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対抗する者―Protestant―

僕ら二人は目で合図を送り攻撃を仕掛ける事を決めた。

まず初めの攻撃はみつ。

山下を背後から仕留める、その間に周りの信仰者達を僕が倒す。

そんな作戦なのだ。

伊藤にもその事を伝える。

まだwizardに依存していない彼女なので戦わさずサポーターを頼むことにした。

幸いなことにみんな山下の演説に集中しているので誰も気づかない。

どうやってここまでの信仰を作り上げたのかが気になるくらいだ。

作戦決行まで3、2、1、0。

 みつがゆっくりと歩き山下に近づく。

だんだんと速度を上げる、足音は上げず山下に気付かれないようにする。

山下の目前に行くとみつは大きく手を振りかざした。

ブワンッ!!

そこまで強く振っていないのにバットを本気で振ったような音がした。

それと同時に山下の上半身が宙に舞った。

夏の空に舞う花火のように血しぶきが飛び散ったのは胴が跳ね上がって少し経った頃だった。

ヘモグロビンの鮮やかな赤褐色がが何とも綺麗で悍ましく数秒間目が離せなかった。

宙に浮いた彼の顔は自分が死んだということに気付いていなかった。

恐らくだが彼はそれを気付く前に力尽きたのだと思う。

やがて上半身は地面に鈍い音をたて着地した。

あんなに苦労した人がこんな簡単に死ぬなんてと思った。

多くのwizard達は怯えて出入り口の方に一斉に向かっていった。

それに対しあるものは抵抗を行ってきたが僕らの以上の強者はいなかった。

全て数秒以内に首が飛んでいく。

ばたばたとどんどん人数が減っていく。

会場中はツンと鉄の匂いがする。

夢中になって僕らはほかのwizardを倒していった。

和は多くても弱いものは弱い。

いつのまにかみんな死んでいた。

この中におそらく善人もいただろう。

でも僕らは躊躇なく殺した。

さて帰宅しようと出入り口を開けた。

「おいおい、待ってくださいよ。」

山下の声が確かに聞こえた。

僕らは声のする後ろの方を見た。

先ほどみつが殺した山下が確かにそこにいた。

手には時計を持っておりあの営業的な笑顔でにやにやして僕らの顔を伺っていた。

その時計を自分の顔の横に持ってぶらぶらと揺らして見せた。

恐らくだが自分の時間をそれで戻したのであろう。

卑怯だ。

「君達は馬鹿かい?私がこれだけで死ぬとでも?」

「ああ、馬鹿だから死ぬかとw」

頬についた血を腕で拭い、ふき取る。

「まあいいさ。これだけの事をやってただで済むとは思わないでくださいよ。」

時計を天に向けた。

何か技を出すのか?と警戒ていたがそうではなかった。

一筋の光が時計から発射された。

天井まで行くと雲のようになり、それから雨が降り出した。

しばらく様子を見ていると先ほど自分たちが殺したwizardたちが復活してきた。

時間はそのwizardが死ぬ直前に戻され、それらは深く怯えていた。

先ほどまでの畏まった様子は全くなく、人間性を感じられた。

「おめえら、戦えよ!戦ってくださいよ!」

腕をブンと振り山下はみんなに指示を出した。

戻した時間が悪かったらしくそういった余裕はなかった。

数人かは真面目に戦ったが死んでいった。

僕の大きなあの手でつぶしたり、みつが切り裂いて行ったり。

「ったくつかえねえな…。オラ、戦えよ。」

山下は本性を現した。

あの営業的な笑顔はそこになく、いつも使っていた敬語はいつの間にか使わずその辺のヤンキーのような言葉遣いになっていた。

戦わないwizardの達を蹴り、殺し、時間を戻し、蹴り、殴り、殺し、時間を戻す。

そうやってwizardたちに確実に恐怖感を植え付けていく。

なんとも恐ろしかった。

 そうしていくうちにwizardたちの意識はどんどんと高まっていった。

僕らも弱者と応戦する。

何十回も殺したwizardとまた戦う。

なんだこの気分は。

罪悪感、人としての自覚はい消え去り「めんどくさい」という感情がだんだんと強まっていった。

「死ね!」

一気に大きな魔法を唱え一気に氷漬けにしていく。

それをみつが腕の一振りで破壊する。

バキッという氷の割れる動作と合わせwizardの命も同時に散って行った。

その時血は吹き飛ばなかった。

山下は何度も何度も死んでいったものを蘇生させていく。

魔力は無限に存在するものではない。

これは僕等対山下の耐久戦なのだ。

何人もの時間を戻す、この作業はきっと多くの魔力を消費しているはずだ。

恐らくそろそろ尽きてしまう頃であろう。

「はあはあ…。雑魚めが、使えねえなあ…。」

この通りだ、山下は疲れてきている。

でも次の瞬間目を疑うものを見てしまう。

