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ゆめとあさ

僕は夢を見た。

きっとこの夢は起きたら忘れてしまうのだろう。

それはそのようなものだからな。

よく見るとここは水族館だった。

大きな水槽の中ですいすいと泳いでいる。

その小さな世界の中で魚はすいすい泳いでいた。

「おとーさん!見てみてイルカさんが泳いでいるよー!」

と、5歳くらいの男の子が喜んでそれらを指さしていた。

隣には父親らしき人物がいた。

一緒に魚達を眺めていた。

「な、すごいよな。魚って。拓馬もここで泳ぐか―!?」

その父親は子供を担ぎ、高くあげた。

子供は笑いながら父親とじゃれていた。

…?

ん?拓馬?

 これはどうやら僕の小さいころの夢らしい。

本当に胸糞が悪い。

目を覚まそうとしても覚めることができない。

だから引き続きこの夢を見ないといけない。

「あら~、拓馬高いわね~」

「かーさんも見てみて!写真ばっかとってないで!すごいよ!」

「あーごめんね~」

 そうこの通り僕は昔家族と仲が良かった。

でも今は違う。

二人が変わったのはその二年後だった。

二人で旅行に行ってくるといい、かえって来たら恐ろしいほど変わっていた。

最初は怖かった。

今まで仲良かった両親が三日もしないうちに性格が変わり、僕に手上げたからだ。

毎日目が腫れるまで泣いていた。

先生や周りの人たちは僕を助けてくれなかったし、僕も怖くて周りに助けを求める事が出来なかった。

かれこれ虐待は今年で9年目だ。

今のところ人生の半分は虐待ということになる。

そのおかげで僕の本性は常人とは酷くずれ、他人に言われるまで気付かなかった。

 はあ、昔は優しかったのに…。

今思えばおそらくクラミティのせいだろう。

もう、誰が憎いのかわからない…。

今はただ平和に生きたい。

澄んだ心で毎日を楽しく笑えるようなそんな生活。

これが僕の夢なのだ。

 そこで目が覚めた。

汗ダラダラだった。

勢いよく起き上がった。

どうやらここは自分の部屋だった。

「ああああ!そうだ!」

僕は思い出した。

思い出してしまった…。

 もうダッシュでみつの部屋に向かった。

勢いよくドアを開けるとそこには驚いた顔でこちらを見るみつがいた。

何事かという顔で静止していた。

「あ、おはよう。拓馬」

「みつ…」

「なーに?」

「伊藤は?あの後どうなった?」

「別に、なーんともないよ」

彼は表情を変えずいつもの口調で喋った。

そんなはずがない。

「お願いだ!自分のしたことを知りたいんだ!」

彼は立ち上がり僕の肩をポンとたたいた。

「拓馬、いいから」

「何がいいんだよ!?」

声を荒げみつにどなった。

これは逆ギレではない。

本当に不安なのだ…。

「だから良いって。伊藤も無事だし彼奴も生きてるよ。たぶんねwあそこにおいてきちゃったw」

「…」

「もういい?本当に気にしないで良いからね?」

ここまで聞いても言わないのならもう彼に話すつもりなどないのだろうとすぐに察することができた。

これ以上聞いても意味がないのであきらめることにした。

次は絶対にこんなことにならないようにしよう、僕は誓かった。

「あー、それと拓馬に一ついい話があるよ」

僕が部屋から出る直前で思い出したように言った。

「え?何?」

「えとね~」

「うんうん」

いつものあの笑顔よりさらに降格を上げピエロみたいな顔になっていた。

「一回の和室で伊藤が寝てるよ」

「え?ああ。うん。」

「なになに?何その反応」

「いや、別に。」

「あれ!?好きなんじゃないの?」

「…。」

みつの顔がピエロを超えた。

その顔で質問を続けた。

「まあ、いいんだよ?俺ら思春期だしね」

そうじゃないんだ。

「そうじゃなくて…。今更合わす顔がない」

みつの顔が少し悲しい顔になった。

テンションが下がったのか再び自分の席に座った。

「大丈夫って、雪も心配してたよ。私のせいでこんなになってしまったんだーって」

「こんなになってしまったんだって?どういう意味?クラミティになったのか?」

「あ、口が滑った…」

みつが口に手を当てた。

「まあ、そんなものかな。気にしないで」

「う…うん。」

「さあ、雪に会いに行ってきな!」

ていうか、みつの奴、伊藤の事を下の名前で呼んでやがる。

そのせいでますますあの事が気になってしまう。

伊藤とみつの間で何があったんだ?

 むずむずしながら階段を下った。

和室はリビングルームの隣にある。

ついたのは良いがこういうのって本当に入りずらい。

とりあえずノックを三回した。

ちなみに二回はトイレです。

が、反応はなし。

とりあえず入ることにした。

男の好奇心というものだ。

中に入ると伊藤があの私服で寝ていた。

寝相が悪く布団から飛び出ていた。

完全に畳の上で寝ている、そんな状態だった。

「ええw」

思わず笑ってしまった。

もっと清楚な感じに寝てるのかと思ったら普通に寝相が悪い。

「伊藤~」

少しゆすってみる。

起きない。

もっと強くゆすってみる。

起きない。

寝相悪い+なかなか起きない

=最強

そんなこんなで僕は部屋を後にした。

まあそそのうち起きるだろうということで僕はリビングに行った。

今は9時。

少し遅めの朝ごはんを作ることにした。

今日のメニューはインスタントみそ汁、事前にたいていたごはん、そしてスクランブルエッグだ。

 5分位でできた。

テレビを見ながらみそ汁をすする。

wizardがあるおかげで今は精神がちゃんと安定している。

しかし今も少しそわそわしているのだ。

いくらwizardの姿で戦ったから見えないといい…?

