもいるもんだな……びっくりだぜ」

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