それは山下自身が自分の時を戻し体力を回復しているのだ。

これでは先に僕らの魔力が尽きてしまう。

「みつ!あいつの時計を狙え!」

「わかった」

みつと僕は対象をwizardから山下に代え攻撃を始めた。

伊藤もピンチなことを察知してwizardに対し妨害始めた。

葉っぱを使い宙にあげ、なるべく殺さず僕らの邪魔ができないようにしてくれた。

 僕は魔法で地面を凍らせ、こかそうとする。

が、それに対しても時間を戻し攻撃を無駄な動きをせずに動く。

みつも何度も攻撃を仕掛けるもすべてきれいによけられる。

ついに恐れていることが来た。

山下が時間を止めたのだ。

「これで終わりです。みつが死んでもまた後継者探せばいいし、ねえ。」

そうやって時が止まっている間ゆっくりと僕らの周りを歩いた。

「どういうことかわかりますよね?殺すって意味ですよ。」

僕をこえ、みつの前についた。

だめだ、やめてくれ。

声を出そうとしても出ない、ただただ見て聞くことしかできない。

やめてくれ、やめてくれ。

その想いは伝わることなく山下は動き続ける。

「さよなら、魔女になれなかった魔女さん」

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてくれ。

山下が時計を剣の形に変え、ゆっくりと僕に見えるように振り上げる。

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて。

丁度剣を胸元に持ってきた。

にやりと営業的ではない、人の欲望が込められた笑顔でこちらを見てきた。

「大切な人をなくすねええ、ははは。くたばれえええ」

大きく剣を振りかざした。

「馬鹿なのは、お前」

「へ?」

パキッと音がし、その剣は折れた。

それだけで終わると思っていた。

しかしそれだけでは終わらなかった。

そこから亀裂が出来ていきやがては砂になってしまった。

時間停止はその瞬間に解かれ無事に動けれるようになった。」

先ほどそれらをしたのはみつであった。

何故か時間停止中でも動けていた。

「みつ!大丈夫!?」

「うん、大丈夫。そんなことよりも目の前の事に集中して!」

そう、時計を壊したから終わりということではない。

それを使いこなしていた持ち主はまだ生きているのだ。

「おまえらあああああああああああああああああああああああああああああ」

すごいスピードで僕らに遅いかる。

体をいい角度にひねり二人同時に攻撃をできるように足を振りかざした。

みつは交わし僕は反射的に氷の盾で防いだ。

それでもかわしきれなかったので一歩後ろに下がる。

山下の踵が地面に着いた。

そこを見てみると綺麗に凹んでいた。

勢いがなくなる事はなく、ぶんぶんと手をふりまわし攻撃してくる。

どんどんと皮膚が黒くなって行く。

「しねしねしねしえねえええええええええええええ。魔女様に認められるんだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

どんどん一発一発が重くなる。

魔女の後継者のとして見込まれたみつは片手で防ぐことができる。

一方僕は完全に防ぐことはできす遠くに吹っ飛ばされる。

伊藤は山下とかかわらずwizardの対処にあたっている。

それを見た僕は殺せない伊藤の代わりにwizardを殺していた。

「拓馬君…」

「どうした?怪我はない?」

「なんで殺したの?!もう生き返れないんだよ!?悪い事してないんだよ!?」

「こういうやつらは死んだ方が救われるんだ。僕も病んでいたからわかる」

「死に対して怯えてたじゃん!」

「そんなの知らない…」

僕はその言葉を残し、逃げるようにしてそこから立ち去った。

再び山下との戦闘に加わる。

「無視しないでよ!このメンヘラ野郎!」

攻撃をしている最中にそう言われたため気がそっちに行ってしまった。

油断していた僕は山下の痛恨の一撃を喰らってしまった。

首が鞭打ちになり背中から椅子に着地した。

痛さなど気にせず直ぐに立ちあがる。

「ばーか、ばーか!」

相変わらず伊藤は馬鹿にしてくる。

僕はそれを無視し、再び戦闘に加わる。

またそれに気を取られてしまったら勝てるものも勝てない、そう判断したからだ。

 しばらく戦っていると山下の皮膚がすべて真っ黒になっていた。

クラミティ化が始まる。

それまでに倒せなかったのはかなり痛い。

すると山下の体からは時計の針のようなものがめきめきと皮膚を貫いて出てきた。

バキバキバキバキバキ。

気が付けばそれらは背骨から腰に掛けて浮き出ていた。

そして彼の周りには歯車が何枚か浮いていた。

厄介だ。

さらに倒しにくくなってしまったのだ。

どうすればいい…。

吟味する。

逃げるしかないのか…?

