決断
みつよ伊藤が接戦していた。
みつは戦いたくないという意思表示のため攻撃は行わずそれらを避けるだけだった。
きっと複雑な心情で戦っているのだろう。
それがわかるような悲しい表情を浮かべていた。
一方伊藤はみつとは違い積極的に魔法、物理攻撃を仕掛けている。
長い髪を揺らし戦う姿はまるで伝記で見たジャンヌ・ダルクのようだった。
何故二人は戦うのだろうか。
僕のせいであろうか?
僕が二人の事をあまり考えなかったせいで傷ついた。
でもあの様子を見るにあれは伊藤ではない、彼女があんなになるはずがない。
いつも冷静に物事を判断して、自分より人を優先する彼女がそんなことで人を殺めようとするはずがない。
絶対あの伊藤は伊藤ではない。
他のwizardの魔法だ。
そう思ったのだ。
みつは攻撃をするならまだしも防御だけでその場をなんとか保っている。
流石に体力、魔力ともに持たないと思う。
だから彼女のサポーターになるためまずは目の前にいる山下を片づけないと。
両目の視力を失った彼はもはや暴れるという行為しかできない。
無作為に動くため先ほどと違って動きは単純なので倒しやすい。
腕をぶんぶんと振り回す、一発一発が重いが目が見えていないためすべてが不発で終わる。
音を立てずに素早く近づく。
なぜなら今の彼は聴力しか頼る情報源がそれしかないからだ。
だから音をあ立てずに近づき確実に攻撃していく。
手、腕、肩、足、腿、太腿と切り落としていく。
少し硬いが切り落とせないということはない。
僕の行っているこの行為はまるでギロチンの刑のようなものだった。
血は吹き出て、僕の衣装はそのせいでどんどんと純白から紅色に変わっていく。
やがては胴だけになった、流石に恐怖を感じたのだろう逃走をはかろうとした。
だがそんなことはさせない。
僕は彼をすぐに追いかけ攻撃できない彼に対し両手をかざす。
せめての償いとして苦しめて殺すことにしたのだ。
手をかざしたところからパきパきと凍っていく、抗うことしかできない山下はただ凍るしか道がなかった。
体が冷たくなり死に近づいているのがわかる、やがて動きが鈍くなっていく。
そして氷の膜にすべ包まれた頃彼はもう動かなくなっていた。
これだけではまだ本当に死んだか分からないので僕は山下を落とした。
すぐに地面と接触し、バキンといういい音を立てた。
下を見ると氷はそれぞれ違う大きさに割れていた。
彼が死んだことを確認すると僕はみつの方を見た。
彼女が心配で仕方ない。
「雪ちゃん、私を殺してよ。」
みつが悲しそうな表情と掠れた声でそう伊藤に訴えかけた。
伊藤はそれを見て嘲笑った。
「本当に拓馬と同じで馬鹿よね。いいよ、殺してあげる。これで許してあげる。」
躊躇ないその姿は伊藤ではなかった。
手に持った大きな杖で葉を発生させた。
確実に伊藤でなはい。
僕は彼女に向かって氷を打った。
「みつ!そいつは伊藤じゃない!」
「え?」
氷は見事伊藤の杖にあった、反動により遠くに吹き飛んだ。
そして見事に地面に突き刺さった。
そう考えるとみつはそれに耐えたんだなと少し身震いをした。
「よくわかったね。」
そういったのは伊藤であった。
その時の声質はいつも彼女のものではなかった。
目つきもよく見ると先ほどとは違い鋭くなっていた。
「少し試したんだよ、君達を。悪くは思わないでよね。」
来ていたローブを大きく舞い上げ姿が一瞬見えなくなる。
その間にそれは姿を変えた。
すでに伊藤ではなくなっていた。
「こんにちは、私がみんなの言う魔女様だよ。その子達とは何も関係ないよ」
つまり彼女が山下の言っていた魔女の鹿雨。
見た目は予想以上に若々しく僕らとほとんど見た目は変わらない。
黒紙交じりの美しい白髪をなびかせこちらを眺めていた。
さらに美しくその目つき、顔つきと良いいかにも魔女っぽい、そんな感じであった。
そしておまけにみつに少し似ていた。
「それでなんで伊藤に化けた?伊藤は?伊藤はどこにいる?」
少し同様しつつ鹿雨に聞いた。
それは同様するだろう、目の前にwizardの製作者がいるのだから。
彼女は微笑みながら答えた。
「あの子なら家で寝ているはずよ。それはいいとして私は久々に愛が見たくてね。君達を試したんだ。拝見させていただいたけど初々しくていいね。君達の事好きだよ。」
愛が見たくて?
好きだよ?
