29話「記憶喪失の少女とキラライフ族」
マナとミクとホシノは国境を越え、レグナード王国へやってきた。国境を抜けてしばらく進んだ先で近くの集落を見つけ、そこで亜人部族のことを聞いて向かうことにした。
道の先に見えてきた家々は、近くで見ると不思議な形をしていた。屋根の部分が、まるで星の上半分だけを切り取って置いたような形になっている。整然と並んだ建物はどれも同じように見えるのに、どこか温かみがあり、飾り気のある明るい雰囲気をまとっていた。
「あの形......キラライフ族かもしれません」
ミクが小さく言う。
「キラライフ族?」
マナは魔道書を開き、その名前を口にした。
説明「とても友好的な亜人の一族。黄色い魔法服の衣装を身にまとっているためわかりやすい。金色の棒状の杖を持つ。皆をハッピーにする魔法が得意だが魔法で人の心を無理やり変えることは禁忌で、「幸せは自分で見つけるもの」という教えを大切にしている。争いは好まない」
「なるほど、」
「面白そうな部族だね♪」
「はいなのです。」
マナは集落を見渡しながら、コンパスを取り出してみた。ララから受け取った、あの不思議な案内役だ。球体の先端がわずかに光を帯び、ゆっくりと、とある方向を示している。だが、今はこの集落の方へ強く反応しているようだった。
「ここ、かな?」
コンパスの針は、はっきりとこの集落を指している。反応も強い。
「ここみたい......」
マナがそうつぶやいた、そのときだった。
「わぁ~!お客さだ~!」
集落の奥から、元気いっぱいの少女が飛び出してきた。黄色い魔法服を着て、金色の棒状の杖を抱えている。明るい声と一緒に現れたその姿は、説明どおりキラライフ族そのものだった。
「やっぱり!キラライフ族なのです!」
ミクがうれしそうに言う。
少女は三人を見て、ぱっと笑顔を浮かべた。初めて会うはずなのに、緊張よりも先に親しみが伝わってくる。まさに、友好的という言葉が似合う出会いだった。
キラライフ族の集落は、見た目の印象どおり明るく、穏やかで、不思議と心が軽くなる場所だった。家々の形も独特で、街全体がひとつの星の飾りのように見える。こうした土地に住む人たちは、いったいどんな毎日を送っているのだろう。マナは興味をひかれながら、少女のほうを見た。
少女は三人の前で立ち止まり、まるで来客を歓迎するように杖を軽く持ち上げた。これから何を話してくれるのか、まだわからない。けれど、少なくともこの集落は、旅の途中で立ち寄るにはとても良い場所に思えた。
マナは魔道書をそっと閉じ、目の前の少女を見つめた。ここから先、どんな会話が始まるのか。キラライフ族について、もっと知ることができるのか。その期待が、胸の奥で静かにふくらんでいた。
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