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魔女様

「みつさんに用がある」

山下はそういった。

その営業的な笑みは僕ら二人にとっては少しトラウマなのだ。

僕は反射的にみつを後ろに回し守る体制へと変えた。

「僕の後ろにいて。」

「うん…。」

そうみつは心配そうな声を上げていた。

そもそも「用がある」というのはどういう用なのだろう。

殺すのか?

宗教の勧誘は先ほど本人が否定していたためそれは違う。

本当にただの用なのか。

こいつの事だから本当にわからない。

でもとりあえず警戒しつつ話を聞くことにした。

「みつに用がある?」

「その通り。」

山下はゆっくりとこちらへ近づいてきた。

僕の方ではなくみつの方へと距離を責めて行った。

彼女の前に着くと彼は笑みを浮かべた。

「お誕生日おめでとう」

ぱちぱちぱちと等間隔の拍手を鳴らしにやにやしていた。

「え?私今日誕生日じゃないよ」

それはそうだ。

みつの誕生日は7月2日だ。

それにあまり会った事ないのに知るはずがない。

「それは知ってる、でもそれとは違う誕生日。」

どうやら違うようだ。

なにか別の誕生日のようだった。

まさかそのことについての用事なのだろうか。

過ぎた勿体ぶりを仕掛けてきた。

気付かないうちに自分もどんどん話にのめり込んでいった。

「違う誕生日?」

みつは聞き返した。

それにしても彼奴は躊躇なく僕らに話して大丈夫なのだろうか。

「その通り。なにか心あたりはあるんじゃないか?」

心あたり…。

「みつ、あまりこいつと話すなよ。」

「拓馬、雄平君なら何か知ってるかもよ。ええとね、髪の毛の色が戻らない、wizardになれない…かな」

僕の忠告を無視してこれまでの二つを話した。

みつもみつなりになにか考えがあるようだ。

「そう、それだよそれ。」

「それがどうしたの?」

「誕生日おめでとう魔女さん」

「「魔女さん?」」

僕らは声を合わせそういった。

魔女さん…。

本当に話が追いつかない、山下は何もなのだ?

「魔女さんだよ、魔女さん。」

「山下、からかわず説明してくれよ」

「どうしようかな、でもまあいいか。説明するよ。魔女ってんのはねwizardの最終形態みたいなものだよ。」

「最終形態?」

「そう、君がwizardの最終形態さ。そして魔女の後継者さんだよ。おめでと」

それでもなお僕たちは彼の言っていることが理解出来なかった。

ただ一つ理解できたのは嫌な事に巻き込まれるという危機感だった。

それをみつより早くできた僕はそれらを伝えようと叫んだ。

「逃げるぞ、みつ!」

叫んだ瞬間みつと目があった。

彼女の眼も危機感を察している感じだった。

近寄り担ぐ。

担ごうとした、しかし山下の能力が発動した。

視力、聴力が残っているも身動きはできないため襲いかかる恐怖感はとてつもない。

「待て待て、お話したんだから逃げないでよ。」

その言葉が終わるとともに時間も動き出した。

先ほどまで力が入らなかったので転倒してしまう。

尻もちをついた僕らを山下は見つめる、逆光のせいで表情は伺うことはできなかったがおそらくまたあの笑みを浮かべているのだろう。

ただただ見つめるだけであったのは不幸中の幸いだ。

だが逃げれないとなれば話は別だ。

時間を止めれるなんて卑怯すぎる…。

「じゃあ、ついてきてくれるかい?そしたら君らには攻撃しないよ。」

彼はみつだけに手を差し出した。

危ないわけではなかったがそれを手で払いのけた。

自分が素早く立ち上がりみつに手を差し伸べる。

立ち上がらせる最中山下は「それは酷いよ」と笑っていたが僕は無視をした。

「大丈夫?」

「うん、大丈夫。ありがと。」

それをにやにやしながら山下は見ていた。

僕らが立ち上がったのを見て話すことを再開した。

「悪いことはしないからしないからついてこないかい?魔女様が呼んでいる」

「その魔女様が分からない。」

みつは積極的に質問した。

自分の事、その魔女の事について知ろうとしていたのだ。

「あー君達、知らないのか。いいですよ、説明するよ。」

彼は淡々とそのことについて話始めた。

流石宗教の柱的存在だ。

「その魔女様の名前は鹿雨。彼女がwizardの実の製作者だよ。君達より結構年上だから失礼ないようにね。」

wizardの製作者?

