第24話
書店か出た松浦の後を急いで追いかけるつもりだったが、松浦は意外とすぐそばにいた。 しかし見るからに危ない状況だった。
松浦の他には見知らぬ女子が一人。あの制服はたしか頭がめっちゃいいと言われている「東高」の制服だ。メガネをかけたその女子生徒はおろおろと体を震わせながら松浦の後ろに立っていた。
なぜ彼女が怯えているのか? その理由は松浦が怖いからではない。松浦とあの女子の前に立ちはだかっている「北高」の制服を着ている男たち二人組が原因だろう。
「なんだよお前。消えな、俺たちはそっちの女に用があるんだよ」
俺もこの間行ったガラの悪い不良共の巣窟である北高。その生徒の一人が松浦にガンを飛ばしながら一歩前へ近づく。
「女相手に二人掛かりとは、ずいぶんとクズじゃねぇか。あぁ!?」
相手の挑発に臆することなく、松浦はガンを飛ばし返す。
これだ。この迫力こそが南高で恐れられているスケバン、松浦聖来の本来の姿なのだ。 まさか俺もこの場でお目にかかれるとは思わなかったぜ。
「へ! 俺たちに喧嘩を売ったことを後悔させてやるぜ!」
先制攻撃を仕掛けてきた男の拳を、松浦はひらりとかわす。そして突き出してきた腕を掴んで、関節技を繰り出した。
「イデデデデ!」
さっきの威勢はどこへやら。殴りかかってきた男は情けない悲鳴を商店街に響かせた。
「あんまり大きな声を出すなよ。周りの人がびびってんだろうがよぉ!」
いやお前もたいがい声でかいよ? 通りかかった買い物帰りのおばちゃんとかビクッてしてるよ?
「ふざけんなよな!」
隣にいたもう一人の男が殴りかかってきた。このままではまずいが松浦は決してそれを見逃していなかった。
掴んでいた男を突き飛ばして、殴りかかってきた男にぶつけることで攻撃を防いだのだ。
この戦いを見て、松浦は何かと戦い慣れしていることがわかった。さすがは恐怖のスケバンと呼ばれているだけのことはある。
「ふざけやがって……!」
地面に倒された二人は視線を松浦ではなく、隣にいる東高の女子に目を向けた。
「だったら!」
倒されたうちの一人が再び松浦に襲いかかる。
その隙にもう一人が隣の女子に向かってダッシュしてきた。
「きゃあ!」
彼女の細い腕を力強く掴んで「こっちを見ろぉ!」と松浦に向かって叫んだ。
「下手な真似をしてみろ! この女がどうなっても知らなイダァァァ!」
相手さんは無抵抗なこの子を人質にとって有利な状況を作ろうとしたのだろうが、それを俺は許さなかった。
卑怯なことをする輩に、俺の得意技であるグラビア雑誌ブレードで脳天を思い切り叩いてやったのだ。
「加勢するぜ」
「お前……」
俺の存在に気づいた松浦は、少しだけ口角を上に上げた後、襲い掛かってきた男の脛を思い切り蹴った。
「あだだぁ!」
蹴られた脛を手で支えながら片足でけんけんする。
「てめぇら! 許さねぇ!」
グラビア雑誌ブレードの餌食になった男がダッシュで俺に襲いかかってきやがった。俺はそれをひらりとかわす。
「って!」
男は何かにぶつかったのか鼻を抑え込んでいる。見上げるとそこには自分よりも身長が高い男が、陽介がそこに立っていた。
「おお? なんだ、喧嘩か?」
「ひ! ひぃぃ!」
自分よりデカイ存在に男は一瞬で怖気づいた。
「お、おい! 逃げろ! こいつらには敵わねぇ!」
いまだに脛を痛めている男を放っておいて、俺たちとは反対方向にダッシュして逃亡しはじめた。
「ま、待ってくれよぉ!」
もう一人の男もけんけんしながら俺たちの前から姿を消した。
「へっ。弱腰野郎どもが」
逃げ去って行く男二人に対して松浦はそう吐き捨てた。
「大丈夫か?」
松浦のそばで震えていた東高の女子は小さく頷いた。
「ていうかなんでお前あんなことになっていたんだ?」
俺が来た時にはすでにバトルが勃発していた。それを聞こうととしたが突然「ピー!」とホイッスルの音が聞こえて耳がキーンとした。
「そこの君たち! 待ちなさい!」
うげっおまわりだ。さっきの喧嘩を見て誰かが通報したんだろう。捕まると厄介だ。
「逃げるぞ!」
俺は先に振り向いて全力で走った。
「いくぞ!」
「は、はい!」
松浦は東高の女子の手を引っ張って俺と一緒に走る。
「え? な、なんだよ! オイ!」
状況を理解できていない陽介も遅れて俺たちの後ろを追いかける。
こうして俺たちは商店街を後にした。




