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第十三話 ――滝の問い ――
滝の音が、世界のすべてをかき消していた。
氷雨霧丸は崖の縁に立ち、流れ落ちる水の向こうを眺めている。
雪ノ丈は、ただ黙ってその背を見つめていた。
「――雪ノ丈君」
氷雨が振り向く。
その瞳には、哀しみとも興味ともつかぬ光が宿っていた。
「この時代は、もう終わる。剣も、名も、忠も、すべてが滝のように流れ落ちていく。だからこそ、私は君に問いたい。――これから、君はどう生きる?」
滝の水しぶきが、雪ノ丈の頬を打った。
彼はしばらく言葉を探した。
氷雨の問いに答えることが、自分の運命を決めることだと、どこかで分かっていた。
雪ノ丈は静かに息をつき、滝の音に負けぬほどの強さで言った。
「僕は、夏絵と共に生きる……それだけです」
氷雨の目がわずかに見開かれた。
「愛か……時代を越える答えだね」
滝の光が、二人の間を裂くように輝いた。
氷雨霧丸と別れた日の夕暮れ、雪ノ丈はゆっくりと家へ戻った。
山の稜線には薄く霞がかかり、風に乗って滝の音がかすかに届いていた。




