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幻の獣と人の世界  作者: お終い
第1章【竜王キング編】
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湖の人魚

 竜樹が眠ったのを確認してから私はさっき竜樹のと一緒に持ってきた水を飲んだ。

「うみちゃんさっきなんて言ったの?」

 フラスちゃんが私の左腕あたりからニヤニヤした顔を出して聞いてきた。右腕からはソラスちゃんが顔を出していた。

「き…聞こえてたでしょ……」

 私はさっきの自分の行動とセリフを思い出して恥ずかしくなり、自分でもわかるくらい顔がほてっていた。

「うみちゃん、今なら何しても抵抗できないから平気だよ!」

「げほっげほっ」

 フラスちゃんが私の腕から出てきて耳元で囁いた。私はそのフラスちゃんのからかうような態度に飲んでいた水でむせてしまった。

 ソラスちゃんは右腕から顔を出すだけでちゃんと理解できてないようだ。

「とりあえず、今は竜樹をゆっくり休ませてあげるのが一番だから」

 私は何とか話をまとめてフラスちゃん達を自分の中に戻した。そして少しぬるくなってしまった濡れタオルを水につけてから絞ってまた竜樹の額の上に置いた。

 今回は竜樹には、みんなには沢山迷惑かけちゃったな。でもみんな多分迷惑なんて思うなって言って笑ってくれるんだろうな。短い間だけど私が一緒に旅した仲間はみんなそう言う人だ。人じゃないのもいるけどその彼らもみんな最高な仲間なんだなと改めて思う。

 私はふと思った。もしも、竜王を倒したらフラスちゃんやソラスちゃんはどうなるんだろうか? 彼女達はその後も、平和になった世界でずっと友達でいられるのだろうか? いや、幻獣である彼女たちだけじゃなく竜樹やかづ、蒼井さんにアリエスさんとも友達でいられるかな? いられるに決まってる、竜樹達も笑顔で「当たり前だろ」って少し照れながらいつもの安心する声で言ってくれる。私達は元々性別も、年も、職業も、住んでいた世界すら違うけどそれでも見えない絆で繋がれた“仲間”なんだ。


 すると遠慮がちにドアをコンコンとノックする音が聞こえて返事をするとかづがドアを開けて入ってきた。

「竜樹の調子はどう?」

 かづがベッドの横まで歩いてきて私に向かってそう言った。

「今のところ大丈夫かな」

 私はかづの顔を見ながらそう言った。かづも私の隣にイスを持ってきて座った。

「竜樹はね、ずっとうみのことを心配してたんだよ。いや、竜樹だけじゃなくみんなも」

 かづは静かに喋り出した。

「途中にね、オルトロスとケルベロスっていうアンナが雇った傭兵が襲ってきたんだ。竜樹が言ってたでしょ? 三つ首と二つ首の傭兵さんって、その二体のことなんだよ。二体ともすごい強かったけどすごい良い幻獣だったんだ」

 竜樹の手の上に自分の手を重ねながら喋るかづの目はとても優しく見えた。

「私達は何とか二体を倒して進もうとした時にその二体ががうみの居場所を教えてくれたの」

「もしかして脅したりでもしたの?」

 私はそんな事無いとわかっていながら少し口角を上げながら言った。

「ふふっ、よくわかったんじゃん」

「え!?」

 私はかづのその言葉を聞いて彼女の顔を覗き込んでしまった。

「ウソに決まってんじゃん、ていうか彼らは強い心を持ってたからもし脅しても無理だったろうね」

 ……そうなのか。普通にかづの言葉を信じてしまった。

「まぁ、その二体には今回は色々助けてもらったの。もう一回くらい会いたいな」

 私はそのオルトロスとケルベロスには会ったこと無いので、会ってみんなを助けてくれたことをお礼を言いたい。この二体に会うためにも、竜樹達と一緒にいるためにも私たちがやるべきことは竜王を倒すこと。ここまで来たけどまだ私たちが世界を救うために旅してるなんて実感が少ない。

「私はもうそろそろ寝るね、もう時間も遅くなってきたし」

 かづは立ち上がってからそう言って私を見た。

「あぁ、それと」

 かづはドアノブに手をかけたところで何かを思い出したかのように立ち止まって私の方を見た。

「竜樹が起きたらもう一回ちゃんと言ってあげな」

「何を…?」

 私はかづが何のことを言っているのか分からなくて聞き返してしまったが、すぐにさっきのことを言ってるんだとわかってしまった。

「ちゃんと言わないと私がもらっちゃうよ」

 声を弾ませて笑顔で冗談ぽく言うかづに、私は同性なのに可愛らしいと思える魅力を感じてしまった。






「あ、起きた?」

 目が覚めると海香が座ったまま俺の顔を覗き込んだ。

「おはよう」

「うん、おはよう竜樹」

 海香が笑顔であいさつを返してくれた。その笑顔を見て俺は寝る前のことを思い出してしまい、海香の顔を直視できなかった。

 体の疲れやだるさはほとんどなくなっており、動くのになんら問題はなかった。

 俺はベッドから立ち上がってみんなのもとに向かおうと思ったけど、時計を見てやっぱりトイレに行くことにした。

「大丈夫? 肩かすよ」

 海香がそう言って俺に肩を貸してくれた。すぐ右側には海香の横顔があり、とてもいい匂いがした。俺は少し視線を下にずらすと視界の端に海香の胸元がチラッと見えた。ような気がした。俺は勿論二度見するとあまり高くない山を視界にとらえることが出来た。あまりない谷間といい匂いに俺は別の意味でトイレに行きたくなってしまった。