あれ?

フラッシュバッグした。

「大丈夫って、雪も心配してたよ。私のせいでこんなになってしまったんだーって」

「こんなになってしまったんだって?どういう意味?クラミティになったのか?」

今さっきまで普通に話してて気づかなかったけど…。

あれ?

伊藤って病んでるの…?

 階段を駆け上がった。

もう、本当に何が何だかわからない…!

再び勢いよく扉を開けた。

またみつが不思議そうな顔で僕の方を見ていた。

「え?まだききたいことでも…?」

「伊藤ってwizardの存在知ってるの?」

みつが首をかしげた。

「なんでわかるの…?」

僕はそれに気づくまでの経緯を話した。

「あーなるほどね~。あら、またボロ出しちゃった…」

みつが口を押える。

何かを間違えるたびに口を押える。

もしかしてみつのくせなのかな?

「はあ…。ちゃんと説明してくれよ…?」

「ええとね、わかると思うけど雪病んでしまったんだよね…。ほら、妊娠とか拓馬の暴走とか…」

「…僕のせいか」

「あ、暴走しないでよ?」

「わかってるよ…」

「まあ、本当に反省しているというのならこの子を産婦人科へ連れって言ってあげてくれ。」

「え…?」

「えって?妊娠してもいいの?」

「いや、それは…。でも少し行くのに抵抗がある」

みつはため息をつき僕を少し睨んできた。

「じゃあ、いいよ。俺が連れて行く」

みつは僕を押しのけた。

流石に悔しいので言い返す。

「待って」

みつの服を引っ張った。

彼は振り帰らずに少しイライラした声立ちで返事をした。

「何?早くしないと病院開いちゃう」

「僕が連れて行く!」

「流石~」

やっと彼は振り向いた。

まさかの彼は笑っていた。

「よし、それならあとは任せた。産婦人科は未成年でも親の同行なしで行けるから」

それからみつはそれについていろいろと教えてくれた。

みつは優しい。

昨日会ったばかりのこのためにいろいろと調べてくれてたのだ。

ほんとうにいい友達ができたと思う

そして再び一階の和室へと向かった。

「伊藤起きて~」

和室の扉を開けた。

音を立てないようにゆっくり開け中をのぞいた。

「!?」

伊藤の位置がまた変わっていた。

本当に驚いた。

今さっきはそこにいたのに、今は扉の目の前にいた。

「い、伊藤。起きて。病院行くよ」

しゃがんで伊藤を揺さぶった。

強く揺さぶった。

起きた。

「ううう…」

「おはよう、伊藤」

伊藤は目を開け、僕の方を見ていた。

まだ状況を飲み込めてないようだった。

「ほら、早く起きて。病院行くよ」

目をぱちぱちしながら上半身だけを起こした。

しかし眠たいらしくそのまま静止していた。

「伊藤?起きてる?」

「…」

「…」

しょうがないので無理やり立ち上がらせた。

僕はひょろひょろなのでふらふらしながらも洗面台へと運んだ。

蛇口をひねり水を出してあげた。

伊藤は意外に朝弱いのだなと思った。

僕ならすぐ立ち上がり行動するのに…。

伊藤は顔を洗うと目が覚めた。

「へ!?ここどこ!?」

「お、おお。やっと起きたね」

「ここは僕の家だよ。やっと起きたね…。」

「拓馬君のおうち?」

「そそ、昨日ありがとね。本当に助かった。」

「いやいや、私こそありがとう。でもあれは少し手荒だよ」

相変わらず伊藤との会話は楽しい。

多分このまま5時間位話してても飽きはしないと思う。

ちなみに今のは比喩みたいなものだから実際にするわけではない。

「それとさ伊藤」

「なになに?」

「親とかは大丈夫?」

「え、なんで?」

「だって勝手にここに泊めてしまったし…。」

「その事なら、安心して。そもそもホテルに行く辞典で親に内緒で家を出てたから」

「それならいいけど…。本当にごめんね…。」

「そんなに謝らないでよ、私が自分からやったんだから」

「違う。僕がいなかったらなかった話じゃん。ごめんよ、ごめん。ごめん」

僕は何度も「ごめん」を連呼した。

本当に申し訳ないのだ。

逆に言いすぎて伊藤は少し戸惑っていた。

「ともかく!今回は完全に僕が悪い。責任とって病院つれて行くから」

「うん…。」

思い出したかのように伊藤の声のトーンが下がった。

そして彼女はそのままうつむいてしまった。

彼女は自分のせいと言ってるが実際は僕だけのせいなのだ。

先ほども言ったが僕さえいなければこんなことは起きなかった。

だめだ、変わらないと…。

明るくならないと…。


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