第9章 : 謎のコートを着た女性の事件 4
◆◇◆
ドォン!
ドアが激しく叩かれた。あまりにも強い衝撃で、このままではそう長くはもたず、きっと壊れてしまうだろうと思った。
そうなれば、あの女が入ってくる。
「窓から出られないかな?」
僕が浩太くんに聞くと、彼は大きく頷いた。
僕たちは下へ飛び降りるつもりでいたが、ベランダを見た途端、その考えをすぐに改めた。
「無理だよ! 飛び降りたりしたら、きっと……!」
清美は恐怖で体を震わせていた……僕もどうしていいか分からなかった。
ドンドンドン! ドアの音はさらに激しくなっていった。
「早く、早くドアを開けなさい!!」
衝撃音はどんどん大きくなる……飛び降りることもできない……。
どうしよう……どうしよう。
「…………」
「浩太くん!?」
浩太くんは急いで携帯電話と、古いメガホンを取りに行った。
「何するつもり!?」
「助けを呼ぶんだよ……」
浩太くんは急いで悠真さんに電話をかけて、すぐ戻ってくるよう頼んだ。僕はそのメガホンを鳴らそうとしたが、古いものだったので、なかなかスイッチが入らなかった。
「ねえねえねえ、坊や、早くドアを開けなさいよ!!!」
ドアを叩く音はますます大きくなり……鳴り止まなかった。
ガタッ! 僕が置いておいた戸棚が動き始めた……僕はますます慌てふためいていった。
状況は、もう危機的だった。
「どうやっても点かない!」
「何だって……じゃあ……」
浩太くんは、ありったけの声で叫んだ。
「助けてえええ!!! 誰かが家に押し入ろうとしてる!!」
ドアを叩く音がぴたりと止まった……僕も一緒に叫んだ。
「おかしな人が中に入ってきた!! 子どもが三人いる!! 助けてええええ!!!!」
隣の家の明かりが灯った。お店のオーナーさんの家だった。
「浩太!! 清美ちゃん!!」
オーナーさんが急いで店のほうへ駆けつけてきて、それから廊下を走る足音がドタドタと響くのが聞こえた。
「彼女は逃げました」
「俺が片付ける」
郁郎さんが急いで店の中に駆け込んでいって、そのあと、あちこちで騒がしい物音が聞こえてきた……。
僕たち三人は、ベランダに閉じこもったままでいることを選んだ。
何も知りたくない、何も聞きたくない。
僕たち三人は……きつく抱き合っていた。
思ってもみなかった……病院坂さんや悠真さんの警告が、これほど恐ろしいものだったなんて。
もし僕が、あの廃屋に行こうなんて思わなかったら……いや、もし僕が、疑問に思ったり、この事件を解き明かしたいなんて思わなかったら。
耳をふさいでいたのに、それでもあの女の叫び声が、頭の中にこだましていた。
しばらくして……ドアがノックされた。コンコン。
「俺だ」
その声を聞いて、僕はすぐにドアを開けた。
郁郎さんが、僕たち三人の目の前に立っていた。彼の顔を見た途端、僕たちは一斉に声を上げて泣き出した……。
僕が泣くことなんて、めったにない。
僕は思いっきり涙を流した。生まれてこのかた、こんなに怖い思いをしたことはなかった。
郁郎さんに会えて、僕たちはようやくほっとした。
あの夜……僕は、人生で一番の安堵を感じた。
◆◇◆
今回の物語の結論。
あの女性は警察に逮捕された……僕は犯人の特定のために立ち会ったけれど、幸い、彼女は僕の顔しか知らず、住んでいる場所までは知らなかった。
この女性は、夫と息子を相次いで亡くした未亡人だった。それで、あんな状態になってしまったのだという。
息子と夫を失ってから、彼女は仕事も生活も、何もする気力がなくなってしまった。借金は膨らみ、住んでいた家も差し押さえられた。
それで彼女は廃屋に住みつき、放浪者になった。このあたりの人たちもよく見かける、正気を失った人として知られていたけれど、深く関わりを持つ人はいなかったらしい。
僕を狙っていた理由は、僕の顔が亡くなった息子と夫にとてもよく似ていて、一緒に暮らしたいと思ったからだと彼女は言ったそうだ。
そこまで聞いたところで、僕は取調室から急いで逃げ出して、すぐに宿へ戻った。
だから、そのあとの彼女の話は聞いていない……。
僕は、僕の探偵ごっこなんて、ただの遊びだと思っていた。
でも、こんなことに遭遇してしまった今は……これからも探偵ごっこを続けたいのかどうか、本気で悩んでいる……。
今の僕には、答えられない。
でも、将来のことは、どうなるか分からない。
こんにちは。これは西尾の小学校3年生最後の事件です。彼の人生はまだまだこれからです。
引き続き物語を応援していただけると嬉しいです。更新が遅くなってしまいましたが、これまで応援してくださったファンの皆様に感謝申し上げます。更新が遅れてしまい申し訳ありません。




