読書/J・カザノヴァ『カザノヴァ回想録 第1巻――少女たちの誘惑』 ノート20180623
J・カザノヴァ『カザノヴァ回想録 第1巻――少女たちの誘惑』窪田般彌翻訳 河出文庫1994
日本の色好みで有名なのは、在原業平と光源氏で、二人と対比するとき、よく引き合いにだされるのが、イタリアのカザノヴァとスペインのドン・ファンだ。色事師たちを扱ったいくつかの冊子を読んでいると、業平と源氏の時代は家父長制であり、沢山の不幸な女性を一人でも救済することは善として描かれ、これこそ王道楽土であると紹介されている。対して、カザノヴァやドン・ファンの時代は、近世ヨーロッパ社会で、基本は一夫一婦制だから、悪名として輝くことになる。
スペイン・ハプスブルク家の息子ドン・ファン・デ・アウストリアではないところの――宰相の息子ドン・ファンは、当初、マッチョな強姦魔サイコパスとして描かれていた。それが時代とともに、実在の人・カザノヴァのように変化してきた。
そのカザノヴァは、旅の途中で女性と巡り合い、楽しくひとときの男女の逢瀬を楽しみ、やがて分かれて、本人も相手も忘れてしまう。ロンドを舞うかのような軽やかさがある。
――そういうニュアンスの解説書を読んだことがある。
『カザノヴァ回想録』は全十二巻のシリーズものだ。
*
第1巻 少女たちの誘惑
第2巻 恋と博打の修行
第3巻 パリの社交界
第4巻 修道女の大脱獄
第5巻 魔術師の野望
第6巻 ヨーロッパ放浪
第7巻 占星術師とペテン師
第8巻 仮装舞踏会
第9巻 ロンドンの娼婦
第10巻 生と愛の哲学
第11巻 永遠の麗しき女性
第12巻 最後の色事師
*
第1巻「少女たちの誘惑」の内容は次のようなものだ。
カザノヴァは、幼いときに両親を失い、親戚に引き取られた。厳格な叔母がカザノヴァを育てる。そこには従姉ヴェッチーナがおり、想いを寄せる。ヴェッチーナは、従弟のカザノヴァに思わせぶりで、彼を悩ませる。ところが、その彼女が、悪霊に憑依された。ヴェッチーナは、目立ちたがり屋であり、教会がよこしたエクソシストを理詰めでかまって楽しんでいた。カザノヴァは、ヴェッチーナへの恋心が冷めてしまった。
カザノヴァは、教会で学問を習いだす。
他方で、類まれな容姿であるため、美少女や貴婦人がつぎからつぎへと彼の前に現れては、誘ってくる。カザノヴァは、ハーレムをつくらず、一人一人、丁寧に交際しては別れ、次の恋をしていく。その忙しい様は、花から花へ飛び移る蜜蜂のような感じだ。
十年位前に本書を群馬県の古本屋で買った。エロ本の古典にはボールペンで線が引かれていた。私は読んでいて煩いと感じるとともに失笑も禁じえなかった。何の受験勉強か? そんなに重要なことか? ボーダーラインを引いた犯人は、たぶん爺様なのだろう。老人の性を考える生涯学習……。
ノート20180623




