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サキュバスの魔族シルヴァーン

《魔王軍四天王:シルヴァーン》


 師匠と別れた後に魔族の方へ向かう。

 場所が近いとお互いに戦闘の邪魔になる。


「私、モテモテだね。一人相手に二人とか恥ずかしくないの?」

「見てたぞ。魔族のお前がどうして人間の味方をした! 返答次第ではこの場で斬り捨て、お前の首を主のもとに送ってやる!」


「兄さん、いちいち理由なんて聞く必要ないよ。彼女は人間に味方し、魔族を裏切った。僕たちの手で粛清すればいい。これは粛清なんだから二対一だろうと、関係ないのだよ! サキュバスの魔族シルヴァーン」


 言うなり、戦闘モードへと変身した。

 マーニレのところの四天王。双子の男だ。


「うーん。二人とも私の好みじゃない」

「「はっ?」」


 好きな人以外には極力変身した姿を見せたくないんだけどな……。

 でも、この姿のままじゃキツいし、何より負けるわけにはいかない。


「シロウ、ごめんね。ギリギリのせめぎ合いとか嫌いなのよ」


 幼女の姿では最大までステータスを引き出せない。


『枷をはめたままトレーニングする事で、本来の姿に戻った時により強くなれる』と、シロウが冗談で言っていた。

 シロウの冗談はよく当たる。

 だから鍛練の時は敢えて変身せずに取り組むようにしてきた。


 私は服を脱いで、戦闘モードに変身する。

 鍛練を始めてから変身するのは初めてだ。

 体がとても軽い。

 魔力を練って黒い槍を作り出す。


「二人同時でもいいわよ♪ いつでもいらっしゃい♪」


 ゾクゾクしてきた。

 いつも以上に高揚感が抑えられない。


「色気で相手を虜にするしか能がないサキュバス風情が! 調子に乗りやがって!」

「一思いに殺してやる!」


 二人が剣を抜いて一直線に迫ってきた。

 そっか。私がシロウに出会う前は私もこんな感じだったんだね。


 私は目の前の二人を見て懐かしさを覚えた。

 でも、容赦はしないよ♪


 私も真っ直ぐ突っ込み直前で右横に飛ぶ。

 相手から視線を外さずに左回転。右側の兄の角を後ろから追いかけるようにして一閃。


 安全のために距離を多めに取ったけど、シロウが私の角を飛ばした時みたい♪

 角が私の手元に飛んで来なかったから失敗かな?


