最終決戦へ
「電光石火」
体に電撃を纏い、雷速で俺は動き回る。
「ボルク、もう少し出力あげられるか?」
「余裕だ。いくぞ、タツ!」
俺は部屋の中を上下左右いろんな方向に動き回りながらあすがるとに確実にダメージを与えていく。
「くそが…くそがァァァァァァァ!!」
アスガルトが叫ぶと辺り一帯が吹雪に覆われてアスガルトはこっちに向かってくる。
怒って直線的になってしまったアスガルトの動きは読みやすく、したがって攻撃も当てやすい。
俺は動き回りながら右の拳に力を溜めていく。
アスガルトはなかなか当たらない自分の攻撃にイライラが募り、俺の方は左手で少しづつ攻撃をしながらタイミングを待つ。
「ちょこまか動くなよ、人間ごときがァァァ!!」
俺は一瞬動きを止めて、わざと隙を作る。
当然怒りで冷静さを失ったアスガルトはそこに突っ込んできた。
「行くぞ! ボルク!」
「あぁ!」
「「雷電砲!!」」
右手に溜めていた力を一気に解放し、自分の拳の数倍の大きさの電撃の弾がアスガルトに直撃した。
「ぐぉぉぉぉ!!」
アスガルトは大きく後ろに吹っ飛び、壁に激突する。
今の俺達の中では上級の方の技。頼むから少しはきいててくれよ。
「……ふぅ。おかげで頭に上ってた血が抜けたぜ……」
瓦礫の中からガラガラと音をたててアスガルトが出てくる。頭からは血を流しながら。
「もう油断はしない」
部屋中に吹雪が吹いてグッと部屋の温度が下がる。部屋の温度が下がったことで寒さに慣れていない俺の動きは鈍ってしまう。
これはさっさと片付けてしまわなければこっちがやられてしまう。でも激しい吹雪でアスガルトの姿を視認できない。何とかして位置を突き止めなければ。
俺は足元から微弱な電気を流し、アスガルトの位置を探る。
……ぱち…ぱち……。……見つけた!
「真上だぁぁ!」
俺は真上に電撃の柱を出す。
「ガァァァ!!」
アスガルトに直撃する。だがアスガルトは苦しそうな声を出しながら、電撃の中を急降下してくる。
うそだろ…。そう思ってしまった。そして一瞬動きが止まってしまった。
まずい! と思った時にはもうすでに遅かった。何とか逃げようとするが、逃げきれずに右足と右手が凍ってしまった。このままではまともに動くことも難しい。
それでもここであきらめてしまってはいけない。何とかして勝機を見つけなければ。
「死ね」
アスガルトはここぞとばかりに距離をとり大きく息を吸う。確実に大技を撃ってくるだろう。
「アイスアロー」
アスガルトの口には大きな氷の矢が作られてく。その矢は人の二倍ほどの大きさになる。直撃したらまず無事では済まない。
どうする。アスガルトは今隙が大きいが俺は動くことが出来ない。
俺は小さな電撃の弾を作り、アスガルトの前に投げる。丁度顔の前に行ったところで俺は指を鳴らして合図する。すると一気に爆発した。
「くっ!」
だがこれには攻撃力はない。ただの目くらましだ。でもそれのおかげでアスガルトの動きが一瞬止まる。
「雷槍」
雷の槍を作り思いっきり投げる。それはアスガルトの羽を貫き、アスガルトはバランスを崩して落下してくる。
「行くぞ、ボルク!」
「あぁ」
上に向かって打ち上げた雷が巨大な鳥の形になっていく。
「雷電の鷹」
雷の鷹は空中を飛び回り、俺の指示で敵を撃つ。
「貫け!!」
それの鷹の移動速度は雷速、威力は雷と同等。それはボルクよりも大きく、実態のない雷。
俺の合図で雷の鷹はアスガルトを貫いた。
アスガルトは叫ぶことなく地面にドサッと落ちた。
アスガルトは動かない。死んではいないと思うがしばらくは目を覚まさないだろう。
先に進もう、こんな足でもまだできることはある。
動けないこともない。這ってでも前に進んでやる。俺はこの世界の運命を背負っているんだから。
「流石だな」
後ろから突然声が聞こえてきて俺はとっさに後ろを向いて構えをとる。
「構えなくてももう動けねぇよ」
アスガルトだ。仰向けになって喋っている。
「最後の…あの技、元々ボルクの奥義だったやつだろ? すげぇ威力だな」
「あぁ」
「負けちまったなぁ……」
アスガルトがボソッと呟く。
「いつまで敗者に構ってるつもりだ。とっとと行け」
俺は何も言わずに振り返り次の部屋に向かって這って進む。
「そろそろ他のところも決着がついたところかしらね」
シリムが呟いた。
「そうね、ここももう決着ついたけどね」
私がそう言うとシリムは前のめりにドサッと倒れた。
「海香って言ったわね……流石よ」
何が流石よ、だ。かなりギリギリだったよ。何とかカウンターがうまくヒットしたけど。
「うみちゃん…先に進もう」
フラスちゃんがそう言ってくれるが体が動かない。まずい…倒れる……!
でも私の体は地面につくことなく、何かに支えられた。
「大丈夫かい?」
蒼井さんだ……。無事に勝てたんだ。
私は小さくうなずいた。蒼井さんに支えられながら私は前に進んだ。
先の部屋には沢山のドアがあってどこに進んだらいいのか分からない。
その中の一つのドアが開き、アリエスとフェインが入ってきた。
「二人とも無事だったの!?」
「あぁ、敵の数は以上に多かったが雑魚ばっかでなんとかなった」
「まぁお互い無事でよかったよ」
でもまだかづと竜樹がいない。二人ともどうか無事でいて。
突然二つのドアがほぼ同時にドン! という音をたてた。フェインとアリエスが別々のドアを開ける。
それぞれ竜樹とかづがいた。
よかった、二人とも無事で。
かづは額から血を流してところどころ怪我をしているが、自分で歩けているのでそこまで傷はひどくないのだろう。でも竜樹は右手と右足が凍ってしまっている。立つことすらままならずに、這って移動している。
出発する前にソラスちゃんと一緒に作っておいた体力回復の液体の薬をみんなに渡す。この薬は即効性が高く、すぐに回復出来る。長期戦になると思って持ってきたのが役に立った。みんなそれを飲み、かづは竜樹の凍ってしまった手足をすぐに溶かす。これで全員の体力を回復した。怪我は治ってないけど、そんな都合よい薬はない。ここで治癒に力を使ってしまっては、これからの闘いに影響が出る。薬はもうない。
「みんな大丈夫か?」
竜樹が立ち上がってみんなに力強くそう言う。
「お前が一番ひどかったんだぞ」
フェインがからかうようにそう言う。
「ポーは?」
私はポーがいない事に気づいた。理由を聞いたけど、なんとなく分かってしまった。
竜樹は答えない。他のみんなも喋ろうとしない。もうみんな分かってしまったんだ、ポーが死んだという事を。
この闘いが終わったらお墓を作ってあげるからね。
「……行こう。そして勝とう!」
全員が頷いて、竜樹が最後の部屋の扉をゆっくりと開ける。




