25話「記憶喪失の少女と記憶」
マナとミクとホシノは、丘を上ってステラバブル高原へやってきた。ステラバブル高原はシャボン泡が飛び交い、そこら中が泡で満ちているため、足元に気をつけながら進まなければならない。だが、道はきちんと整備されていて歩きやすく、三人は安心してその道をたどった。目の前には風車の町「エアロバブル」が見え、そこを抜けた先にキークライ族の集落がある。冒険者組合で場所を聞き、その北西方向へ向かった末に、ついにキークライ族の集落が見えてきた。そして、そこではじめてキークライ族の少女と出会い、大きな家まで案内された。
家の前に立つと、先に中へ入るよう促された。扉の向こうには、部屋の奥に静かに座る老婆の姿がある。少女がふり返り、ゆっくりと奥を指し示す。そこにいたのは、この集落の族長と思われる老婆だった。
「......良くきたな、......旅の者............私は......この集落の...族長....ララ........」
低く、しかし穏やかな声が響く。老婆――ララは、ゆっくりと自己紹介をした。青い瞳。ルルも青い瞳。それに白い髪だ。キークライ族の特徴なのだろうか、とマナは思う。ララの姿は、静かな集落の雰囲気によく馴染んでいて、長い年月を重ねてきた人だけが持つ落ち着きを感じさせた。
「こんにちは、マナ、記憶を探していろんな亜人部族に会いながら旅をしてるの......」
「アウラウネ族のミクなのです」
「スターリー族のホシノだよ~!」
三人もそれぞれ自己紹介をする。ララは三人の顔を順に見つめたあと、何かを確かめるように目を細めた。そして、その言葉は頭の中に直接響いてきた。
(なるほど.........ようけん...わかった......マナ、おまえさんの......記憶が消えるまえの物....最古の記憶....
その時に持っていたもの....そんなものはないか?......)
「えっと?」
マナが戸惑っていると、ミクがすぐに説明してくれる。
「最古の記憶...つまり、師匠が目覚めたときに身に付けていたものや近くにあったものをだしてと言ってるみたいです。」
「あ、............これはどうですか?」
マナは物知りの魔道書をだした。
「師匠!?」
ホシノが驚いて声を上げる。だが、ララは落ち着いたまま、静かに受け止めていた。
「この人たちは大丈夫......そんな気がする...」
「まぁ、亜人は国に族してないですからいいのですが......」
ララの言葉に、部屋の空気が少し変わる。やがてララは魔道書に意識を向け、深く読み取るように目を閉じた。
(......見てみよう............中級光属性魔法「サイコメトリー」......)
「物資知に残る思念を読む魔法だ!」
ホシノが言う。ミクが小さくうなずいた。そういえば、想いを見て伝える魔法も得意とする、と魔道書に書かれていた。やはりキークライ族は、言葉だけではなく、気持ちそのものを読み取ることに長けているのだろう。とても不思議な魔法だと、マナは思った。
しばらくすると、ララの周囲に見えない緊張が走る。何か大きなものに触れたような、そんな静けさが部屋を満たしていた。
(......族長............どう?......)
部屋中に緊張感が走る。
(............見せよう......低級光属性魔法「コネクト」......)
ララが唱えると、記憶の映像が流れてきた。そこには、顔はよく見えないが、マナによく似た人物がいた。そして、聞こえてきた声はどこか遠く、けれどはっきりとしていた。
(聞こえているんだろ?)
「!?」
マナは思わず息をのむ。
(まぁ、こっちからではわからないが......
単刀直入に言う............)
(聖教国ルミナスに気をつけろ...あの国は私でありおまえさん、マナを狙っている......あいつらは大魔道族の古代魔法を狙ってもいる......だから気を付けろ......)
(そしてもし、記憶を思い出したいのならば、亜人の集落を巡れ、私は記憶を拡散させる魔法を使い自信の記憶を飛ばした、その記憶は亜人の集落の物に宿るだろう、そしてやつらもその記憶を集めているはず。
やつらより先に出きるだけ多くの私の記憶を集めてくれ、)
記憶の映像はそこで切れた。
「......いまのは............」
マナは言葉を失った。胸の奥に、見えない重さが落ちてくる。
「ねぇ、聖教国ルミナスって?」
ホシノが疑問に思う。マナ自身も、当然ながら聞いたことがない。
「聖教国「ルミナス」......亜人部族を神の敵として乱獲し奴隷として使う国家です......
この世界にある数少ない奴隷制度のある国......それに言い評判はあまり聞きません。」
「そこが、マナちゃんとマナちゃんの記憶を狙ってる?」
(......そうだ.......それと.....いま見せたのは......私が読み取りみたもの......おそらく......
記憶をなくすまえの......マナは......私たち部族の力を使うこと..を....予測していたのだろう。)
ララの声が、頭の中へ静かに響く。
(......すごい............族長、これはありえる?)
(さえるやつなのだろう、............大魔道族......とても頭........良い....)
「ホシノちゃんが大魔道族、」
「ホシザキさんがいってた。師匠!集めましょう」
「......うん、」
なにがなんだかよくわからない。それでも、そうしなければいけない気がした。胸の奥で、見えない何かがそっと背中を押してくる。
「ねぇ、でもどうするの?部族の集落はたくさんあるよ?」
ホシノが言う。
「そうですね、」
(......これを....渡そう......)
ララはなにかをマナに手渡した。
「これは?」
「ネックレスなのです?」
それはチェーンで繋がれた先に、球体のようなものがついている品だった。
(それは......探し物を示すコンパス............とても良いもの)
ルルの声が響く。
「すごいのです!」
(探したいものを念じろ......そうすれば....光、でる......)
ララの声が響く。どうやら、使い方を教えてくれているらしい。
「......念じる.......ッ~!.....」
ピカッ!
「わぁ!光が!」
青白い光が、とある方角を指している。
「あっちは......」
マナが地図を見る。
「西、レグナード王国の方角なのです」
「レグナード王国?」
「はい!新国王になり奴隷制度を消した国で国民からの指示も暑いんですよ、」
「そうなんだ............うん、行こう」
「決まりみたいだね!」
(もう........行くのか?....)
ルルの声が響く。どことなく寂しそうな感じだった。
(......記憶........見つかると...いい..ですね......)
「......はい!」
マナたちはキークライ族の集落を後にした。夜になってきたので、近くでキャンプをすることにする。
「あ!ユルル族のテントだ!」
ミクがユルル族製のテントをはっていると、ホシノが言った。
「うん、雑貨店でミクが買ったの」
「へぇ~そうなんだ!いいね!」
「はいなのです。」
「あしたは、レグナード王国の方角に向かうんだよね」
「はいなのです。そのためにも休憩しましょう、このあたりは魔物いませんし」
「うん、飛んで見たけど、いなかった」
ホシノが言う。ホシノはテントをはるまえ、あたりを見てくれていたのだ。
「それじゃぁ、あした、頑張ろう」
こうして三人は休息した。あしたに備えて。
三人の旅はまだまだ続く。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




