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魔界の命運は家庭問題に託された  作者: 三浦サイラス
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19話 最後の静寂

「…………」



 アパートに帰り着いた瞬間、智香はドスペラルドを脇に置いて、倒れるようにベットで横になる。



「どったのよ智香?」



「……外崎君って魔王様になる前から凄かったんだなって」



 さすが今の魔界を創った人物だ。町を創るなんて、信一郎はとんでもない夢を持っている男子だった。


 バカと天才は紙一重というが、信一郎は後者のように思える。根拠は全くないが、そう思わせる不可解さが信一郎にはあった。



「……まさかとは思うけども、ここでカッコイイ台詞のつもりで「魔王様殺したのは私なんです……」とか、自白しようとしてねーわよね?」



 黙ったままベットから動かない智香に沙世が警告する。



「外崎君に言っても意味不明で終わるし、魔王様に会うために私が帰ったら魔界が滅亡しちゃうんだから言えないよ」



「ならいんだけど、綺麗事だけで私の絶大超苦労(エクスディカテリア)を無に返すとかねーかんね? なんのために発明したって話になんだから。これまでを意味不明にする行為とかわけわかんねーかんね?」



「…………」



「と~も~か~? やっぱあんた変なこと考えてんよねぇ?」



「そ、そんなワケないでしょ。勝手な妄想しないでよ」



 何か思い詰めたような表情をしている智香をドスペラルドがギロリと睨み付た。


 智香はドスペラルドを軽く押し退けるが、ドスペラルドは再び智香の目の前に迫ってくる。



「あやし~な~? あやし~ぞ智香~?」



「……何も怪しくありません」



「ホントか~? アンタ絶対変なこと考えて――ゲブアッ!?」



 肺が潰れたような沙世の声が聞こえた。



「ううぅ~、智香ちゃぁ~ん」



 何事かと智香は思ったが、ドスペラルドから聞こえた声で納得する。



「ちゃんとご飯食べてるのぉ~、おトイレできてるぅ~、寂しくない~?」



「紅葉お姉ちゃん……さっき沙世お姉ちゃんを跳ね飛ばしたでしょ?」



 紅葉の突撃をくらって沙世が飛んで行ったのは想像に難くない。



「は~、智香ちゃんの声~ たまらないよ~ とっても身体に染みこむよぉ~ スーッて~ スーッてくる声なのぉ~」



「私がヤバい薬みたいになってるんだけど……」



 感極まっている紅葉の声が智香の耳に届く。綺砂倉町に来たあの日から、紅葉は仕事で外に出て帰って来ないままだったので、久しぶりの声だ。



「いつつ……油断してたわ。智香との通話中は紅葉姉さんに気をつけねーとなのに」



「紅葉お姉ちゃん相変わらずだね」



 紅葉の突撃を思い出しつつ、智香は沙世に同情した。



「やぁぁぁぁぁぁぁぁっとお仕事終わったよ。あーん! もう、佐々木場ちゃんったら腹が立つッ! 私直々捕まえてやろうと思ったのに、一週間も逃げ回れちゃうなんてぇ~! こんな相手は始めてだったよ~ぅ。お姉ちゃん疲れたー」



「え? 一週間!? お姉ちゃん相手にそんな逃げられる相手がいたの?」



 紅葉が魔王の右腕と言われているの強いからだけではない。様々な専門家(スペシヤリスト)でもあるからそう呼ばれているのだ。現場指揮もその一つで、紅葉が事件を担当すれば即座に事件を解決する。



「捕まえるのは得意と思ってたんだけどね。思い直す必要があるかも~」



 なので、紅葉から一週間も逃走できた犯人の存在を、智香はにわかに信じられなかった。



「姉さんが追ってたヤツならしょーがねーわよ。最近話題のアズ・佐々木場・ミストラーなんだし」



「佐々木場って銀行強盗の? うう……」



 智香にとって忘れたい記憶(お漏らし)が蘇る。



「智香がそっちに行った時にさ。地獄で反乱が起きたんよ。で、その地獄のてんやわんやを起こした主犯が佐々木場。銀行強盗の人質係だって舐めてたけど、まさか紅葉姉さんでも捕まえるのに苦労するヤツとは思わんかったわ」



「魔界じゃそんなことが起こってたんだ」



 綺砂倉町に来て智香はヤバいことになっていたが、魔界は魔界でヤバい事件が起きていたらしい。

「でもねでもね! もう事件は解決したよ智香ちゃん! 佐々木場ちゃんはお姉ちゃんがこの手でビシッとバシッと捕まえたから大丈夫! ちゃんとお仕置きもしてあげたから、もうこんなバカな考えは起こさないはず!」



「お、お仕置きね……」



 紅葉は笑い混じりで言ってるが、佐々木場は間違い無く完膚なきまでに叩きのめされただろう。果たして佐々木馬という魔界人の原型は残っているのだろうかと、智香は背筋を震わせた。



「さすが以前は紅葉姉さんと同格と呼ばれただけある、ってとこなんかな。佐々木場はしばらくネタにされそーだわ。まだまだ同じよーな記事やら話題やらが溢れるのはとまりそうにねーわね。つまんな」



 代わり映えしそうにないメディアに、嫌気が差している沙世の声が聞こえた。



「そうね~。解決したんだし、一刻も早く風化してほしいわよね」



「まあ、ほっとけばいいじゃん。紅葉お姉ちゃんのおかげで、完全に事件が解決してるんだからさ」



「エヘヘ~、ありがとう智香ちゃん」



 智香に紅葉の姿は見えないが、声からして満面の笑顔をしてるのは容易に解った。



「あ、そうそう智香ちゃん、人間界はどうなの? 馴染めてる?」



「うん、問題ないよ。みんないい人だし、良くしてくれる。人間の魔王様はちょっと変な人なんだけど――」



 これまであった出来事を話すと、紅葉は可笑しく楽しく智香の話を聞いていた。これに沙世も加わって、智香は三姉妹での会話を久しぶりに楽しんだ。


 智香は魔界のことを聞いて、紅葉は人間界のこと聞いて、沙世は二人の話に補足をしたりツッコミをしたりと会話は大いに盛り上がった。


 そのまま智香が眠る時間になるまで話は続くと思われたが――姉妹の会話は突如終わりを迎える。


 エクスディカテリアが警告音を発したのだ。



「沙世ちゃん!」



「ついにきちまったわね……」



 警告音は智香にもドスペラルドを通じて聞こえている。


 何があったのかと聞くまでもない。



【外崎信一郎へ明確な殺意を察知。外崎信一郎へ明確な殺意を察知】



 ドスペラルドが信一郎の刺客を発見したメッセージを無機的に告げる。



「智香!」



「智香ちゃん!」



「うん!」



 沙世は素早くキーボードを叩くと魔界戦衣装着機能(チェンジバトルドレス)のブレーカーを落とした。


 瞬間、次元の裂け目から智香に向かって魔界力が発射される。

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