読書/宮城谷昌光 『沙中の回廊』 ノート20180323
宮城谷昌光 『沙中の回廊』上下巻 朝日新聞社2001年
士会は、晋公家から与えられた本願の地・随をもって、随会とも呼ばれている。中国の軍事史概説書を読んでいたとき、ときたま目にする名なので、興味を持っていたところ、宮城谷先生が春秋時代を扱ったシリーズを続々と発表しだした。世界最初の軍事科学を用いた指揮官だ。
紀元前八‐九世紀ごろ、周の縁戚である晋公家は、文公を戴いて、南方にある成王麾下の楚と対峙する。兵士そのものの資質が強力な楚に対して、最初は同じく物量で対抗していた。たまたま文公は勝利して、楚は弱体化したのだが、周・楚の君主は世代交代して、楚が勢いを盛り返す。そして、〈大器晩成〉の人・楚の荘王が登場するや、晋楚の立ち位置が逆転し、楚が天下を席巻する。大戦において晋は黄河の北岸に追いやられたのだが、士会の部隊だけは、作戦の上手さで対抗し、兵を温存。敗戦処理のため宰相に抜擢される。士会が宰相となっている間、楚の荘公は追撃しなかった。
旧日本軍による戦争を絶対悪視するこの新聞社の社是と反して、軍神ヒーローを扱い、しかもスリランカやジプチに百年契約の租借地・港を建設した、今さらの植民地主義をやっている中国は可とするところに不思議さを感じるのではあるが、面白いことには違いない。
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