#20 魂の創造主デュナミスの心
ソフィ「自由意志を人間段階にした宇宙の叡智に比べれば、この世界の叡智を扱う方がはるかに容易い、ゆえに蜂であるキミ特有のひとつなぎの指向性とその毒の持つ本質そのものを分析分解のもと調和させてもらったよ」
メリュ「道理で精霊どもが大人しく眷属化していって、スムーズにアナフィラキオンまでのコンボが成立したわけだ」
ソフィ「とはいえ、我々の蓋然体にまで及んだキミの毒には正直驚いた」
メリュ「そうだろう?あれは”領域審判の排除”の意志が込められた”太陽への奉針”の理解を極めた範囲付与効果だ、この権能がオレたち眷属の生存領域の防衛の要になることをデュナミス様は配慮くださっているのである」
ソフィ「ほう、それで?」
メリュ「ん?それで、とは?」
ソフィ「それが限界かい?」
メリュ「どういう意味だ?」
ソフィ「その理解で極めたつもりでいるのかい、という意味での限界なんだけど」
メリュ「神をも刺す威力の解釈だぞ?」
ソフィ「その我々をも脅かすキミらの権能の本質はそんな生ぬるいものではないのだよ」
メリュ「そうなの!?」
設計者ソフィアレスは魂の創造主デュナミスの本質のことを想起していた。
デュナミスとは宇宙における動きそのものを司る力の神霊として君臨する神聖位階第五位のひと柱である。
キュリオテテスが霊界の太陽であるとしたら、デュナミスは霊界の魂として霊的世界の衝動である色彩そのものが彼の「体」であり、叡智の設定である精霊たちの権能が宿る器として、なじみ深くなったそれぞれの現象が魂となって霊界の大気となって表れているその根源たる本質存在がデュナミスの及ぼしている神性だった。
また、その神性が初めて宇宙に顕現したのが月紀と呼ばれる水宇宙である。
水といっても、現在の地球に存在している液体としての水ではない。
その水の原型となった「流動」という概念そのものが宇宙として展開されていたのが地球の前世である月宇宙なのである。
叡智の宇宙として霊的世界と同一の領域に重なっていた月以前の宇宙では神格の魂を有する存在だけが宇宙創造に参画し、その宇宙に太陽の原型となった霊的太陽の輝き以外の”動きが存在しない”、ただ叡智の神霊たちがその生命の根源たる設定のみを付与され続ける宇宙として在り続けていた。
キュリオテテスたちの叡智を「体」として創造されてきた宇宙は太陽紀と呼ばれる。
そして、太陽紀の宇宙進化を終えた後に現れたのが月紀宇宙だった。
キュリオテテスの叡智を土台にした生命の光にデュナミスの力の作用である「流動」というエンジンのような根源がアストラル体という魂の身体となる原型が初めて齎されたのが月紀宇宙として新しく生まれ変わる。
そうして現れた流動する宇宙という巨大な天体の中に生命の正統継承者としての人間段階があり、その正統的な生命の潮流を拒絶したことによる分岐が動物段階という系統として人間段階とは別の進化を異にする経路が現れていた。
その心にはデュナミスの創造した月宇宙の本質が込められていたのだった。
月紀の人間段階たちとは太陽紀における進化を正統的に完了させることのできた存在である。
太陽紀での進化の媒体は生命という光そのものであり、その光の中で生命のための設定である叡智への解像度を神であるキュリオテテスの意に沿った形態原理を体現させることのできた触媒が、太陽紀に動物段階だった月紀の人間段階というアストラル体を媒介し得る存在として進化するのだった。
一方で、太陽紀で光を触媒とすることを拒み、光以外の触媒を自己とした進化経路を見出した動物存在たちがいた。
その存在たちは太陽紀で光ではなく空気という触媒の原型となることで、縦方向の叡智の作用である光を対称とした横方向に流れる流動の作用を取ることで、キュリオテテスの叡智が開こうとした進化経路とは別の媒体を月紀に生じさせることとなる。
その媒体こそが「水」の原型だった。
