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学園島狂詩曲  作者: 水鏡
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荒野エリナその1

 荒野エリナその1


 本土と学園島を繋ぐ基本的な交通手段は船である。当初は便数も限られていたが、島が発展するにつれて、船は大型化し、便数は増え、最近ではさして不便を感じることも少なくなってきていた。

 また一隻、船が島にやってきていた。

「まるで要塞ね」

 船室の窓越しから、学園島を眺めて、荒野エリナは呟いた。

「やっぱり、そう思うか」

 マネージャーの椎名も同意してくる。

「大事な子供たちを自然災害から守るために巨額の金をかけて整備しているそうだ」

 椎名の口調はどこまでも皮肉めいている。平穏な日常に慣れた人間であれば、その威容にただ驚き、戸惑うばかりだろうが、過酷で緊張感に満ちた世界で生きる人間には、愚かしい過保護さに映る。

 程なく、船は船着き場に到着した。乗客がどんどんと降りていき、まばらになったのを見計らって、二人も下船する。

 通路を歩いていくと、やたらと物々しい構えの改札があった。

「入島証をお願いします」

 係員から求められて、エリナは入島証を機械に通す。当然、何の問題もなく通過できた。

「ようこそ、学園島へ」

 自分のことを知っているのか、特別な滞在証だからか、係員は丁重に挨拶をしてきた。

「まるで違う国にやってきたみたい」

「これも学生たちの安全を守るためだそうだ」

「徹底した温室環境ね」

 椎名の説明に対する、エリナの口調もまた自然と棘を含んだものになる。そのような甘えた環境で育まれる自由や自主性とは何なのか。

「仕事をする分には、ありがたい仕組みではある」

 椎名の言う通りだった。交通の便が多少悪くても、近年、有名アーティストの公演が学園島で増えているのは、会場設備の良さもさることながら、この入島規制があるからだった。法で取り締まれない、警察を頼るほどでもないが、放置もできない悪質で迷惑な存在を排除・抑止するのに、この島の風紀と規律を維持するための制度はうってつけなのである。学園島はあくまで私有地なので、主催者側は、望ましからざる人物の島の出入りすらも、島の管理者側に要望できるのだ。

「どっちの意味でもね」

 エリナは小さく頷く。

 高度な自治で運営されている学園島では、警察機構すら自治組織によって運営されているという。民間にしては、かなり質が高いとのことだったが、所詮は素人だ。その存在によって、物理的にも制度的にも、本物の警察が即座に介入できないのはむしろ好都合である。

 彼女たち、テロリストにとっては。

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