高村佳幸その1
高村佳幸その1
「結局、あれは何だったんだ?」
一夜、明けても消えない戸惑いを佳幸は携帯に向かって吐き出す。
昨夜のファミレスでの一件である。幸い、佳幸は怪我もせず、混乱のままにその場を後にして、狩真と別れたのだが、朝になって、あれはテロでもなくただの事故だったとニュースで知った。それは良かったのだが、事故直前の狩真の叫びが気になり、電話した次第だった。
「俺に言われてもなあ」
「だって、何が起こるか分かっていたみたいじゃないか。お前の位置から車が来るのなんて、見えなかっただろ?」
狩真の事前の警告に従って、卓の下に隠れていなければ、佳幸たちとて無傷ではすまなかっただろう。ただ、車はやってきた勢いからすれば不自然な位置で止まっていて、それもあってか、惨事のわりに軽症者を出すだけで済んでいた。発光現象が起きたり、車は無人だったりと不可解なことばかりである。ただ報道によれば、車の暴走は誤作動によるものらしいが。
「俺の脳波がとらえたんだよ」
「はっ? 車の接近をか?」
「というより、悪意って言うか敵意だな。分かったんだよ、俺、そっち方面の才能があるから」
「え、そっち方面?」
「ぶっちゃけて言えば、新しいタイプの人類って奴なのかもな」
今度は何のラノベに影響されたのか。佳幸は出かかった言葉を何とか堪える。
「じゃあ、店内がいきなり眩しくなったのも、お前の脳波とやらがやらかしたのか」
佳幸は皮肉っぽく聞いてしまう。
「あれはあいつがやったことだよ」
「あいつ?」
「お前も気にしていた三人組の金髪だよ。いきなり、あいつが光ったんだ」
「どういうこと?」
「だから、あいつ自身が光ったんだよ。ピカッてな。何をやったかは知らんけど、この目でばっちり見た」
あの時、佳幸が卓の下に身を伏せてすぐに閃光があり、視界が回復した時には店は半壊状態で、すぐ傍には無人の乗用車があった。直後の店内の混乱もあって、あの三人組のことなど佳幸の意識からすっかり抜け落ちていた。
「何者だったんだ?」
「さあな。ああ、悪い、俺、これから用事があるんだわ」
「そうなのか。ところで、明日なんだけどさ、会えないか?」
「何か用があるのか? 無理っぽい感じなんだよな」
「どうしてだ?」
「急な予定が入りそうなんだよ。なんか、学校関係のことでさ」
「え、停学中なんだろ?」
「そのはずなんだけどな。その説明もあるから、朝一で学校に来いって言われてて、今、着いたところでさ、だから、またな」
「お、おい」
通話を切られてしまった。
「何だか、嫌な予感がする……」
これが他者であれば、さして気にもしない。ただ、相手が狩真だと、どうにも落ち着かない心持ちにさせられる。
変な引きを発揮しなければいいのだけれど。
佳幸の懸念を見抜いたかのように、妹から連絡がきた。反射的に身構えそうになるも、別の用件だったので、佳幸は少し安堵した。