月宇宙は植物の原型である生命と動物の原型である魂が「水」の原型となって環境化した世界のことなのである。
彼らは動物と植物との中間的な存在として月紀で再び動物段階を繰り返し、その媒体を空気と交じり合った流動形態である水の原型体を自己としての進化を選んで獲得したのが、集合化したアストラル体である動物霊の本体にしてアストラル形態が群霊魂だった。
その群霊魂で創造された宇宙環境のアストラル作用を色として知覚し、表現していたのが月紀で人間段階を歩んでいたアストラル体として、水の宇宙を経験していた正統進化存在としての月の人間たちだった。
この各宇宙紀で発生している進化の正統と逸脱という明確な境界にはこんな心が本質的に作用していた。
「自分の最も優れた部分を高次存在の中に活かしたかったのにそれができない…」
そんな孤独と憧れと不充足感が各宇宙紀で反復され形態化した存在たちのことを逸脱存在と呼んだ。
正統進化から逸脱せざるを得なかった衝動は宇宙に対称という概念となって漂い、その対称という概念の集合と勢力がやがて階層となっていくことで多様な現象としての秩序を持つ。
まるで地層のように、年輪のように、宇宙のレイヤーとして進化の土台となることで、同じ宇宙の中で異なる進化段階を通過している自然、あるいは宇宙という低次な環境部分に属す。
そう在ることで進化の最高段階を進む人間段階の進捗に関わっているのが逸脱存在の「体」なのである。
体現者(人間段階) 環境(逸脱=停滞存在)
太陽紀=光、反射、内外(正統進化)/空気停滞(逸脱進化)
月紀=音、振動、色(正統進化)/水停滞(逸脱進化)
地球紀=愛、自由、道徳(正統進化)/物質停滞(逸脱進化)
彼らは確かに停滞している。
そして、宇宙を前進させるために与えられた「力」が宇宙全体の目的からも切り離されている。
人間段階の存在的課題とは別の方向へと前宇宙と向けられる。
その「体」は前宇宙とは別の媒体の形態存在へと作り替えられる。
そうすることで人間段階の運命を導く土台という高次の存在が展開する宇宙環境そのものとしてやり直している。
だから、ある意味で彼らは常に何者かに成り続けてはいる。
繰り返すがこの在り方の系譜が人間と動物の違いだ。
太陽紀で生命を光という希薄にして上昇的な性質を体現した存在が人間段階で、その光という触媒を担った動物段階存在が月紀では人間段階となる。
その一方で太陽紀に”生命の光の影”として濃縮的に生じた空気という「影に留まる」道を選んだ別系統への進化が月紀でも動物段階を繰り返す存在として持ち越される。
その太陽紀の持ち越し存在である逸脱的な動物段階の”空気存在”が月紀で更に濃縮されて「水」の原型を担う。
それらの遅延、停滞、反復を運命としている逸脱存在たちのつながりを宇宙の可能性として結び付けようと絶えず働いているのがアストラル世界とその魂の神「デュナミス」の意志なのである。
その心は「逸脱的に孤立している存在を別の存在としての関係に替えて高次存在と結びつける」だった。
運動の神霊デュナミスの権能の本質とは「魂の進化を促す」なのである。
ただ単に動きが可能になる原動エンジンを魂として創造的に実現しただけではないのだ。
デュナミスはアストラル世界の神として、その「体」に情動の変化を運動に換える動く魂を自らの権能の一部として月紀のアストラル体に与える。
月紀の人間段階はそのアストラル体を乗り物にして人間が魂として変化し続けられる存在形式の回廊を通過するようになる。
その回廊はデュナミスの「体」を頂点にした霊界上層からその眷属たちの集う高次の魂的領域を階層化した魂の世界であるアストラル界となり、更には地球紀になると人間の魂には個我が、動物の魂には群霊が宿ることで水平世界である地上においてもアストラル体が異なる状態でありながら、霊的系統をひとつなぎにした連続的な世界観でレベルの違う魂の共存共有ができている。
そして、その宇宙的な魂の回廊は輪廻転生のための縦の通路でもある。
