#22 全は一は蜂、一は全はタコを統合する未来の人間
「別にオレじゃなくても良くね??」と蜂の神メリュクシオンは言った。
ソフィ「キミが最適だったんだ」
メリュ「なんで?カブトムシでもライオンでもデュナミス様の顕現できたよね!」
ソフィ「さっきも言ったろ、キミは地球紀にすでに集団的自己という形態の魂を先行させていて、そのモデルが完全な純粋思考へと進化する直前の神的人間の精神性そのものとなったのをほぼ完成させている、だから我々と意思疎通をするのにとても風通しが良いのだよ」
メリュ「だからってオレでデュナミス様はないでしょ!?今の人間王国の世界観の三層の覆いは蜂の巣というよりどっちかっていうとタコの体内みたいなもんなんだからポリュネクシオンにあたってくれよ」
ソフィ「彼を動かすのは今難しいのはキミも知っているだろう?」
ポリュネクシオンとはタコ種の行動原理を産み出しているタコたちのボスにして神である蓋然体の真名のことだ。
祖父はその時ソフィアレスが想起した人型の蛸神ポリュネクシオンのことをこう述べている。
地球の海洋に存在しているタコもまた蜂同様に未来の人間精神となり得る心の原理を先取りした形態原理の刻印であり証として彼らの肉体はまるごと高次元の精神をその生態そのものとして存在している。
まず地球紀の海に生息しているタコたちの八本の足にはそれぞれに脳があるのに近い独立した神経を発達させている。
だから、彼らのあの足の一本一本は全体の意志に従うのとは別に、それぞれが自己を有して移動と索敵の探索に攻撃捕獲までをも自律的に行うことで、一つの自分であるタコの胴体にあたる中枢部分を生命の核に据えた生存戦略をその「体」としている。
そして、その中枢にある脳は自律的な神経活動をする八つの腕の行動パターンの意味を統合して、その統合された情報を全体に共有してその後の腕たちの自立活動の選択のための学習と経験と記憶を司る器官として機能している。
さらに、タコには三つの心臓がある。
第一心臓
▶ 自己自身の生命を維持する。
第二心臓
▶外界との生命交換を維持する。
第三心臓
▶分散した八つの局所的自己を一つの生命として成立させる。
こうしたことから三つの心臓は単なる循環器官ではなく、「自己」「世界」「自己内部の多様性」という三つの生命循環を維持する複数の生理的中心の機能を駆使して、身体に行動を発生させるための生命力で蛸という生命体に満たしている。
その状態の生態にあるタコの三心臓のことをソフィアレスは「生命の統合がまだ生理的・本能的に行われている段階」のモデルとして見下ろしながら、地球のタコの三心臓の生理と八本の自律腕とをアストラル体の依り代とした中枢脳が齎そうとしているその本質を地球紀から二つ先行した未来の人間に覗うことができた。
地球紀の動物は月紀で人間と動物の中間的な段階を通過していた存在の一部器官を一面的に発達させたものだった。
例えば蜂は人間では頭の内部で働いているものが巣という外部環境にまで展開されている。
人間の場合は内部で形をイメージして、手や言葉を駆使して行動へと移すことで外界へと頭の中で描いた事柄を表現する。
それが蜂の場合だと群れ全体で外界そのものを頭のように使って巣を形成していることと関連している。
蜂は多数の身体が一つの生命体として活動しているという、人間が自我を獲得する以前の月紀での生命原理であった”種や群れの一体性”の一点を押し出した産物を、「かつての人間の一面」として生態化させている。
つまり、彼らは全体で一つの心臓であるという未来の人間の一器官を先行させていた。
一方で、タコは一個体の中に多くの中心性を持つ高度な局所的神経処理を内部的に行う。
人間は頭で手足を思考と意志の道具として扱える統一された自我による自由を個としている。
その個がタコの場合には足の数だけ存在することでその複数の半自律的な自己たちが独立して環境を感知しているのだ。
八つの意志を持つ足の行動した結果を胴体であり顔でもある頭の中の三つの心臓を生態を一つの個体とする多中心的自己が本質として働いているのがタコなのだ。
このタコの多中心的自己である「自分は一つだが内部では多数の自分がいる」という生態もまた、月紀の動物人間が保有していた生命原理であった”あらゆる周囲への直接的な知覚”という外界を全身的に感じ取る感覚の一点を押し出した産物なのだった。
よって、タコはかつての人間の顔でもあり舌のような感覚で「自由に動く頭」の神経質な性質を一方向に極端化した動物なのである。
そして、このタコが未来の人間を先取りしているのは高度な知性そのものではなく「多様な生命活動を一つの自己として維持する能力」であり、その能力そのものを生態体系としたタコのあの舐めずるような体は現代の人間でいえば「舌」にあたる。
つまり、タコとは人間の舌が一面的に発達した動物でもあるのだ。
舌には環境に触れ、形を感じ、よく動き、外界を取り込むためのセキュリティ的な器官がある。
タコは腕、吸盤、皮膚を通じて周囲を非常に細かく知覚し、その身体そのものを使って環境と関係しているその生態の在り方が人間の舌の持つ精神的な側面を全身的に拡張させたもの。
それが「自由に動く頭」というタコの性質となっている。
だからといって、その性質によってタコが世界を言葉で語っているわけなのではなく、その性質はむしろ身体そのものが世界との対話を体現していて、そのことは人間が言葉を発する以前のロゴスを生きてきた月紀の名残とも言える姿をタコとして顕にしている、とも言えるのであった。
