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魔界の命運は家庭問題に託された  作者: 三浦サイラス
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15話 人間界の友達

大いに予想できる質問だったが、まだ智香はそれに対する言いわけを考えていなかった。


 自分の正体は魔界人だと言うわけにはいかないし、言った所で信じるとも思えない。魔界力がどうのとか、タイムワープとか、魔王がどうのこうのとか言っても、二人にとってあまりにかけ離れた話すぎる。



「えーっと外崎君とは……」



 適当な言い訳を考えられず、智香は目を泳がせ、頭を掻く仕草をしていたが。



「いいじゃん湊っち。誰にだって言いたくないことくらいあるもんよ」



 そう言ったのは妙有だった。



 思いもよらない所から助け船が入り、智香は目をまるくする。



「でも気になるじゃない。妙有は気にならないの?」



「だって、こんなに言いづらそうにするのは、簡単には言えない内容だからじゃない。なのに無理に聞こうなんて思わないかな」



「う……」



 妙有は智香の弁当からシューマイを取ると、自分の弁当から唐揚げを変わりに置いた。妙有は「交換ね」とウインクすると、シューマイを食べて、うんうんと頷く。美味しかったらしい。



「まだまだ友情発展途上だしさ。答えづらいなら聞かない。それより私達はもっと仲良くならなきゃ。ね、副委員長さん」



「ぬぬぬ……いっつも正論言うんだから」



 湊は咳払いして智香に向き直る。



「ごめん智香……言いづらいこと聞いちゃって……」



「き、気にしないでいいよ! 言えない私が悪いんだもん!」



 申し訳ない顔をする湊に智香はブンブンと首を振った。



「智香っち日本語ペラペラだよね。何処かでならったの?」



「あ、うん。お姉ちゃんから色々教えてもらったの。お姉ちゃんは仕事で元々日本に住んでて、そこで色々と」



「ほー、じゃあ日本には結構来たことあるのかい?」



 妙有の質問に、智香は人間界での自分設定をスラスラと話していった。キチンと暗記してるので、その答えは淀みない。


 話していくうちに話題は妙有や湊にも移り、いつの間にか色んな話題が三人の間を飛び交っていた。



「さっき流しちゃったけど、湊って副委員長なの?」



「まあね。行事があると、委員長やってる信一郎の面倒をいっっっっっつもみなきゃいけないから大変よ。アイツ、物事に集中すると大概は暴走する変なヤツなの」



「いつも?」



 今は五月で、さらに自分達は一年だ。湊の言い方だと、信一郎と長年の付き合いがあるように聞こえる。



「あ、私と湊っちは信ちゃんと幼馴染みの関係なんだよ。小学校からの付き合いでね。で、湊っちはその時からずっと副委員長やってんの」



「委員長って自分からなろうとするヤツいないでしょ? でも、信一郎っていっつも手を上げて我先にと委員長になっちゃうヤツでさ。そうなると私はアイツのフォローしてやんないといけないから、自動的に副委員長やるハメになるの。大変よ」



「私と湊っちと信ちゃんは小学校からずっとクラス一緒なんだ。だからっていうか、信ちゃんと湊っちは九年間ずっと委員長と副委員長やってたの」



「へぇー、そんなことあるんだ」



 信一郎と湊はこのクラスでも委員長と副委員長をやっている。どうやら記録の更新は続いてるらしい。



「もしかして、他にも二人みたいに外崎君の知り合いっているの?」



「いんや、他は高校からの友達だよ。腐れ縁なのは私達三人だけ」



 ハハハ、と妙有は笑う。



「高校まで信一郎と一緒だなんて思わなかったわ。今年は副委員長しなくていいと思ってたのに」



「そう思うならやらなきゃよかったのに」



「そ、そんなワケにはいかないでしょ。アイツに付き合えるのは私くらいなんだし……」



「はいはい」



「……何でジト目で私を見るのよ」



「アハハ、二人共仲良いんだね」



 心地よくキャッチボールが行われる湊と妙有の会話を聞いて、思わず智香は笑った。



「って、私達のことなんてどうもいいの! 智香よ智香!」



 再度、二人の視線が智香に集中する。



「智香が前に住んでたとこって、どんなとこだったの?」



「それが綺砂倉町とすっごく似ててね。私驚いたんだけど――」



 転校生初日なのもあって智香に関する話題が多く、三人は笑顔を交えながら話していた。


 湊と妙有は時折漫才のようなやり取りをしながら会話を続け、それが智香のぎこちなさを消していく。そのおかげで、さっきまで死にたいと落ち込んでいた心がポカポカと暖かくなっていった。


 高校で知り合えた初めての友達。


 口には出せなかったが、智香は湊と妙有の間に生まれた友情に感謝した。



(よかった……友達なんてできないと思ってた……)



 思わず涙が出そうになるが、どうにか目の奥に留める。



「……ん? アイツ何の用かしら」



 ふと、湊の視線が信一郎の方へ向く。


 見れば、信一郎が手招きしている。どうやら湊に「来てくれ」と言っているらしい。



「ごめん。ちょっと行ってくるわ」



 弁当箱に箸を置いて湊が席を立つ。


 信一郎のいる教室後方に向かい、何やら話を始めた。



「何よ」



 聞かれて構わないのか、会話の内容が智香や妙有にも聞こえている。



「来てくれて助かったぞ湊。さすが副委員長だ」



「褒めてくれてありがと。で、何の用? まだ食べ終わってないんだけど」



「時間は取らせない。お前に頼みがあるのだ」



「頼み?」



 湊の口調は少し不機嫌だ。おそらく、三人でワイワイやっていたのを邪魔されたのが原因だろう。



「あのだな――」



 信一郎は湊の耳元に口を近づけ――即座に湊はバッと離れて距離を取る。



「な、何やってんのッ!?」



「何って、囁こうとしただけだが?」



「さ、囁かないでよッ! ビックリしゅる……するでしょ!」



 顔を赤くした湊の呼吸が一気に荒くなった。さっきの信一郎の行為にかなり動揺したようだ。



「しかし囁かねば誰かに聞こえてしまうのだが……」



「誰かに聞かれちゃマズい内容を私に話さないで」



 信一郎は「むぅ……」と観念したような覚悟したような顔をして唸ると、大きく息を吸った。



「智香君がなぜ僕を嫌っているか聞いてほしいッ!」



「ぶふッ!?」



 律儀というか、なんと言うべきかなのか。信一郎は湊にむけて大きな声ではっきりと聞いた。当然、智香にも余裕で届く声だ。そのせいで食べてるモノが口からでそうになる

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