平和な世界
「うみかせんせー、たつきって死んじゃったの?」
「他のみんなは生きてるの?」
子供たちの無邪気な質問には私はお茶を濁すように答える。
「んーどうだろうね」
拝啓、黒井竜樹様へ
時の流れとは過ぎてしまうと早く感じるもので、あの闘いからもう七年が経ちました。
竜樹とボルテックスが守ったこの世界で、みんなそれぞれの道を歩んでいます。
私は保育士になりました。私が体験した嘘のような本当の出来事を紙芝居にして、子供たちに読み聞かせています。みんな興味深々に聞いてくれるから、つい事細かに話してしまって子供達から注意されることもしばしば。
かづは現在バリバリのキャリアウーマンです。働く大人の女性として生き生きしています。それに前よりもずっと美人になってモテモテみたい。私とは大違いだなぁ。
蒼井さんは会社が前よりも大きくなって海外進出を果たしました。こないだ会った時には蒼井さんは英語と中国語をペラペラに話してたからちょっと驚いたな。そうそう、蒼井さんと言えば子供が二人生まれたんだよ。私も何回も会ったことはあるけどとても可愛いんだよ。
アリエスとフェインは海外だからあまり会えないけど、今はフェインの家族も一緒にイギリスで暮らしてるみたい。
それと言い忘れてたけど、フラスちゃんとソラスちゃんも私と一緒に暮らしてます。二人とも元気です。
幻界の方では今はアスガルトが王になったみたい。今は友達になったからあんな闘いはしないよ。ケンカはたまにするけど。行方不明になっていた二体のドラゴンも見つかったみたいで一緒に頑張ってるって。
それに実界と幻界の交流も進めてるみたいで、まだ一般には発表されてないけど時間の問題だろうってアスガルトが言ってた。
「やぁ、みんな久しぶり」
「久しぶり」
先に来ていた蒼井さんが私に気づいて小さく手を振ってくれた。今日は奥さんと子供も一緒みたいだ。
「二人は?」
フラスちゃんとソラスちゃんの事だろう。
「多分もうそろそろ来るよ」
因みにフラスちゃんは普通に居酒屋で働いている。ソラスちゃんは高校に通っている。
「よう、久しいな」
かづが空港までフェインとアリエスを迎えに行っていた。
「全員そろって…ないな」
「今そろいました」
フラスちゃんとソラスちゃんが最後に到着した。これで全員集合か。
「因みに今日は俺達もいるからな」
アリエスの体の中から顔だけ出してそう言ってきたのは、今や幻界の王の補佐を務めるフレイムギアだ。かづの中からはカイエンが顔を出す。
「もう七年か…あっという間だったな」
今日は竜樹の命日だ。平日にも関わらず、みんな学校や仕事を休んで集まっている。それほどに私達のなかで大きい人物だったのだ。
今私たちが集まっているのはお墓だ。もちろん竜樹の。
みんなそれからは口を開かずにお線香をあげる。私もお線香をあげてから、手を合わせて目を閉じる。数秒で目を開けて元の場所に戻る。
全員がお線香をあげ終わったところでかづが口を開いた。
「うみ、今彼氏いる?」
「いないよ」
私は本当の事を答える。
「そっか」
かづはにっこりと笑ってそう答えた。
「さてと、みんなお昼は食べた?」
蒼井さんがみんなの方を向いて話し出す。
「まだならうちの店においでよ。今日は僕のおごりだよ」
全員まだだったようで、笑顔で返事した。
「さぁ、帰ろうか」
アリエスに続いてみんな帰り始める。
私は最後に残って、お供え物を竜樹のお墓に置いた。竜樹が好きだった、杏仁豆腐だよ。私また料理の腕が上がったからきっと前よりもおいしく出来てるよ。
「また来るよ」
私はそう言ってからみんなのもとに小走りで向かった。
―――毎年竜樹の命日にはみんな集まって、そのあと蒼井さんの店でごちそうになるんだよ。
本当に美味しくって、竜樹にも食べさせてあげたいよ。
みんな仲良しで、楽しくやってます。竜樹は天国で楽しくやってますか? それとも生まれ変わって今どこかにいるのかな?
どっちにしろ多分私はもう竜樹には会うことが出来ないだろうから、最後言わせてほしいことがあるの。
竜樹、ありがとう。それと大好きです。
敬具