意味が分からない。
そのことについてもう一度問う。
「どういうこと?」
「だーかーらー、本当に私の後継者としてふさわしいか見たの。」
「それに愛とか関係あるのか?」
「あるよ~。君たちの動力源は愛でしょ?だからそれを試したの。」
そういわれてみればそうだ。
僕らは病んでいた、病んでいたからwizardを頼り、一時的に心をいや愛を取り戻していたのだ。
そう考えるとこの人は本当にwizardの製作者なのであろう。
「まあほかに聞きたいことあると思うけど今は我慢してくれ、少年よ。私にはもうほとんど時間は残されていない。」
「わかった。」
「みつちゃん、私の後継者にならないかい?良い事たくさんあるよ~」
「いやです。なんで私が得体の知らないものにならないといけないのですか?」
即答だった。
それはそうだ、明確な理由も知らずに魔女になりますなんて言う人なんていない。
「お前は一体何が目的なんだ?」
そう聞いた。
それが一番気になる。
「んー、なんとなーく人を助けるのが私なのよね~。クラミティの出現はもう止めれないしね。せめての助けとしてwizardを作った感じ。」
人を助けるせめての物。
「クラミティの出現はどうやって止めれる?クラミティとはなんだ?なんで存在していく。」
知れば知るほど謎が深まる。
底なし沼のようだ。
でもすべてを知ると何かが起こる、そういう気がする。
だから追求する、知って損するものはこの世には存在しない。
全て何かしらの役に立つのだ。
「クラミティの出現は正直言うと止められないね。めちゃめちゃ繁殖してしまったからね~。」
案の定それは無理であった。
今思えば僕の目的は快楽から世界平和?まあともかくみんなが幸せになれる幸福論ばかり考えるようになっていた。
精神的にも成長したのであろう。
少し話が脱線した。
ともかくほかに何か方法はないのか?
そう思いつつ引き続き鹿雨の話を聞いていく。
「クラミテは私が作ったんだよね。」
可愛げのある美しい笑顔でそういった。
不思議と腹は立たなかった、多分その事実に驚いたのだと思う。
クラミティの製作者故にwizardの製作者である。
せめての救いとしwizardを作成。
言っている意味が分からない、最初からクラミティをつくなければよかったのにそう思ってしまった。
そしたら誰も病まずに済んだのに。
「そう黙らないでよ、少し不安になるからさ。まあ怒らないでくれよ、私にも私なりの理由があるからさ、ね?」
そうやって彼女は頭に手を添え、照れたような仕草をした。
先ほどから鹿雨は一部、一部を切り離し、話の内容が僕らにあまり伝わらないように話している、ちゃんと簡潔にすべてを一気に話してほしい。
そんなことを言えるはずもなくどんどん話が進んでいく。
「理由がある?」
「そうそう、理由があるの。聞く?」
「「聞く」」
僕ら二人の声が重なった。
同じ意思だということが伝わってある意味よかったと思う。
それに対し鹿雨は笑った。
「本当に仲がいいのね、ふふふ。うらやましいね。」
にしても本当にそのことについてディスってくる…。
まるでリア充の事を羨む非リアのようだ。
僕らのこの関係がそんなに初々しいか…?
逆に少し照れてしまう。
「また黙った~!やめてよ、自分に自信がなくなってしまう…。」
「はいはい…。で、なんでそんな事したんだ?」
僕はそれらをスルーした。
見た目とは別に少し性格めんどくさい。
ギャップってやつだな…。
「えとね」
少しもぞもぞし始めた。
これで変な理由だったら許さない。
「えとね?」
「私もね君達と同じでね好きな人がいたの。」
見た目とは裏腹に意外な事だった。
にしても好きな人がいた、それはいつの時代の時の事なのだろう。
「意外ですね。」
みつがそのことにツッコんだのも意外だった。
「え?そうかな?」
「はい。」
「もういいでしょ!?話続けるよ!」
これが本当に魔女なのか?
また偽物で…。
もういいや。
「ある日ね、好きな人が殺されたの。人間に、だからクラミティを作って私と同じ気持ちにしてやろうと世に放ったの、そしたら気づいたらこうなっていた。流石に反省した私がwizardを作って何とかぎりぎり保っている感じ。だから君たちがうらやましい。」
「「…」」
黙ることしかできなかった。
こう聞くと馬鹿しく聞こえるが今まで僕らが体験してきたことを踏まえるとそうは言えない。
大切な人を失う、殺される。これは本当にキツイ。
彼女がしたことはしょうがないけどいけないことなのだ。
許す、許さないは僕らが判断することはできない。
それにそのことに口出す事は僕らにすることはできない。
「えー、また黙った…。まあともかく!私を引き継いでほしいの!じゃないとwizardがなくなってしまう。それだとみんな困ってしまうでしょ?」
「わかりました。なります」
「本当に嬉しい!ありがとう!」
みつの口からそう聞こえた。
鹿雨はみつの手を握りそう喜んだ。
「…!まってよ、みつ!魔女!」
「え、なに?」
「魔女になったらどうなるんだ?」
「寿命まで死ねなくなる、成長が止まる、wizardが作れる、魔法が使える。んーほかに何かあったかな…。うーん…。あっ!wizard以外からは見えなくなる。」
淡々とすべてを説明していった。
その中にあるものはすべて僕らにとって都合が悪かった。
wizard以外から見えなくなる、これはもう存在していることすら危うくなるということだ。
それはダメだ。
寿命まで死ねない?
もしそれが何千年、何万年だったらダメじゃないか、一緒に生きてあげれない。
ダメだ、ダメだ、そんなことは認めない。
「ダメだ、みつ。ダメだみつ」
僕は必至で反対した。
どちらにせよそんな悲しいことはしたくない。
「みつちゃーん、君ががんばったらもしかするとクラミティがいなくなるかもよ。そしたらみんな幸せだよ。」
「ダメだ、ダメ。僕らだけが幸せでいい。クラミティがどうだっていい。そうだろ?」
それでもみつは黙る。
必死に吟味しているのだろう。
みつは優しすぎる、それがだめなのだ。
そして吟味、吟味してみつは決めた。
開きたくない口を開き、その事を二人に伝える。
「拓馬ごめん、私魔女になる」