「も…もう大丈夫だよ」

「そう?」

 俺は中腰になりながらトイレに入ってそれが収まるまでじっと立っていた。

 数分後、俺は用を済ませてからトイレから出て、部屋に戻った。そこには海香もいた。フラス達は眠ってしまったようだ。

「ボルク」

 俺が呼ぶとボルクはすぐに顔を出して返事してくれた。

「これから…どうするんだ?」

 俺は思っていたことを素直に聞いてみた。

「…はっきり言って決まってない。みんなが起きたら話して決めようと思う。」

 結局アンナに索敵具は作ってもらえなかったし、時間も無くなってきている。個人的にはもっと特訓がしたいと思っているけど、みんなの意見も聞きたい。



 俺はまだ暗い中旅館の外に出てみた。

 特別何かしたかったわけでもないし、外の空気が吸いたくなったってわけでもない。ただなんとなくだ。

 世界を救う英雄になるって言って旅を始めたけど、本当に俺なんかが世界を救えるのだろうか? ここまで来たけどまだそんな実感がわかない。

 俺は自分の頬を両手でパチンとはたいてから走り始めた。ジョギングするような感じで。

 まだまだ外が明るくなるまでには時間がある。丁度いいからこの島がどんくらい広いから調べてみよう。別に調べてからどうするってわけでもない、ただ、なんとなくだ。



「はぁ…はぁ…」

 とにかく広い。一時間程軽く走ったけど、島の端にすらつきやしない。ボルクは起きてこないし、あたりもまだ暗い。

 この島は実界を移動してるって言ってたけど、今はどのあたりだろう。

 そんなことを考えていたらとても大きな、そしてきれいな水色をした湖が見えた。

 俺はしゃがんで両手でその湖の水を手ですくった。本当にとてもきれいだ。

 見た感じかなり深いのだが透き通っていて魚なども良く見える。

 ここには俺達が知っているような魚もいるんだな。何だろう…ニジマスとかかな。

 お、結構大きな魚もいるな。多分俺の身長と大差ないだろうな。


 そろそろまた走り始めるかな、って思って立ち上がって歩き始めたところで何かぬるっとした冷たいものに足首を掴まれた。

「へばっ!」

 俺は見事に漫画のように倒れてしまった。

「な…なに…」

 俺は倒れたまま後ろを見ると、そこには水色の長い髪をしたぱっちりとした目の可愛らしい顔の女の子が湖から顔と手を出していた。

「ふふふっ、ださーい。両手あげて変な声上げちゃって」

 そう言って笑う湖から顔を出した女の子の顔はまるで小悪魔のように見える。

「……なに…」

 いきなりいたずらされ笑われたことで若干の嫌悪感を抱いてしまう。

「ごめんね、ここっていつも誰も来ないから寂しくって」

「…で? 俺にいたずらしたの?」

「うん。本当にごめんね、私はミリア」

 彼女はそう名乗って俺に握手を求めてきた。

 まぁこんだけ謝ってるし許してやってもいいかな。

「俺は竜樹だ、よろしく」

 そう言ってその手を握った、けど濡れてる。

「てゆうかいつまでそこにいるの? 上がったら?」

「そうだね」

 ミリアは岸に手をついてぴょこんと出てきて座った。

 童話や昔話なんかでよくモデルになるような姿をしていたミリアは俺でも人魚なんだと理解する。

「人魚?」

「そうよ、あなたは見たことないけど…なんて幻獣?」

「俺は人間なんだ」

「ニンゲン…? 聞いたことないよ…」

「うーんとね、実界に沢山住む生き物」

「あー…なんとなく聞いたことあるかも」

 ミリアは尾びれ(?)で水をちゃぷちゃぷさせながら空を見ていた。


 …てゆうか意識しないようにしてたけどかなり胸がでかい。本当に小玉のスイカが入りそうなビキニをつけている。

 俺は巨乳か貧乳かどちらが好きか、と聞かれれば即答で貧乳と答えるが、勿論巨乳が嫌いなわけではない。なので目の前に大きくても小さくても、おっぱいがあったら見つめてしまうのである。

「ねぇ、聞いてる!?」

「え! おっぱ…」

「ん?」

「いや何でもない」

 危うくおっぱいと言ってしまうとこだった。

「だから、私って陸を歩けないからさおんぶしてどっか連れてって」

「ん? いいよ」

 普通にオーケーしてあげた。

 そう言って俺はしゃがんでどうぞって手で合図した。

「あぁ、でも水はらってからにしてもらえる?」

「それは無理」

 即答された。

「乾いたら死ぬ、ってのは流石にウソだけど乾いたら少し苦しいかな。だから歩くのもこの近くでいいよ」

 俺は溜息をついてから自分の背中にミリアを乗せてあげた。


 俺は立ち上がってからゆっくりと歩き出した。

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