気になる。

気になる事がどんどんと浮かび上がってくる。

どうやって作ったのか、なんでつくったのか、クラミティはなにものなのか、後継者に何をさせようとするのか。

その全てが気になる。

みつもきっとそうだろう。

今までwizardの事を何も考えてなかった僕らなら当たり前の事だろう。

「ねえ、もっと聞かせて。」

「ダメです。続きはついてきてからね。」

キャバクラみたいな商法だ。

これはついて行っていのだろうか…。

僕は彼女らが話している間吟味していた。

「わかったついていく。」

「よし、交渉終了。彼氏さんもついていくかい?」

少し皮肉のようにそう言ってきた。

僕はそれを押し切るように山下が喋り終る前に返事をした。

「ついていく。」

「よしよし、お二人様ごあんなーい。っとその前に元カノさんもつれていくかい?」

皮肉だ、完全なる皮肉だ!

だが僕は湧き上がる怒りを飲み込んだ。

ここは冷静にいかないと…。

雪か…。

念のために誘っておこう。

「おう、元カノもつれて行こう。」

皮肉を返すようにそういった。

「待って拓馬、それは困る。」

みつが僕の裾を引っ張った。

「なんでだよ。」

「今さっき喧嘩したから…、会いたくない。」

「はあ…。僕のせいか…。二人で謝ろう。」

そのことが決まったので雪にlime電話した。

その間山下はめんどくさそうな顔をしていた。

そういう友達との友情が嫌いなのだろう。

やがてはポッケからスマホを取り出しゲームを始めた。

音が周りに漏れないように丁寧にイヤホンを付けた。

おいおい…、逃げてもいいのかよ…。

「もしもし、雪。」

「どうしたの?」

「ちょっと、今から会えないの?」

「おいおい、そんなこと言ったら勘違いだれますよ!」

ゲームをしていた山下がイヤホンを片方だけ外しそのことについてツッコんできた。

僕は焦りすぐにミュートにした。

「やめろよ!というかなんできこえるんだよ…。今からちゃんと話すから大人しくしとけよ!」

「はーいよ。任せて。」

「頼むよ…。」

彼のその反応を見て再び通話に戻る。

「ああ、ごめんごめん。ちょっと用があるから進南公園に今すぐ来てくれない?」

「あ、うん…。わかった。」

すこし悲しそうだった。

先ほどのみつの言葉を思い出す。

でもいいんだ。

過去には帰れないし、自分は決めた事なのだから。

「wizardの事についてわかりそうなことがあるんだ。」

「あ、うん。いくよ、いそいで」

「ありがとう。助かるよ、ありがとう雪。」

「うん。それれとねその「雪」っていうのやめてくれない?そういう関係じゃないでしょ?」

「あ、え、あ、うん、ごめん。そうだったね、そういう関係じゃないんだ…。」

その直後電話を聞かれた。

むなしく僕の耳元からその音が響いた。

「ははは、終わったかな?君馬鹿でしょ。」

電話を終えて少し落ち込んでる僕に対し山下はゲームをしながらそう言ってきた。

間違ってはいない。

それは間違ってはいなかった。

「好きだった子がほかの女の子のために別れて助けてほしいときだけ助けを呼ぶって本当に屑ですよね。」

「…」

「おっと、失言でしたね。まあ気にしないでくださいね。」

「ああ…。」

「拓馬、あまり気にしないでね。私のためにしてくれたんだから。」

「僕は本当に馬鹿だ…。はああああ…。」

ベンチに座り再び頭を抱える。

髪の毛をぐしゃぐしゃしした。

 少し時間が経った頃だろう、雪が、いや伊藤がやってきた。

静かに地面に着地して、wizardの姿を解く。

おぼつかない足取りでゆっくりと拓馬に近づく。

背中をポンポンと叩き俯いた僕に来たことを知らせる。

「拓馬君、きたよ」

「あ、ゅ…伊藤…。」

「用ってのは?」

「そこの眼鏡のお兄さんがwizardの事についていろいろ教えてくれるらしいからついていくんだ。みつの事で何かわかりそう。」

「みつちゃんがどうかしたの?」

