読書/堀辰雄 『美しい村』 ノート20180706
堀辰雄『美しい村』1934年
本作品は、私小説のような形をとっている。――wikiによると、反小説なのだそうだ。
小説家である〈私〉は、シーズンオフの、夏にならない6月からK村(軽井沢)に訪れ、ホテルに滞在していた。幼少時代から、夏になると毎年のように、軽井沢に訪れていたのだが、数年前に発病し、軽井沢に滞在していた。
数年前に病気を患い、軽井沢にいたのだが、そのとき、高級別荘に住む母子に出会い、以来親交を結んでいた。数か月前、この家の令嬢に、こっぴどくフラれた。――聖家族のヒロイン・絹子のモデルになった才媛・片山総子だったようだ。
小説家は、ショックから立ち直り切れず、出版社に納品する原稿を宿に持ち込んではいたのだが、筆は遅々として進まない。そんなときは、勝手を知った軽井沢にあるいくつかのルートを通って、散歩した。そういう散歩の途中で、油絵を描いていた美少女と出会い、愛を紡いでゆく。
少女は、小説家と同じホテルの客だ。東京から父親が送り迎えしてくれているが、一人で滞在している。背の高い、痩せぎすで、いつも黄色い麦藁帽子をかぶっている。向日葵のようにまぶしく、最初は決まずい空気だったが、二人は少しずつ距離を縮めていく。
少し親しくなると小説家は、手製の地図を描いて彼女に渡した。少女はその手地図をもとにK村を散策しだす。その話を小説家にすると、今度は二人仲良く散策しだした。道沿いには、K村の名物的な人物、名士たちの住む、家や諸施設が立ち並んでいた。その中には、作家をふった女性の別荘もあった。
夕食の後、少女が、名所の一つである村はずれの高級別荘に連れて行って欲しいという話になって一緒に出掛けるのだが、途中で暗くなったので引き返す。帰りを急ぐ必要から、数か月前に自分をふった令嬢の別荘前を通る羽目になった。令嬢の家人に会わないか、どぎまぎして通り過ぎると、急に懐中電灯で照らされた。令嬢の関係者かと思い、ドキッとしたら、学生時代の同期生らしい親しい友人とその家族だった。
小説家は、友人家族を、自分が滞在しているホテルの離れ部屋に誘った。一行は、小説家の案内で、近道していくのだが、小さな女の子が木の根につまづいて転んだところで終わる。
大観的にみると堀辰雄の諸作品は、『聖家族』、本作品『美しい村』、『風立ちぬ』へと続いている。
『美しい村』と『風立ちぬ』に登場する匿名のヒロインは、婚約者となる矢野綾子なのだという。
この人が書いた別な小説『菜穂子』のヒロインは、宮崎アニメ『風立ちぬ』のヒロインと重なるのだが、舞台が重複するのみで、名前だけを戴いた別の話だ。ただ、ヒロインの菜穂子、夫の黒川氏、設計家という登場人物のうち、設計家がやはり堀辰雄がモデルになっているのが興味深いところだ。――私の中では、『菜穂子』の菜穂子と『聖家族』の絹子が、本作で述べられている、小説家をふったツンデレな才媛令嬢・片山総子と重なってくる。だとすると、宮崎アニメにでてくるヒロインは、原作が匿名だったために、同一作者という理由から、作家をふった〈元カノ?〉の名前をつけられたことになる。しかも『菜穂子』で作家の恋敵である黒川氏の名前が、宮崎アニメでは主人公の上司につけられているのが皮肉だ。
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