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西尾の不死身の探偵への道  作者: Sakusaku
第2章:白浜海岸に現れた謎の女性の事件ファイル。

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第6章 : 謎のコートを着た女性の事件

 ◆◇◆


 穏やかな日々というのは、いつもあるものだ……でも……


「西尾くん! これ、ちょっと見て!!」


 今日という日は……まったくそうではなかった。


 ◆◇◆


「これは……」


 真司くんたちが飲み物を買いに行った帰り道から戻ってきたあと……三人は慌てて僕のところへ駆け寄ってきて、一枚の写真を見せてきた。


 僕たちのチーム全員でその写真を覗き込んだ。理紗ちゃんと衣乃ちゃんも一緒に加わっていた。


「女の人?……でもなんでコートなんか着てるの?……今、真夏だよね……」


 彩葉ちゃんは僕のコーラを飲み干しながら聞いてきた……でも、そんなことは今はどうでもいい。


「それで……その女の人は、本当に消えちゃったの?」


 僕は九依奈ちゃんのほうを向いて聞いた。


「うん……急にいなくなったの……人は多かったけど……あんなに目立つコートを着てたら、見失うはずないと思うんだけどな……」


 みんな頷いて同意した。九依奈ちゃんが幻を見ただけだと結論づけるわけにもいかない。だって、こうしてはっきりとした証拠が目の前にあるのだから。


「カメラが古くなってるんじゃない?……『多重露光』ってやつかもよ?」


 洋くんが提案した……これも十分あり得そうだ……。


 多重露光――それは、同じ一枚のフィルムに二回光が当たってしまい、カメラから排出される前に、一枚目の画像と二枚目の画像が重なってしまう現象だ。


「そうだね……もしかしたら、カメラの中のローラーが壊れてるのかも」


 シャルちゃんも、この説に同意した。


「分解して確認したほうがいいかもね……」


 幸い、カメラマンである真司くんは、いつも道具を持ち歩いているらしかった。


 僕と清美、そして真司くんの三人で、カメラの部品を分解して異常がないか確認した。


 みんな仕組みはよく分からなかったけど……それでも全員が、各パーツを確認するのを手伝ってくれた……本当に助かった。


 そして、僕たちがカメラの分解に集まっていると、多夕くんもその輪に加わってきた。


「お前ら……海に入らないで、カメラの分解とかしてるのかよ?」


 質問のように聞こえたけど……どちらかというと、皮肉っぽい言い方だった。


「それが……これ、撮れちゃったんだ……」


 彩葉ちゃんが、その写真を多夕くんに見せた……彼は少し驚いたような顔をした。


「これ……心霊写真ってやつ?」


「「幽霊の話はやめて!!」」


 理紗ちゃんと衣乃ちゃんが震え始めたので、僕は彼のほうを向いて答えた。


「そのアイデア、僕たちはあまり信じてないよ……それに、幽霊なんて実在しないし……ただ、カメラが壊れて多重露光が起きたんじゃないかって疑ってるだけだから、それで分解して確認してるんだ……」


 彼は何も答えなかった……でも、頷いて理解を示した。


「……………あんたが信じないとしても……僕は、あれは目に見えないものだと思うけどね……」


 僕が言い返す間もなく……多夕くんはまた海へ遊びに戻っていった。


「変わった奴だな……」


「あんたが人のこと言えるの?」


 僕をからかってきたのは、他でもない……。


「もう全部調べ終わったよ……どこも壊れてるところなんてない……」


 みんなで異常がないか確認して……真司くんも念のためもう一度チェックしてみたけど、結果は同じだった……。


 僕たちはカメラを元通りに組み立て直した……どこも壊れていない……これはかなり奇妙なことだった。


「…………本当に、心霊写真だったりして……」


 僕が多夕くんの言葉を繰り返すと、清美はにっこり笑ってすぐにからかってきた。


「さっきは信じないって言ってたのに……」


「説明や証拠が見つからないなら、もうその線しかないだろ……」


 みんな黙り込んだ……僕たちは探偵ごっこをしているつもりだったけど……色々な面で、結局自分たちはただの小学生なんだと思い知らされる。


「それで……委員長さんは、どうやって証拠を集めるつもりなんですか?」


 衣乃ちゃんが聞いてきた……僕は、浜辺でお姉さんたちをじっと見つめている浩太くんのほうに目をやった。


「そりゃあ、このあたりの人に聞いてみるしかないだろ……」


 ◆◇◆


 まず……みんな携帯を持っていたので、三人ずつのグループに分かれてもらい、それぞれのグループで誰か一人がこの写真を撮っておいて、このあたりの人に聞き込みをしてもらうことにした。


 僕のグループは浩太くんに話を聞きに行った。彼はこのあたりに住んでいるから、よそ者の僕たちよりも何か知っているかもしれない。


「ああ……口裂け女みたいだね……」


「口裂け女?」


 今まで聞いた話では……コートを着て、マスクでずっと口を隠していて、鋏を持ちながら、通りすがりの人にこう聞いてくる都市伝説の女性らしい――


「私、綺麗?」


「綺麗」と答えると殺される……「違う」と答えても殺される……でも「普通」と答えれば、生きて帰れるという話だった。


 ラジオの怪談番組で聞いたことがあった……まさか本当に実在するとは思っていなくて、むしろ精神を病んだ女性にまつわるただの噂話くらいに思っていた。だって、日本には奇妙な話がたくさんあるって、みんな知っているから。


「最近、学校でもこの話をよく聞くんだ……郊外でコートを着た女の人を見たって……でも僕自身は、直接見たことはないけどね……」


 僕は頷いた……それから清美が聞き返した。


「それで……浩太くんは、何か噂を聞いたことある?」


「詳しいことまではあまり知らないんだけど……その人、すごく小学生くらいの子どもをじっと見つめるらしいよ……口裂け女だって言われてるけど、会った人に何か話しかけたり聞いたりすることもないんだって……」


 僕のグループにいた理紗ちゃんが、その話をノートに書き留めていた。


 正直……幽霊の話っぽく聞こえるけれど……浩太くんの話を聞く限り、この写真に写っている女性は「本当に実在する」人物である可能性もありそうだった。


「情報、ありがとう……」


 僕たちは引き返そうとした。すると浩太くんが、何かを思い出したように振り返って叫んだ。


「ねえ! 今夜、度胸試ししようぜ!!」


「おー!」


 僕たちがいる場所の近くには、ホテルからそう遠くないところに、廃屋が一軒あるらしく……そこへ肝試しに行こうという話になった。


 最初は、幽霊なんて怖くないから楽しそうだと思っていた……。


 でも……


 僕はもう一度、その写真を見た……あの女性が写り込んでいたフレームの部分を……。


 今は正直、あまり肝試しに行きたくない気分だった……。

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