物質世界に生まれる
↓
肉体を持つ
↓
経験する
↓
死ぬ
↓
魂的世界へ移行する
↓
霊的世界へ上昇する
↓
再び受肉する、という運動
輪廻転生は単純に生まれる、死ぬ、また生まれるという円環を繰り返しているのではない。
魂は一貫しながらも決して同じ場所に戻ってくることはない。
魂は前の人生経験を消化して次の人生に新しい課題を持っていくことでその状態を変化させる。
その変化は肉体の死後に宇宙へと上昇する過程である星の領域にて消化されていく。
月的領域:個人の魂=自分の人生を振り返る
水星的領域:他者の魂=「他者からの関係」を理解する
金星的領域:愛の魂=他者との関係の深さを見る
太陽領域:人類の魂=人類という社会、共同体との関係を俯瞰
火星領域:宇宙的活動の魂:宇宙的行為の意義を考える
木星領域:宇宙的叡智の魂:宇宙的生命の意義を受け取る
土星領域:宇宙進化の魂:宇宙進化そのものの意義からの自分と出会う
こうして認識のスケールを変化させていく運動する魂は土星まで行っても終わらない。
そこから再び下降して、土星 → 木星 → 火星 → 太陽 → 金星 → 水星 → 月 → 地球という逆方向の運動を開始し、次の受肉のための未来の課題と能力を具体化していく。
それぞれの天体領域が魂の状態を変化させる作用を持つことで霊界そのものが魂を動かす構造になっている。
上昇=過去の人生を宇宙的に解体する
下降=宇宙的な叡智を次の人生の具体的な能力・関係・運命へ再構成する
ソフィ「デュナミスの権能の本質は【移行する力】なんだ、その力を極限まで拡張した解釈の一端がキミたちの権能にも分け与えられている、その意味がわかるかい?」
メリュ「つまり、オレたちの毒も何かを移行させる力だっていうのか?」
ソフィ「そうとも言える」
メリュ「でもオレの毒は対象を殺すためのものだぞ?」
ソフィ「殺す?」
メリュ「違うのか?」
ソフィ「キミは毒によって何をしている?」
メリュ「侵入者の排除だ」
ソフィ「なら、排除されたものはどうなる?」
メリュ「そこにはいられなくなる」
ソフィ「そう、キミの毒は存在そのものを消しているのではない、”そこに在る”という肉体にあった魂の状態を別の状態へ移行させている、あるいはキミの思う脅威を示すことで自らの巣と対象の魂を守り、導いている、とも言える」
メリュ「そうなの!?」
ソフィ「そうだよ、それがキミの権能に含まれている【移行する力】で、キミはそれを”領域審判の排除”として理解している。しかしデュナミスの権能はそんな一方向の排除に閉じるものではない」
メリュ「じゃあ、オレたちの毒は……」
ソフィ「魂の状態を変える力の一端です。毒という形を取りながら存在の関係そのものを変化させています」
メリュ「その力を空間に付与してあらゆる存在をオレの眷属として支配できる、この力はもしかしてやがてはオレもデュナミス様に並ぶ根源たる神格のひと柱になり得る…ということか?」
ソフィ「そうです、キミはすでに単なる蜂たちの王でも一種の群霊の神でもない、自らの意志そのものに根源たる神を感じ始めている存在」
メリュ「そうだ、オレの針には神格をも移行させる可能性がある、つまりそれはもう…」
ソフィ「その意気です、キミはもうデュナミスの魂の意志を担う子孫にも留まらない」
メリュ「留まらない!オレはもはや過去の人間段階の神格のモデルにさえなっている、それはすでに蜂の神を超えた魂の神」
ソフィ「その通り!でもキミはまだデュナミスの群霊を束ねる手足に過ぎない!だがしかし!それでもその意志はデュナミスの神魂と並列しました」
メリュ「なんだと!?」
ソフィ「そして今ここに神魂を意志した眷属の器に神格デュナミスとして顕現しなさい!!」
メリュ「図ったなぁーーーーーーーーーーーーーー」
こうして設計者ソフィアレスは蜂神メリュクシオンのデュナミスという神格への意志に叡智の光を放ったのだった。