そして、現在の人間の舌は形態を感じ、音を言葉にして、様々な関係から形を創る器官でもある。
人間の舌と喉頭は、発声・調音という一連の機能系の中で協働している。
口から吸い込まれた空気が咽頭を通じて肺に入り、その肺から排出された空気を喉頭の声帯を通過させることによって声の原型である音を、さらに舌や唇で細かく振るわせる調音によって人間はその精神と恣意を言語にすることができている。
その人間の舌の前時代の精神を極端化させたタコの身体が先行させている「多様な生命活動を一つの自己として維持する能力」が未来の人間の喉頭という一器官として役割を果たすようになる。
その役割が人間の言葉によって人間を創り出すという生殖器官へと未来の宇宙では進化していくのである。
あるいはもうすでに存在している未来の人間が現在までと過去の人間をもすでに創造しているとも言えた。
少なくとも叡智の神霊であるキュリオテテスのソフィアレスは人間的な時間では活動しておらず、宇宙全体を満たすあるべき生命の光として設定した秩序ある叡智の未来とそうではなくなる可能性のカオス的な叡智の混入による遍歴とその変遷の変化の知覚である進化の状態と形態を時間として感じているようで、人間の進化におけるあるべき究極的な到達点が齎そうとしている人間から見上げる未来の宇宙をすでに把握はしていた。
把握しているのは蜂的なロゴスが多数の生命を一つの心臓とし、タコ的なロゴスが一つの生命の内部に多様な知覚運動の中心がそれぞれに言語活動をする器官を喉頭とし、内にも外にも多様な他者の存在を知覚しながらもそのすべてを自己として自己を失うことなく一つの生命としてその意志を組織し、統合しているひとりの人格存在としての人間自我の完成形が未来には約束されている。
現在人間=地球紀
一者としての自我=自由意志を意識にして「かつての人間のなれ果てたち」を土台に自らを思考する存在(選択の自由)
この二つ及び月紀の動物衝動をまだ完全には統合できず、思考でのみその本質を自分に取り込める段階
↓
蜂
多者 ▶一者
多数の個体が一つの生命になる=地球紀に人間によって吐き出された月紀の動物衝動
※地球紀の次の宇宙で獲得される霊的自我のモデル
↓
タコ
一者 ▶ 多者=地球紀に人間によって吐き出された月紀の動物衝動
一個体の内部に多数の局所的な自己活動が成立する。
※地球紀の次の次の宇宙で獲得される霊的自我の生命霊のモデル
↓
未来人間=三つ先の宇宙での最後の人間段階で霊人
一者としての自我が多様な生命活動を自由に統御する
心臓=生命・血液・感情・意志の統合
咽頭=思考・言葉・形態形成・創造が発達
この未来器官で人間が人間を言葉によって創り出すという生殖の役割を果たすロゴスとして結びつく=新たな人間を創造
これが愛と自由の使命を携えた人間段階の自我の未来であった。
ソフィ「ポリュネクシオンの蓋然体は今、人間段階の最後の宇宙体である第四層への拡張の最中で、彼の全霊は形態の神霊エクスシアイと取り込み中だから強制召喚はほぼ無理なんだ」
メリュ「ああ、それやると蓋然体が壊れるやつだ」
ソフィ「だからこそ、エクスシアイの側に働きかける」
メリュ「待て!どういうつもりなんだ!?アポロン様を探してるんじゃなかったのか?」
ソフィ「それだけにかまけるためにキミと活動しているわけではないのだよ」
メリュ「それだけって、アポロン様は確かにオレの眷属たちのすべてに浸透しているけど、あの方の蓋然体がオレたちのどこにあって、どんな容態なのかまでかが未だにわからなくて結構イレギュラーで大変なんだけど、おまけに強制召喚までさせられるし」
ソフィ「大変だろうけど、次はエクスシアイのモルフィオンだから」
メリュ「無理!オレのブッディ体(生命霊)は地上の蜂たちの心臓だから貸せないぞ!」
ソフィ「そんなことはわかっている、だからキミの分体である蜂たちのエーテル体から働きかける」
メリュ「そんなことが可能なのか?お前の位階から見た蜂のエーテル体なんて石ころどころか素粒子にも満たないくらいに無いも等しい作用なはずなのに…」
ソフィ「霊人の権能を借りれば造作もない」
メリュ「え、でもアルカイたちもデュナミス様たちと次の宇宙への移行手続きの最中でポリュネクシオンの宇宙体の第四層の拡張に関わっているはずなんだが…」
ソフィ「そんなことを考えていたら誰にも干渉できないままに盟約を反故にすることになるでしょう」
メリュ「盟約?」
ソフィ「さて、順番はもう理解できていますね?」
メリュ「クソッ!今度はオレに浸透している生命霊ではなく人格を使う気か」
ソフィ「この宇宙タペストリーは現在、顕現期直前の状態ゆえにさすがに今は干渉の機ではありません、だがしかし!キミの人格を通じたアルカイならばさほど難しくはないのです、なぜならキミらの位階はほぼ同等、ゆえに神格の並列を伴うことなく触媒化することができる!」と再びソフィアレスは【叡智が多様であるための境界の光】の体制に入る。
メリュ「無駄だとは思うが、反射する六角形の完全結界!」とメリュクシオンも守りに特化した壁のような六角形を展開するもソフィアレスはそれに構うことなくその意志をメリュクシオンに向けて放つのだった。
ソフィ「アートマ(霊人)の生命霊(神的エーテル)たる神の呼び声に応えよ、人格の神霊アルカイのプロソピオン、ここに」




