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もう一度妻をおとすレシピ 第9冊  作者: 奄美剣星
Ⅲ 読書感想文
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読書/鈴木輝一郎『巴御前』 ノート20180617

   鈴木輝一郎『巴御前』感想文


 平家が落ち目になり、関東で実権を握る北条氏に担がれた、源頼朝が挙兵したばかりのころ。

期を同じくして、同族の源義仲が挙兵した。義仲の父親は、平家との抗争で殺された。幼少期、義仲は、忠臣今井兼光に助けられ、その人の所領である美濃国木曽郡に落ち延びた。木曽は谷筋に開けたところで、土着の武士たちは騎馬民族化していた。

そして兼光の息子である四郎兼平とともに元服する。成人した義仲は、快男児だ。女にモテる。

 そして、いくつかの出会いをする。

 まずは愛馬・御岳だ。隆慶一郎の小説『一夢庵風流記』及びそれを原作とした原辰雄の漫画『花の慶次』に登場する、チート系名馬だ。雌馬で、義仲とはテレパシー会話ができる。

 次に、謎の女・巴御前が登場する。合戦を想定した馬上試合をやると、義仲以外の荒武者たちを軽く打ち負かしてしまう女傑だった。形の上では、義仲の愛妾になるのだが、実際のところはプラトニックな関係で、異性の親友という感じだ。巴御前が、義仲の前に現れたのには動機があった。源頼朝の異母弟・義経と取り巻きの忍者たちに輪姦された上に、身体中に、家畜につかう焼き印を押されたのだ。――忍者たち頭目は、名張の服部という。服部は、伊賀の出で、鞍馬山に預けられていた幼少期の義経に、馬術・忍術を授けている。その服部いわく、巴をして、「俺たちの便所」とした。―― 巴御前は復讐のため義仲に近づいた。巴御前は、義仲の愛馬・御岳同様に、義仲の男気に惚れた。そして、テレパシー能力がある。越後守・城資永(助長)に処女を捧げたらしい。

 そして、義仲の叔父・源行平が登場する。義仲は好漢ではあるが山育ちで、宮中儀礼に疎い。源氏は、平氏同様に、皇別氏族である。鎌倉の源頼朝がそうであるように、行平は貴族的で、宮廷事情に明るかった。この人を客分・軍師として迎える。

 鎌倉を拠点とした源頼朝は、実質、北条氏の傀儡だ。頼朝は、貴族的で戦下手だ。そこで武辺に通じた異母弟の範頼・義経ら弟を大将として、六万の兵をもって、上洛を試みた。

 このため、木曽の騎馬軍団を率いて信州を手中にした義仲の勢力と対峙することになった。義仲は、行平の策を執って、嫡子を鎌倉へ人質に送り、まずは事なきを得た。そして義経たちが、引き揚げた間隙をつき、五千騎を率いて先に上洛を果たす。行平を介し、院の法皇と会談し、「朝日将軍」の称号と頼朝追悼の大義名分を得た。だが、ほどなく、後を追ってきた義経の大軍に、武運つたなく敗走する。

 上洛の途中、巴は宿敵の一人・服部を倒す。だが、六万の大軍で後を追ってきた義経は、悪のチートキャラで、義仲すらも歯が立たない。敗走の最中、義仲は愛馬・御岳を義経に打ち取られる。御岳がいなくて義仲が義経に勝てる見込みは万に一つもない。武人としては死んだも同然だ。もはやこれまでというところで、巴御前は、愛する義仲を仕留める。木曽義仲の末裔は、土着豪族として江戸時代まで続いた。だが巴御前のその後は定かでない。なお、義経は、平氏一掃の大功を挙げつつも、同族殺しを習性とする源氏の権化である兄・頼朝によって、次兄・範頼ともども粛清されることになる。

 合意で荒れ強姦で荒れ、巴御前と情交した男たちは運気を吸い取られ死ぬ定めだ。「さげまん」だ。だが、プラトニックにつきあえば、心強い無二の盟友となる。――運気を吸うことは雪女がする吸精であり、欧州のヴァンパイアの吸血鬼に通じる。――この物語で語られる巴御前は、麗しの吸血鬼カミーラなのだろうか――と想像する私である。

          ノート20180617

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