「伊藤!助けてくれよ!」

僕は伊藤に助けを求める。

流石に二人だけでおえるものではない。

「ばーか!誰がお前を助けるかっていうの!」

やはりそうだ。

僕を恨んでいるのだ。

あんなことをして怒らない人などいない。

本当に無知だな、僕って…。

無理ならば僕らで戦うしかない。

みつの姿を見てそう思った。

みつは変わったのだ。

クラミティ化して暴走して、戻った時から。

静かになった。

いや冷静になった?

口で詳しく説明することはできない。

それ位可憐で魅力的なのだ。

今だってそうだ。

昔はあんなに強くなかった、無駄ない動きはできなかったし、冷静に動けてはいなかった。

今は違う。

自分の意思で動き迷いを持たず冷静に可憐に戦っている。

自分がああいう風に変えてしまったのだなと思うと悲しくなってしまう。

どうやったらみんなが幸せになるのだろう、そんな事を最近よく考えてしまう。

「みつ危ない!」

攻撃を弾いて隙ができたみつに対し瞬間的に山下が攻撃を入れる。

防ぐために僕は氷を放つ。

が、間に合わずみつは宙に舞う、さらに攻撃が入る。

お腹に重い一撃を、着地する瞬間を狙われ蹴られる。

そのことにってまた宙に浮く。

その間わずか0.5秒。

みつはそれらを対処できずに思わず吐血。

僕が山下の気をそらすことにより攻撃は終わったがみつは地面にうずくまってお腹を押さえていた。

呼吸を荒くし、お腹を押さえていない片手を使いその場から距離を取ろうとする。

「はあはあ…は…ああ…。ウぐっ…」

その様子を伊藤は笑ってみていた。

自分の大切な人奪っていった女。

いわゆる魔女、そいつが今こうやって苦しんでいる姿を見ていると笑いが止まらないのだ。

「あははあははははっは。ばーかばーか!死ね死ね」

先ほどとは全く違う態度を僕らに見せていた。

きっと何かが吹っ切れただろう。

決してwizardには依存していなかった。

それだけが僕らの救いだった。

引き続き僕は山下の応戦をする。

手に持った針をぶんぶん振り回し、宙に浮いた歯車をすごい速さで飛ばしてくる。

まさにピンチな状況だ。

全てをかわし、一回蹴りを入れる。

隙ができる、素早く氷の刃を何本も作り彼に放り投げる。

5本中二本は弾かれる、三本はズブリと首、胸、腹に一本づつ刺さる。

そこから氷ついていく。

パキパキと音を立てだんだんと動きが鈍くなる。

勢いに沿って歯車、針と破壊していく。

その時針は腰にしまった。

後で使うのだ。

それらは簡単に壊れて行った。

そしてそれを山下の目に刺した。

丁度二本あったので一本ずつ、丁重に刺していった。

視界が失われたのであれば動くこともできまい、そう考えたのだった。

あとは倒すだけ、それを伝えようとみつの方を見た。

そこにいたのは弱っていたみつではなく伊藤と戦っていたみつだった。

伊藤は不思議なことにクラミティ化してはいなかった。

魔法の杖を起用に振り回し、みつと互角で戦っていた。

今まで見たことない動きを見せ丁重に攻撃をかわしていく。

「しーね、しねしね。お前なんて死んでしまえ」

「雪ちゃん、こんなことはよくないよ!やめてよ!」

「誰が私の彼氏を奪ったと思っているの?みつちゃんでしょ?それならば奪いかえすしかないの。みつちゃんを殺してもう一度付き合うの」

魔法を駆使し責める。

一方みつはそのことがいけないことだと思っているためあえて攻撃はしない。

何枚もの鋭い葉を化するつつも引き続きかわしていく。

こんな無謀な戦いこれ以上したくない

私が悪い。

私が暴走しなければ拓馬は私の事を気付かわなかった。

私が悪い。

反省しないと。

そこで私は決心した。

この二人に幸せになってもらおう。

「雪ちゃん、私を殺していいよ。」


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