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幻の獣と人の世界  作者: お終い
第1章【竜王キング編】
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竜王の城へ

 ―――そして特訓尽くしの五ヶ月が過ぎた―――



「行くぞ!」

 俺の掛け声と共に全員が蒼井さんの用意してくれた飛行船に乗り込む。そしてゆっくりと飛行船は浮かびあがり、竜王の城に向かって進んでいく。



「最後に確認しとくぞ」

 フェインがそう言うと全員がフェインのもとに集まり輪になった。

「まず全員が竜王の城の手前で飛行船を降りて三つのチームに分かれる。俺とアリエスのチームは城の外で敵兵の陽動、翼と火月は城の南側にある正門から侵入。そして竜樹と海香とポーのチームは西側の裏門から侵入してくれ」

 全員が黙ってフェインの言葉を聞く。みんな表情は真剣そのものだ。

「敵の戦力は恐らく三千。これは予想だが城の外に二千、中に千だ。どういう風に配置されてるかは分からない、城内部の構造がよく分からないからな」

「済まないな、俺も竜王の城には子供の頃に数回行った程度なんだ」

 その言葉はボルクから何回も聞いた。

「それぞれの部隊に幹部クラスや側近が一体はいると考えていい。能力は以前説明した通りだ」

 幹部や側近の能力は俺は頭に入っている。勿論キングのやアスガルトの能力もだ。

 誰が誰と当たるか分からない為、全員が能力を頭に入れてある。

 少し前にボルクから言われたのだが、こっちの能力もばれているために絶対に油断しないようにとのことだ。



 約二時間程飛行船で移動して、着陸地点に到着した。

「ここから歩いて行くよ」

 蒼井さんがそう言って俺達は飛行船から降りた。

「待て! 読まれてたのか…」

 フェインがそう言った時、俺はしまった、と思った。

 前にもこういう事があったじゃないか、あれは初めてイギリスに行ったときに。

「全員、構えろ!!」

 ボルクのその掛け声で全員が戦闘態勢に入る。

 そのコンマ数秒後、あたりの草むらや岩陰から大量の竜王軍の兵士と思われる幻獣達が襲い掛かってきた。

 全員が敵たちの攻撃を受け止めて反撃する。でも数が多すぎてなかなか前に進めない。

「とばすなよ!」

 蒼井さんの声に全員が反応して、同時に理由を理解する。

 俺達はこの後に幹部クラスの幻獣や王との戦いが控えてるからだ。こんな雑魚達相手に体力を消耗してる余裕などない。

 …くそ! いくらなんでも数が多すぎる。一体一体の幻獣の力は大したことないが向こうは数で攻めてくる。

「何とか俺とアリエスが道を作る!! だからお前らは急いで城に向かえ!!」

 元々フェインとアリエスの役割は陽動だ。

「…済まない!」

 俺は謝ってから二人が作ってくれた道を残りのみんなで走っていく。

「キミ達も行くんだよ」

 突然聞いたことのある声が聞こえてきて、フェインの前にいる敵が肩から血を流し倒れる。

「ルイ…!」

「久しぶり」

 現れたのはルイと約三十体近くのさまざまな種族の幻獣だった。

「ハァァァァァ!!」

 ルイの掛け声と同時に、道をふさいでいた竜王軍の幻獣達が切り刻まれて前に進む道が出来る。

「早く行くんだ!!」

 俺達に背中を向けてそう叫ぶルイの姿を横目に、俺達は竜王の城に向かって走りだした。



 僕は竜樹達が城に向かって走っていって、姿がみえなくなったのを確認した。

「ルイ! 後ろだ!!」

 仲間の声で後ろからの攻撃を避けてカウンターを食らわせる。

「こんな雑魚たちはさっさとかたずけて僕達も竜樹達のもとに向かうぞ!!」

「「「オォォォォォ!!」」」

 全員の士気が高まり自分たちの五倍以上の数がいる幻獣達を倒していく。


 竜樹、ここにきてるのは僕だけじゃないぞ。僕が信頼している仲間たちが沢山来ているんだ。いざというときは必ず力になってくれる心強い仲間たちだ。

 ―――竜樹、勝てよ。




 何とか俺達は全員で城の前まで到着出来た。

 途中何度か竜王軍の幻獣達が襲ってきたが、特別強くもなく数もそこまで多くなかったので比較的楽に来れた。

「でかいな…」

 初めて見た竜王の城は異常なまでに大きく、思っていたほどお城といった感じがしない。城と言うよりは巨大なホールを少し城に近づけた程度にしか見えない。

「中は前に行った通りかなりシンプルなはずだ、今回の為に改造とかしてなければな。キングのいるとこまで広い部屋が五~六あるくらいだ。急ぐぞ!」

