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今日日の不良はカードからビーストを召喚するんだぜ?  作者: スカッシュ
第3章 恐怖のスケバン、松浦聖来の覚醒! 編
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第29話

 昔からなんでもできた。

 成績は優秀だった。スポーツもなんなくこなすことができた。異性にも人気があった。 自分はまさにバラ色の人生を送っていると確信を持っていた。

 その証拠に優秀な生徒たちが通う東高に入学することもできたのだ。

 自他ともに満足いく成績を残した自分は東高を卒業し有名な大学へと進学する……つもりだった。

 そこから人生の歯車が狂い始めたのだ。

 大学受験に失敗したのだ。

 両親は叱ることはなく「他の大学に受験すればいい」だの「浪人してもかまわない」と言ってくれたが、それが彼のプライドを傷つけた。

 今までうまくやってきたのに、こんなところで躓くなんて考えたくなかった。両親の励ましの言葉が逆に彼をイラつかせた。

「うるせぇんだよクソが!」

 生まれて初めて両親を傷つけた。近くにあった花瓶を床に叩き付けると父親も母親も、たまたま近くにいた妹も顔面蒼白だった。

 その日を境に自室に引きこもるようになった。

 大学に失敗したことがショックで外に出るのが怖くなってしまったのだ。

 それから彼はパソコンでゲームをするようになった。チームで戦うシューティングゲームだ。

 ゲームはいい。心の中にできてしまった黒くてもやもやした感情を吹き飛ばしてくれる。ゲームで勝利した時は生きている実感を与えられる。

 だがそれはあくまで勝っている時に限る。

 彼がプレイしているゲームは常にチーム戦であり自分以外にゲームをしている者がいて、その人が足を引っ張れば当然自分のチームが不利になる。

 チーム分けは完全にランダムなのでどんなプレイヤーが一緒のチームになるかわからない。

下手な人間と組んであっさり負けるとまた心の中に黒い者がふつふつと湧いてきてイライラしてくる。

 イライラする時は両親や妹を傷つけることで発散させている。そして再びゲームをするためにパソコンの前に座る。

 そんな日々を過ごしているうちに彼は手元に一枚のカードが現れたのだ。

 連戦連敗で絶望の中にいるそんな日の夕方、両親は外にいて妹は学校からまだ帰ってきていないそんな時間だった。

 そのカードを手にすると、一体の獣が部屋の中前に召喚された……


 ◆


「こいつは象のビースト・ガネーシャ。俺のストレスを発散させるために現れた存在さ」

「ストレス発散だぁ? てめぇのやっていることはただの家庭内暴力じゃねぇか!」

 俺たちの目の前に現れたのはでっぷりとした巨体をもった一体の象だった。こいつも俺のフェンリルと同じように後ろの二本足で直立している。

「俺はなぁ……自分の思い通りにならないと、イライラするんだよ……イライラするたびに妹を殴ってきたが、まさかこいつの力を使わなけりゃいけなくなるとはな!」

「な、なんなんだよ、あれ……」

 突然として現れた象のビーストに松浦は目を見開いている様子だ。

「なんで、いきなりあんなデカイのが出てきたんだよ!」

「松浦、あれがさっき話したビーストってやつだ」

 中林がビースト使いだってことは話で聞いていたが、まさかもう一人いたとはな。

「俺は今まで一番イライラしているんだよぉ……くくく、下手したらここにいる奴ら全員あの世に行っちゃうかもね……」

「誰があの世に行くもんかよ! いくぜ陽介!」

「おうよ!」

 俺と陽介はビーストカードを出現させ、すぐに召喚した。

「こいや! フェンリル!」「フェェェェェン!」

「筋肉の化身! ミノタウロス!」「ミノォォォォォ!」

 狼のビーストと牛のビーストが同時に召喚される。

「今度はなんだよ! 狼!? 牛!? もうなんだってんだ!」

「松浦は下がっていろ! お前を守りながら戦える自身はねぇ!」

「オレっちもついている。存分に戦かえ!」

 松浦はすぐ頷いて、倒れている中林を抱えて俺たちから離れた。チェックもついているから大丈夫だろう。

「しかし今回は楽勝だな。なんてったって二対一だ。ちとばかし卑怯臭い気もするが、悪く思うなよ」

「へ……俺をイライラさせる奴は全員皆殺しだ……いけ! ガネーシャ!」「ガネェェェェェ!」

 象のビーストが吠えたと同時に全身が急に重くなったようになった。

「うおっ! なんだ!?」

「く……体が急に重く……」

 どうやら重みを感じたのは俺だけじゃないようだ。陽介も膝を床につけている。

「へっ。だがこれくらいの重さ、バーベルスクワットに比べればまだまだ!」

 しかしそこから己が力で立ち上がろうとする陽介。さすがは筋肉バカだがこの重さの秘密は一体……

「やれぇ! ミノタウロス!」「ミノォォォォォ!」

 陽介のミノタウロスはガネーシャに突っ込んでいった。右手を硬く握りしめ、強烈なパンチを繰り出すつもりだろう。

「あめぇんだよ! ガネーシャ!」「ガネェェェェェ!」

 顔面パンチまであと一歩というところで、ミノタウロスの動きが鈍くなった。そしてなんとミノタウロスまでも膝を地面についてしまったのだ。

「なんなんだ? 俺たちだけじゃなくて、ビーストも動けなくなっているぞ!?」

 未だに俺の身体は上から強く抑え込まれているかのように重くなっている。十中八九あのビーストの能力なのだろうが……

「知りたそうな顔をしているなぁ……なら教えてやるよ。俺のガネーシャの能力はずばり『重力』さ! 自分の好きな場所に本来の何倍もの重力を発生させることができるのさ!」

 説明を受けた俺は少し不安になった。今まで遭遇したビースト使いはやれ触手を操るとか、やれ体を分裂させるといった能力だったが、これほどまでに特殊な力で戦うビーストは相まみえたことはない。

 どうのように戦えばと考えるうちに俺の身体は少しずつ重くなっていく。ガネーシャが力を少しずつ加えているのだろうか。

「く、くそ……」

 身動きが完全に取れない。足も動かないし指先を少し動かすことで精いっぱいだ。

「俺に歯向かった罪は重いものと知れ……」

 目の前の男は近くにあったイスを持ち上げた。そしてそれを陽介の頭に向かって――振り下ろした。

「ぐあぁ!」

「陽介! てめぇなんてことしやがる!」

 筋肉が自慢の陽介でも頭部を鍛えることはできない。頭から血を流しながら陽介は倒れた。それと同時にミノタウロスもカードに戻ってしまった。

「次はお前だ」

「くそ! フェンリル!」

 このままでは陽介の二の舞を踏んでしまうこと間違いなしだ。俺はなんとかフェンリルに指示を出してみるが、フェンリルも見事に重力の餌食となっているため身動きが取れない状態だ。

「死ね」

 ゴッ! という音が頭部から響いた。避けるという選択が封じられた俺は容赦なく椅子で殴られて、気を失ってしまった。

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