決着
「か…はっ…」
速すぎて攻撃が見えない。気が付いたら攻撃を受けていた。
それにパワーもさっきまでの比ではない。
格が違いすぎる。
全員が手も足も出ずに倒れて既にみんな立ち上がる力もない。
私だって動けない。
あぁ、私はここで死ぬんだ。誰に言われたわけでもない、そう感じたのだ。
「諦めるな!! 俺達はここで死ぬわけにはいかないんだ!」
竜樹はその言葉の後に立ち上がり、大きく叫び出す。
体からあふれ出る電撃がドラゴンの形になり、竜樹はその中に入っていく。大きさはボルテックスよりも数倍大きい。今のキングと同じくらいの大きさだ。そして雷の翼が四枚、大きな角が生えてきた。
「竜化!」
出発前に竜樹が言っていた、俺には奥義が二つあると。一つは雷電の鷹、そしてもう一つは竜化。
竜化とは竜樹の全身をドラゴンの形の電撃が覆い、竜樹自身がドラゴンとなり戦う技だ。でもこの技は体への負荷が大きいために長時間使うことができない。もし使い続けたらどうなるかは分からない。
だが竜樹の攻撃力、防御力、スピードも今までの十倍以上になる。
「ウォォォォォォォォ!!」
超高速で飛び回る竜樹は、確実に本気のキングにダメージを与えていく。だがキングもやられっぱなしではない。竜樹のスピードに追い付き、爪で引き裂く。確実に上昇している防御力でもキングの攻撃は完全には防げずに竜樹は少しのダメージを受ける。
私が目で追えたのはここまで。あとは私では目で追う事が出来ずに、ところどころ空中で火花が散っているのが分かる程度だった。
でも僅かに、ほんの僅かだが竜樹のスピードが落ちている気がする。
竜樹、頑張れ…!
私はそう祈る事しかできなかった。
「ぐぁっ!」
そう声がすると竜樹が近くの瓦礫の山の上に落ちてきた。
私は思わず竜樹の名前を叫んで彼に駆け寄っていく。
竜樹の体は、全身傷だらけでボロボロだ。キングも血を流し、体力も消耗しているようだが竜樹ほどではない。
「強いな、ここまでやられたのは久しぶりだ」
まだ、奴には余裕がある。私でも体力を削ることぐらいは―――。
多分全員がそう思ったのだろう。みんながキングに向かっていく。
でも既にみんな限界がきている。
「お前らじゃ足止めにもなんねぇよ!」
キングの大木のように太い腕の一振りでみんな吹き飛ばされる。
「風の鎖」
蒼井さんの放った風の鎖はキングをとらえるがすぐに破られる。
「海香…下がってて」
よろけながら立ち上がる竜樹を私は止めることが出来なかった。
「みんなどいてて」
竜樹の力ないはずの言葉に全員従う。今の私達の中で間違いなく最強は竜樹だ。
「竜化」
もう一度竜樹は竜化してキングに向かって行く。
竜樹自身も自分が負けたら終わりだと分かっているのだろう。引くと言う事をしない。
ついこの間まで力を暴走させていた竜樹なのに、今は私達の手の届かないところにいる。
稲妻が空中を走り、黒炎が空を舞い、黒雷が空に轟、黒い氷と黒い水を黒い風が飛ばして黒いハリケーンが起きる。
私にわかったのはその程度だ。
竜樹とキングが地上で少し距離をとった。
「お前、まだ上があるな」
キングの言葉は私には聞こえた。
「ある事にはあるけどタイミングを間違えば死ぬ技なんでな、それを見極めてる」
「そうか。俺はもうこの上はない。が、体力もそろそろ限界だし、お前はそのままじゃ俺に勝てない」
「……」
「出せよ、勝つにせよ負けるにせよどうせすぐ終わる」
二人の間に流れる沈黙。先に口を開いたのは竜樹だった。
「ボルク、頼む」
「……あぁ」
ボルクはそう言うと竜樹の体から出てきた。するとふたりの体を弱い電撃が包んだ。すると二人の体が透けて、重なる。そしてピカッと二人の体が光るとそこには竜の翼と角と尾を生やし、手足が竜のものに変化した人間が立っていた。
どういうことだろう?
「融合か。人として不安定だから出来る技だな」
つまりこういう事らしい。普段竜樹がボルテックスの力を使うときは、体内にいるボルテックスの力を借りて電撃を出している。でもこの融合は竜樹が竜と人の特性を持った生物になっている。つまり竜人。作られた人間である竜樹だからこそ出来る技。
「いくぞ」
雷を纏った竜樹はさっきの比ではないスピードで飛ぶ。キングも限界とか言っていたくせにまだスピードは速くなる。
目にも映らぬスピードで空中戦を繰り広げる二人は私達とは別次元の強さだ。もう手助けとかできるレベルではない。ただ祈るだけ。
離れたところで大きな土煙が舞う。二人が瓦礫の山から出てきてまた高速で闘う。
また二つの土煙が舞った。
「くそ…もう時間がない」
時間…? なんの事なんだ?
「雷電の鷹!!」
さっきよりも巨大な、雷の怪鳥が現れる。
怪鳥は雷をまき散らしながらキングに向かって行く。が、キングはそれを紙一重で避ける。怪鳥は後ろでターンをしてまたキングに向かっていく。遠隔操作が可能になったようだ。でもキングはまたそれを避ける。何度かそれを繰り返すがキングには当たらない。
そして竜樹はその怪鳥を自分にあてる。
竜樹の体はより速く動くようになる。でも時間が経つにつれて竜樹の体がボロボロと崩れていく。
「あのね、竜樹には言わないでくれっていわれてるんだけどね」
かづが足を引きずりながら私の方にやってきた。
「融合はね最大で三分しかもたないんだって。それ以上融合しつづけると竜樹もボルテックスも理性が崩壊していって化け物になっちゃうんだって。だからこの技を使うのは死ぬつもりの時だけだって」
もう五分くらい経っている。限界なんてとうに過ぎているはずなのに、どうして竜樹は闘えるのだろう。私には彼を止める力がない。
竜樹はもう人としての自我はないのかもしれない。でも戦っている。私達のために、世界の為に。
竜樹の最後の一撃だろう。右腕に巨大な雷の塊を纏ってキングに向かって行った。キングも黒雷を左手に纏って竜樹に向かっていく。
二人の拳はお互いの体を貫き、二人とも地面に落ちる。そして二人は息をしてるものの動かない。
「人間にしては強かったよ」
キングが呟く。
竜樹は一言もボルテックスも一言も話さない。いや、正確には話せないのだろう。理性が無くなってきてしまっているのだろう。
「人間は支配しないで協力てみようと思う。俺の負けだ」
どう見ても相討ちにしかみえない。
「ボルク、成長したな。竜樹とか言ったな…見事だ」
キングはそう言って目を閉じた。そして呼吸も止まった。
竜樹は息はしているが一言も話せていない。
「竜樹、しっかりして。あんたが勝ったんだよ」
私は一生懸命に呼びかけるが反応はない。
すると突然竜樹の手が私の頬に伸びてきた。
「…海香……ありがとな……」
竜樹は一言だけそう言うと目を閉じた。ボルテックスも同じく息を引き取った。
「竜樹ぃぃぃ!! たつきィィィィィィィィ!!」
私は涙が止まらなかった。止められなかった。
頭の中が真っ白で、ただ悲しくて、ただ悔しくて、世界なんかよりも私は竜樹に生きていてほしかった。
―――そして、あれから七年が経った――――――。