「見たらわかると思うけど髪の毛の色が戻らなかったり、wizardになれなくなったりしたんだ。おまけにその眼鏡からは魔女様ってよ。」

それを聞いた伊藤はしばらく考えていた。

僕語彙力ないからもしかしたら伝わっていないのかも…。

「あっ、あー!その眼鏡の人が変態で絡まれてたわけね!それは大変ね」

「惜しいけど違う!」

「君達ちょっと酷くない…?」

「魔女っていうのはこの変態眼鏡曰くwizardの製作者らしい。」

「うんうん、じゃあみつちゃんがつくったの?」

「それも惜しいね。wizardの製作者の後継者がみつなんだ。なんでみつが選ばれたかは全くわからないんだけどね。それでそれらを知るためにこの変態眼鏡君についていく。そういう感じだね。」

「そういうことね。」

僕が伊藤に山下に気付かれないようにジェスチャーを送り耳を貸してもらう。

「もしかするとみつは変な宗教の信仰元になるかもしれない。そうすると今各地で発生しているクラミティ化しているwizardを止められるかもしれない。だから頼む、今回は協力してくれ。」

「わかった。」

僕らはその体制を解き、山下に準備万端な事を伝える。

彼はようやくスマホゲームを終え僕ら一人一人の目線に合わせていく。

睨んでいるわけではなかったが少し怖かった。

見終わると彼はポッケから時計を取り出した。

その時計は以前使っていることを見たことのないものだった。

「目を瞑っていてくださいね。」

皆がそれに合わせ目を閉じる。

数秒が経ったとき目を閉じていてもわかるような光が発生した。

ピカッと一瞬光った。

怖くて一応目を開けなかった。

「目を開けていいですよ。もう着いたからさ。」

僕は目を開けた。

そこはドームのような広いとだった。

僕らはそのドームのステージに立っていた。

目の前から差し込んでいるスポットライトの光がまぶしく慣れるのに少し時間がかかった。

その会場中には多くのwizardが多くいてみんなかしこまっていた。

僕らが現れた瞬間それらは何故か敬礼をした。

敬礼をし、軍隊のようにパシッと気を付けをした。

僕は悟ったここはあの危ない宗教のアジトなのだなと。

だってみんな様子が変なのだから。

男女問わずみんな何かに囚われたように畏まっている。

しばらく周りを見渡してみる。

あることに気付いた。

ここにいる人のほとんど、いや全員がみんな中高生なのだ。

若々しかった。

この子ら全員病んでいる、そう考えると日本って本当に鬱病大国なのだなと少し悲しくなった。

「君達~!よく聞いてくださーい!」

山下が部下からもらったであろうマイクを持ち大声でみんなに叫んだ。

それにみんなが答える形で「はい!」と返事した。

高い声、低い声、男の子の声、女の子の声が混ざりきれいなものへと形を成していた。

「拓馬、私この子達全員殺す。」

隣にいたみつが少し恐ろしい目で山下を睨みつつそういった。

手からは謎のオーラのようなものを発生させ自分は戦えるんだぞとそれを証明していた。

魔女になったからそれ相応の力があるのであろう。

その間僕とは目を合わせることはなかった。

「本気か…?やめとけよ!」

小声で山下に気付かれないようにやり取りをする。

彼は引き続き演説を行っていた。

内容は新しい魔女だとか、wizardだとか。

本当に営業的な奴だ。

「なんで?この子ら殺したら平和になるんだよ?もう拓馬が悩む必要がなくなるんだよ?」

「それでも…。この数じゃ殺されてしまうよ…!?」

「うん、知ってる。でも私はやる。」

「…。わかった、死ぬなよ?僕も手伝うから。」

こうして決まったのだ、僕らの計画が。

やはり僕ら二人の目的はそもそも違ったのだ。

僕はwizardについて知る、みつを治す。

みつは山下達を殺し、僕の悩みを消す。

そういうことだ。

僕らはそういう関係だったのだ。


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