 ボルクが確認のためにそう言ってくれた。が、瞬間ぞろぞろと大量の幻獣達が俺達の前に現れた。

「ここは通せないんだよねぇ」

 いきなりあたりが曇ったように暗くなり、ゆったりしたような声が聞こえてきた。

 声につられて全員が上を見上げると異常なまでにでかい何かが空に浮いているのを確認できる。

「い…いきなりお前か」

 ボルクが僅かにそう言ったのが俺は何とか聞こえた。

 その巨大な何かが地面近くにまで降りてきて、周りに竜王軍の幻獣達が集まる。

「あんたらは通さないようにってキング様から言われてるんでね、おれっちの相手してもらうよ」

 俺達の目の前にいるそれは何かクジラのように見える。でも頭からは巨大な一本の白い角が生えており、ひれの代わりに水色の翼のような物も生えている。

「奴は竜王軍の幹部の内の一体、陸クジラのビエル。油断するなよ、奴は強いぞ」

 ボルクが改めて説明してくれたが、相手が強いことなんて分かっていたんだ。油断なんかしない。

「竜樹君、君は先に言ってくれ。他のみんなもだ」

 蒼井さんが数歩前に出て俺達にそう指示した。

「この後もまだ敵は多い、君たちは少しでも体力を残しておくんだ」

 正論だが蒼井さんを一人で戦わせる理由にはならない。

「僕は大丈夫だから心配しないで」

 蒼井さんが俺達の方に僅かに視線を向けた。まるで俺の心が読まれてるようだ。

「おめーがおれっちの相手してくれるのか、強そうには見えねぇけどな」

 ビエルが蒼井さんを見つめてニヤリと笑う。

「そうだね、この中で一番強いのは僕じゃないからね。でも安心して、君よりは強いから」

「言ってくれんじゃねぇの、人間風情が」

 ビエルのその言葉が終わらないうちに蒼井さんはビエルに向かって行った。

「向こうは蒼井さんに任せよう。私達は先に」

「行かせねぇよ!!」

 ビィンと音がして俺達の前の道の一部が焼け焦げる。

「オラ! もう一丁!!」

 ビエルの口の中が激しく光る。

「だから、君の相手は僕だっての!!」

 蒼井さんがビエルの顎を下から殴り上げる。大きく開いた口は勢いよく閉じて、ぼふっと煙が出てきてビエルの動きが一瞬止まる。

 俺達はその一瞬を見逃さずに城の中に入って行く。

「絶対に追い付いてきてね!!」

 姉ちゃんがドアが閉まる前に城の中で振り返って強く叫んだ。

 俺には蒼井さんの表情は見えないけど、なんだか少し微笑んでるような気がした。




「おめー置いてかれちまったなぁ」

「聞いてなかったのかい、陸クジラ君。みんながここを僕に任せてくれたんだよ」

 僕は風斧を取り出して肩に担ぐ。

「そーかい。んでこの数をどうするんだい? おめーは一人、こっちはおれっちを含めて千二百。おれっちならやりたくないね」

 僕は一呼吸おいてから風斧を持ってない左手を前に出して風を起こす。そしてそれが手のひらの上で小さな渦を描いたらそれを地面の上に放り投げた。そしてもう一度手のひらで小さな渦を起こして地面の上の渦にぶつける。すると地面にあった渦が一回り程大きくなって、起こす風も強くなる。そして右手の風斧の上にも小さな渦を起こして地面にある渦にあてる。それを高速で何度も繰り返す。すると小さかった渦がだんだんと大きくなり、最後にかなり大きめの渦をぶつけることで大きさは一気に陸クジラの大きさと同じくらいになった。風の強さは人間大の大きさの岩が簡単に吹っ飛ぶほどの強さとなった。

「ほう」

 つまりこれは台風だ。決して現実にないくらいの強さの。

 ゴゴゴと凄まじい音をたてて動き出したその台風は次々と竜王軍の幻獣達を吹き飛ばしていく。

「うわぁぁぁぁ!!」

「あぁぁぁぁ!!」


 しばらくして竜王軍の幻獣は陸クジラのビエル以外いなくなった。竜巻はどこか遠くに行った。

「そんなすごい技があるなら最初から使えばよかったじゃん」

 あれだけの技を見せたのにビエルは余裕たっぷりといった感じだ。

「制御が難しくてね、仲間を巻き込んじゃうかも知んなかったから。それにしても陸クジラって口からビームが撃てるんだね、初めて知ったよ」

「普通の陸クジラは撃てねーよ。おれっちだから出来んの」

「エリートってことかい」

「そーゆーこと」

 そして少しの間が空いて僕は風の刃を飛ばし、ビエルは口からビームを撃った。それは僕たちの丁度真ん中あたりで激しい火花を散らした。

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