 私は明後日の方に飛んだ角を追いかけて空中でキャッチした。


「まずは一人目♪」

「兄さん!」

「余所見してたら終わっちゃうよ♪」


 兄が角を失い、ステータスも浮遊する力もなくなり、落下する様子を見ていた弟に忠告をする。

 翼を必死にパタパタさせても、魔力が使えない体では飛ぶ事はできない。


「助けに行くなら、後ろからグサリだよ♪」

「くそっ!」

「戦場で逆上するのは失格♪」


 私は振り下ろされた剣を左に避け、剣の背を追いながら掴み、弟に押し返す。お腹を狙ったつもりだったのに、喉を突いちゃった……。


「だずげでぐで」

「マー君が『命乞いは三流魔族のする事だ』って言ってなかった?」

「!」

「君に興味なくなっちゃった♪ バイバーイ♪」


 弟の角もスパッと切って回収する。

 地面に落ちていく弟を手を軽く振って見送った。


 私は戦闘モードを解除して、さっき脱いだ服を着る。


「師匠はどこかな……? おー、ギガンテスが燃えながら倒れてる。勇者ならいざ知らず、人間がギガンテスに勝った……。さすが私たちの師匠だね」


 私は運ばれていく師匠を先回りして地上で待つ。


「その人、知り合いです。気付け薬を飲ませるんで地面に寝かせてください」

「わかった」


 兵士たちが師匠をゆっくり下ろす。

 師匠は気絶してても、火炎の斧だけは手離さない。


 私は師匠の口に体力回復ポーションを流し込む。

 これはリーちゃんが泊まりにきた時にシロウに貰った薬だから、鞄に入れて二週間ぐらい経つ。

 普通は分離して効力がなくなっているはずなのに、このポーションはまだ分離していない。


 きっと起こすだけなら半分も必要ないけど、残しても誰も飲まないし、全部使い切った。


「ほら、師匠。寝てる場合じゃ…………あれ……」

「シル嬢、おはようございます。今日は体が軽いですね」

「寝ぼけてる場合じゃないよ」


――――――――――

《盗賊のボス:ゴンザス》


 シル嬢に体力回復ポーションを飲ませてもらったら、肩の痛みがなくなっただけじゃなく、体が妙に軽い。


「師匠……人間やめたの?」

「マキナ嬢にも『改造人間』呼ばわりされたんで、もしかしたら、さっきの一戦でレベルが上がったのかも……。今ならアニキにも勝てるかな?」


「みんなで師匠の葬儀をあげなくちゃ」

「シル嬢、冗談ですよ。アニキには内緒で……。それよりも戦況は?」


「師匠がギガンテスを一体、私が魔族二人を撃破。最低でも魔族はあと二人いるはずだけど、居場所は全然わかんない」

「なら、もう一体のギガンテスを倒せば多少は街側が盛り返して落ち着きますかね?」


 問題は街の外のモンスターだ。アニキ一人でどこまで……。


「ゴンザス、レベルアップおめでとう。誰が誰に勝つって? ちなみにそのもう一体のギガンテスは、お前が暢気に戯れてる間に倒したぞ?」


 別に戯れていた覚えはないんですが……。

 アニキがここにいるって事は、外はもう片付いたのか……。いったいアニキはどれほど強いのか、未だに底が見えない。


「もう、アニキは人が悪いですよ」


 聞いてるなら聞いてるって……。シル嬢はアニキの登場に驚いていない。アニキがそばにいるの……知ってたよね?


「冗談はさておき、急いで妻子を探すぞ!」

「はい! 避難所はこの先に一つ見えました」

「よし。まずはそこへ向かおう」


 俺を先頭に三人で歩く。

 アニキの背負子には見覚えのある雪だるまが置かれていた。

 ただし、チェルツーの時とは違い、頭まで雪だるまになっている。


「シロウが運んでる雪だるまの中身って……もしかしてマー君?」


 マー君? マー君のところの魔族? マキナ嬢が言ってたマーの野郎?


「顔も隠してたのに、よくわかったな。両方の角を没収しておいた。暴れてうるさいから今はシャドースネークの毒で寝かせてある」

「その子も(れっき)とした魔王だよ?」


 えっ? あの雪だるまの中に魔王……?

 国を滅ぼすほどの力を持つと言われてるのに……雪だるまに入れるだけでいいの?


「知ってるぞ。だからきちんと殺さずに連れて来ただろ? シルが倒した魔族二人はどこだ? ソイツらも雪だるまに入れなくちゃ……」


 アニキ、魔族相手じゃなければ、立派な犯罪ですよ?


「興味がなくなって捨ててきちゃった。ごめんなさい。角は戦利品として回収してきたからシロウにあげるね」


 二人の強さは別格だ。

 魔王だの、魔族だの。ゴブリンでも退治した程度の気楽さで会話をしている。


「『捨ててきちゃった』って、逃がしたせいで、リーが復讐されたらどうするんだよ」


 アニキ……それより俺たちの身の安全は大丈夫なんですか?

 魔王が起きて暴れたら、真っ先に狙われますよ、俺が……。


「マキナちゃんがここにシロウが向かってるのを知ってれば、リーちゃんの耳にも入るはず。マキナちゃん、リーちゃんに何でもペラペラ喋るからね。心配しなくても大丈夫だよ。魔族同士の抗争ってしょっちゅう勃発してるし……。今頃はマー君の領地とどんな風に交渉を進めるか構想を練ってるかも」

「今回は『魔族同士の抗争』じゃないんだけどな……」


 アニキとシル嬢の活躍で、街を攻撃していた魔王軍の幹部が壊滅。街に雪崩れ込むはずだったモンスターが消えた事で、なんとか残党を撤退させる事に成功した。


 のだが……。


「アニキ、すんません! ファーナムはどこにもいませんでした」


 避難所に着くたびに住民に声をかけて尋ねてみるも、四ヶ所を巡って収穫はゼロ。

 俺は離れたところで待っている二人のもとに戻り報告をした。


「ファーナムって……ゴンザスの奥さん?」

「はい。そうです」

「また探せばいいよ。今回はちょっと突発的な感じでバタバタしたけど、もともと一回で見つかるとは思っていなかった」

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