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今日日の不良はカードからビーストを召喚するんだぜ?  作者: スカッシュ
第2章 己を鍛え続ける者、井下陽介登場! 編
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第14話

 チェックの言った通りだった。

 俺の学校の教師である桑名礼介は俺と同じビースト使いだった。

「僕のビースト、アバドンの能力は『分裂』さ。自分の身体の一部をバラして小さな蝗を作り出すのさ」

「バドォォォォォン!」

 俺の前に召喚されたアバドンの見た目は一言で言えば直立した蝗だ。本来イナゴとかバッタとかは複数の足を地につけて移動の際は高くジャンプして移動する。だがビーストであるこのアバドンと言う蝗のビーストは二本足で地面の上に立っている。俺のフェンリルも狼のビーストだが、四本の足ではなく、二本の足で立っているからそれと同じもんだろう。

 ていうか虫のビーストも鳴いたりするんだ……

アバドンはもう一度「バドォォォォォン!」と鳴くと同時に体の一部が崩れた。その崩れた部分が変化して、小さな蝗へと変身したのだ。羽で空中を飛んでいる蝗は桑名の周りを旋回している。

「あんた、その力で一体なにを企んでいるんだ」

 この前戦った吉岡はイジメの復讐としてビーストを操っていた。考えたくもないが俺よりも数年長く生きている人生の先輩である桑名がそんなよからぬことをしているとは思いたくなかった。大の大人がバカバカしいことなんかのためにビーストの力を使ったりするなんて……そう思っていた。

「企む? いいや、僕はただ指導をしているだけさ。このアバドンの能力を使ってね」

「なに?」

「最近の生徒はさぁ、言うことを聞かないんだよ。君だってそうだろ?」

「…………」

 これはなかなか言い返せなかった。本当のことだから。

「だからさ、分裂させたアバドンの一部を言うことを聞かないクソ生意気な生徒の体内に侵入させたのさ」

「体内に侵入?」

「う~ん……言葉だけじゃ説明は難しいかな? 君バカだし。それじゃあ実際に体験してみるといい。ちょうど君も近々指導を行うつもりでいたからね」

 さっきまで桑名の周りを旋回していた蝗たち。そいつらは「いけっ!」という桑名の指示一つで行動を変えた。

 なんと俺に向かって飛んできたのだ!

「くっ!」

 俺は素手で蝗を振り払った。しかし蝗はまたまだやってくる。そうか、アバドンは自分の身を崩せば崩すほど数を増やすことができるのか。

「昔見た映画でねぇ。蝗の大群が人間を襲うシーンがあるんだ。襲われた人間は一瞬で骨にされてしまったんだ。すごいとは思わないかい? 小さな虫でも集まれば自分より大きな存在を殺すことができる」

「てめぇ!」

 蝗の群れの隙間から桑名を睨みつける。

「心配しなくて君を殺したりはしないよ。これはあくまで指導だからね? 一匹で十分なんだよ。体内に入れる蝗はさ」

 その時俺は理解した。なぜ蝗を体内に入れることが指導に繋がるのだろうかと思っていたが、そういうことか……

「あんたがさっきから言っている指導っていうのは、蝗を体内から攻撃させて痛みを与えて言うことを聞かせるってことか!」

桑名はパチパチと拍手をしながら「ご名答」と言った。

「体罰じゃねぇかよオイ!」

「バーカ。外傷がないなら体罰とは言わないんだよ。じゃあビーストの存在を誰かに教えて助けてもらう? くくく……蝗を体内に入れられたなんて誰が信じるんだよ」

 つまりこいつの手口はこうだ。自分の思い通りにならない生徒に分裂させたアバドンの一部を体内の中に入れる。歯向かおうという生徒は桑名の意思ひとつで体内にいる蝗に指示を出して攻撃を開始する。例えば胃袋の中から噛みついたり暴れ回ったりとかそういう指示を出して生徒に苦痛を与えるのだろう。そうして痛み苦しむ生徒を無理やり言うことを聞かせているのだ。

 そうか。きっと井下もこいつの被害を受けていたのだろう。だからあんなにも腹を抑え込んでいたわけか。

「俺は頭が悪いからわかんねぇけどよぉ……お前のやっていることは指導でもなんでもねぇ! ただの拷問だ!」

「なんとでも言いなよ。手段はどうあれ言うことを聞かない生徒を正しい道へと修正しているんだ。まさに僕の望んでいた教師像さ」

「てめぇ!」

「はぁ……君もたいがい態度が悪いねぇ。そんな生徒にはやはり指導が必要だ。とびっきりのねぇ?」

 分裂したアバドンの群れが俺に向かって飛んできやがった。体内への侵入って言うが一体どこから俺の体の中に入ってくるって言うのだろうか?

 口? 鼻? 耳? どれにしろ身の危険が迫っていることには違いない。

「今回の相手はややこしい。ここは逃げるがWINウィンってやつだ!」

 俺はビーストカードを出してフェンリルを召喚した。

 普段は二足歩行のフェンリルだが、実はこいつは本来の狼と同じように四足で移動することもできる。そうすることで通常よりも速く移動することができるのだ。

 俺はフェンリルの背中に乗り込んで「行け!」と指示を出す。それに応じるようにフェンリルは「フェェェェェン!」と吠えながら一気にダッシュした。

 フェンリルのスピードはバイクよりも早い。自動車ほどではないが人間の足なら余裕で振り切ることができる。

 俺はアバドンの攻撃から振り切るために校内を出た。後ろを振り返るとアバドンの体から分裂した複数の蝗の群れが一斉に追いかけてきている。

 スピードは五分五分といったところだ。いつ追いつかれるかわからない。

「フェンリル、あっちだ!」

 俺はフェンリルに指示を出した。指をさした方向には子供頃からよく遊んでいた公園だ。

 正式名称は知らないがドーム状になっていてところどころに穴が開いている遊具の中にフェンリルと一緒に入って身を隠した。

「しつけぇぜ……」

 見つかったらとにかくやべぇ。俺の心臓はバクバクと激しく動いていた。まるでゾンビ映画の主人公になった気分だぜ。

 さぁどうする?

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