蒼井vsビエル
ビエルはまだビームを射出していて、僕がさっき出した風の刃と押し合っている。僕はビエルの横に周り、もう一度風の刃を飛ばす。でもそれはビエルの翼によってはじかれてしまう。
「危ねーじゃねーの」
ビエルはビームを出すのをやめて僕の方に振り向いた。口からはわずかな煙が出ている。
さっきチラッと見えたのだが、ビエルの口の中に見たことのない機械のようなものが見えた。多分前にフェインが言っていた人間に改造されたというドワーフと同じだろう。
ビームが撃てるのはエリートだからなんて理由じゃなくて、改造されたからだ。見た感じ他に改造されてそうなところは見当たらない。可能性があるとしたら内臓とかか。
とりあえずビエルの体の下までダッシュで走っていき、打ち上げるように竜巻を纏った拳で腹部あたりを殴る。
「いてーじゃねーの」
殴られた衝撃で汚らしく唾液を吐き出したビエルはそう言うとその巨体には似合わない速度で後ろに下がり、僕に向かって突進してきた。
「う…ぐぅ!!」
体が大きいだけにただの突進だけでも予想以上の威力だ。
僕はなんとかそれを受け止めるけど、はじかれてしまった。城の壁に僕は激突した。背中にひどい衝撃を感じる。
でもそれをなんとか我慢して拳を構えてビエルに向かって行く。
そしてビエルの体を思いっきり殴りつける。が、何故か傷一つつかない。それでも僕はもう一度殴りつける。が、やはり傷はつかずに跳ね返されてしまう。
「へへへ」
ビエルは余裕っぽく笑うと体を思いっきり回転させる。そしてビエルの尾びれが僕の背中に勢いよく激突し、僕はまた吹っ飛ばされて壁に勢いよく激突する。
「ぐ…」
するとビエルが追い打ちをかけるように僕に向かってビームを撃とうとしている。
僕は痛みをこらえながらビエルの口に向かって風の刃を飛ばす。
それはタイミングよく、ビームの発射前にビエルの口の中にあたり、ビエルは苦しそうなうめき声を上げた。
僕はそのまま立て続けに風を纏ってビエルに近づく。打撃はビエルには有効ではないとさっきの攻撃で分かったので、風斧に刃状の風を纏わせてビエルの腹あたりを思いっきり切り付ける。
「ぐっ…!」
効いた! 打撃が聞かない理由は分からないけど、斬撃ならダメージを与えられる。
風斧はいわゆるパワー型の武器だ。一撃の威力は大きいが、連続で攻撃を繰り出すことは難しい。
その巨体に似合わず、スピードの速いビエルにははっきり言って相性があまりよくない。だから使えるのは今みたいに隙が出来たときだけだ。
ビエルはすぐさま体制を立て直して距離を取る。そしてまた僕に向かって高速で突進してくる。
狙うは突進を紙一重で避けたあとのカウンター。でも速度の遅い風斧を使った攻撃では外れてしまうかも知れない。
だから僕は風斧をしまって両手を手刀のようにする。そしてその両手に刃のような形をさせた風を纏わせる。
「風刃」
ビエルはものすごい速さで僕の方に向かってくる。距離はもう十メートルもない。気を抜けない。
「ハァァァ!!」
ビエルはこっちに向かってきながらビームを繰り出してきた。威力は大したことないが、これは恐らく目くらまし。突進を避けさせないための。
視界からビエルのビームが消えたと思ったら既に目の前にはビエルがいた。
やばい! と思ったが体がついて行かずに直撃してしまう。
「ぐぁぁぁぁぁ!!」
今までのよりも威力が数倍あり、僕は吹っ飛ばされた。激突した岩が砕け、木が折れて、でも僕は止まれない。
「ぐっ…ハァァァァ!!!」
体が少し動くようになった為、後方に向かって巨大な竜巻を両手から繰り出す。
「はぁはぁはぁ…」
くそ…想像以上のダメージだ。
ピカッと遠くが小さく光って僕の方に向かってくる。
「マジかよ!!」
何とかビームを避けて体制を立て直す。
さて、なんとか避けたけどどうしようか。カウンター狙いってのもさっき失敗したし、むやみに近づいてもまたこっちがダメージを受けるだけ。かといって遠距離からじゃあいつを倒せるような技なんてないし…。結局近づくしかないのか。
何とか隙を作って、まだ未完成だけどあれを使ってみるか。でもあれには反動が、そんな事を気にして勝てる相手じゃないな。
とりあえず奴の攻撃は口からのビームと突進、そしてその巨体を利用した攻撃くらいで比較的読みやすい。でもどれも威力がとんでもないからまともに受ければ無事じゃ済まない。
よし、いくか。
僕は風を体中に纏って飛行の速度を上げて、飛んで行く。
今度は待つのではなく自分から向かって行く。
「風刃」
もう一度両手に風の刃を纏わせる。そのままビエルに向かって行く。向こうは口を開けてビームを撃つ構えをしている。ためが今までよりも長い。
直線距離が二十メートルくらいになったところでビエルがそれを放つ。速度は今までの比ではない速さで、さっきよりも太い。
でもそれ自体は直線なので避けるのは難しくない。が、今回は避けない。特別性の左腕を盾にしてまっすぐと突き進んでいく。
この左腕は五ヶ月の修行で気が付いたのだがある程度の攻撃は特別な素材でできているためはじくことが出来る。それに並大抵の攻撃では壊れない頑丈さも兼ね備えていて、自分の攻撃の反動もある程度緩和してくれる。この左腕は風斧に次ぐ第二の武器なのだ。
その腕ではじきながら進んでいきビエルの目の前に出ることが出来た。
「なっ…!」
ビエルは僕が目の前に出てきた驚きで一瞬動きが止まる。でもあの技を使うにはまだ足りない。だからもう少しダメージを与えて動きを止めなければならない。
「風刃乱舞」
風刃の状態で敵を何度も無造作に切り付ける技。それに体に風を纏っているから僕自身の動きも通常の数倍近い速さになっている。
スパン、と肉が裂ける音と共に聞こえてくるビエルの苦しそうなうめき声。
十分にダメージを与えて動きを止めることが出来た。
僕は数メートル後ろに下がって自身に風を纏わせる。今回は速度をあげるための風ではない、簡単に言えば密度を上げた竜巻だ。両手を上にあげて手を合わせる。そしてその両手に巨大な風の刃を纏わせ、僕の体は竜巻に身を任せて激しく回転する。
「鷲獅子槍台風」
それはすべてを貫く槍となり、目の前に敵を排除するために高速で向かって行く。僕自身最初のスタート位置からまっすぐにしか進んでいけない為、敵の動きを止める必要があるのだ。故に未完成。
ゴォォ、と激しい音をたててビエルに向かって行く。ビエルは避けようとするが体がついて行かないようだ。
「ウォォォォ!!」
ズバァァンと巨大な風の槍はビエルの体を貫通した。
「カ…ハ…」
ズシィンと大きな音をたてて倒れたビエルは体から大量の血を流している。
僕は適当なところでそれを解いて立ち止まり口を開いた。
「一回やってみたかったんだよね、必殺技!」
そう、これが僕の必殺技。
「うぷ…気持ち悪…」
高速で回転しつづけるためかなり目が回る。これも未完成である理由の一つだ。




