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幻の獣と人の世界  作者: お終い
第1章【竜王キング編】
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幻獣職業生活安定所

「ここだ」

 俺達の目の前にはボルク達がいうゲートがあった。

 それはよく漫画やアニメで見るような異世界につながってると容易に想像できるような物ではなく、巨大な門のようなあたりの木々に紛れるような緑色をしたドアがあった。

 俺は気合を入れなおしてそのドアを両手で力強く押した。が、ピクリとも動かない。引く為の取っ手も見つからないので蒼井さんに一緒に押してもらってもピクリとも動かない。

「竜樹君、いくよ」

 俺達はその後は体当たりをゲートに向かってしようとしたがボルクに止められた。主な理由は二つあり、無理にゲートを開けると幻界と実界のゲートの周辺が吹き飛ぶ程の爆発を起こすから。あともう一つはスライド式だから。

「空いたから早く行くよ」

 姉ちゃんが左手でそのゲートの右端にあるくぼみをつかんで開けてそう言った。

「お…おう」

 俺と蒼井さんはは少し恥ずかしくなったけどそのゲートの中に飛び込んだ。姉ちゃん達も後に続いて飛び込んできた。

 すぐに足が地面につく間隔がして後ろから姉ちゃん達もすぐに来た。そこは初めて見る世界、と言う感じがした。そこはヨーロッパの中世のような雰囲気をしているが明らかに違くて、ところどころ見たことのない建物や生物、オブジェクトがあった。俺達はそんなのを気にせずにその奴隷ショップに向かって走った。



『幻獣職業生活安定所』、通称奴隷ショップ。それは幻界全域にあり、今も奴隷となって苦しんでいる幻獣達がいる。奴隷になった者は知性ある生物としての生活を許されず、ただ飼い主の言う事を聞いて自害することも許されずに労働力として、性玩具(おもちゃ)として、玩具として、ペットとして、オブジェクトとして暮らす日々が死ぬまで続く。

 勿論このようなことはドラゴン達の決めた法によって禁じられているが、どこの世界にも表と裏があるために光がある限り影が無くなることはない。

 と言った説明をボルクが案内しながら説明してくれた。

 町にいる幻獣達は俺達を珍しいものを見るようにこっちを見ているが気にしないで走り続ける。

「痛ッ!」

 俺達がそのまま三十分程走ったところでソラスが声を上げた。

「どうした!」

 俺は足を止めてソラスの方に振り向いた。

「だ…大丈夫。早く海香のとこに行こう」

 ソラスは首を抑えながらそう言って走り出した。

 俺はいつの間にか無意識のうちに走り出したソラスの腕をつかんでいた。

「な、何? 急が……どうした?」

「え?」

 ソラスの声の調子が突然変わったことに驚いてしまったが、何故かみんな俺の顔を覗き込んでいる。

「どうしたの? そんな辛そうな顔をして………」

 フラスがそう言ったが自分がどんな顔をしているのか自分で分からなかった。

「いや……何でもない……」

 俺は自分の行動が理解できなくて、少し動揺してしまった。

「………行こう」

 蒼井さんがそう呟いて俺達はまた走り出した。

「大丈夫だよ。私たちは誰も傷つかない、死ぬこともない」

 姉ちゃんが俺の横に並んで俺の手を掴んでそう言ってきた。俺はその言葉とぬくもりに涙が溢れそうになったがそれをこらえて走り続けた。途中反対側から歩いてくる幻獣とぶつかりそうになったがそれでも走った。ただただ海香の無事を祈って。



「ここだ」

 俺達は走って着いた場所は巨大なサーカスのテントのような場所についた。俺は気持ちが抑えられずに目の前にあったカーテンのように巨大な布が垂れ下がったドアのような物を開けて入ろうとしたその瞬間、

「左に跳べ!!」

 ボルクのその声が聞こえてみんな一気に左に跳んだ。するとほんのコンマ数秒前までいた場所にズドンという大きな音がして地面に一メートル程の穴が四個程空いた。

 俺達はそれが自分達に向けられた攻撃だと判断してあたりを見回した。

 するとそこには恐らくルイと同じであろう銀髪をしたエルフが四人、剣を体の真ん中に構えていた。

「手荒な真似をして申し訳ありません。ここは完全会員制となっておりますので会員証を見せて下さい、お持ちでない場合はここに入る事をお許しすることは出来ません」

 リーダーと思わしきエルフが一歩前に出てそう言った。

 俺達はここが会員制なんて知らなかったし、勿論会員証なんか持ってない。だが俺達はここに入らなければならない理由がある。例えそれが不確定な情報でも仲間がいる可能性が少しでもあるならば。

「すまない、会員証は持ってない。でも俺の友人がここで売られているんだ! だから通してくれ」

 そんな説明で通してもらえるはずなんて無いのだが俺はつい言ってしまった。

「……友人が売られている? 何を言ってるのですか、ここの名前を知っていますか? 『幻獣職業生活安定所』って言うんですよ、幻獣達がよりよく快適に生活するためのモノを売ってるんですよ」

 リーダーらしきエルフがニヤニヤといやらしく笑ってそう言った。

「どうしても欲しかったらここのやり方で手に入れて下さい」

 もう一人のエルフがそう言ってニヤニヤと笑った。

 ここのやり方で海香を返してもらうとしても俺達には手持ちの金はそんなに多くない。幻界での富豪たちが集まるらしいこういった場所は、いくら幻界の守護幻獣だとしても逃亡者であるボルク達に勝ち目はない。

「うるさい! いいから中に入れろ! 海香が中にいるんだよ!」

 俺は高ぶる感情を抑えられずに、確証もないのにそう言ってしまった。そして俺は無意識のうちに腕を振り上げて目の前にいたエルフの頬を殴っていた。

 するとエルフの体が数メートル吹っ飛んだ。

「あなた達殺しますよ、営業妨害で」

 なんと物騒な、営業妨害しただけで殺されるのか。でも好都合だった、こいつらを倒せば中には入れるらしいみたいだ。周りには他に同じような恰好をしたエルフが二人ほどいた。俺は蒼井さんをチラッと見ると蒼井さんと目が合って僅かにコクリと頷いた。

 俺と蒼井さんは一歩前に出て目の前にいた二人のエルフを同時に思いっきり殴った。するとその二人は数メートル吹っ飛んだ。力による解決はあまり本意ではなかったがそんなことを言ってる場合ではなかった。俺に他の解決法を見つけるような心の余裕はなかった。

「……これは完全な営業妨害ですね、死んでもらいましょう」

 さっき俺達が殴ったエルフが立ち上がりながら言った。そしてもう二体のエルフが俺達の方にきて剣を素早く振り下ろしてきた。

 俺は腕に鱗を出してその二つの剣をガキンという音を出して受け止めた。すかさず横から蒼井さんが小さな竜巻を纏った右拳で右側にいたエルフの脇腹を殴った。ゴウッという音がしてそのエルフがもう一体のエルフを巻き込んで吹っ飛んだ。そのエルフが地面に落ちて数秒してから立ち上がって、今度は三体で俺達に向かってきて近接戦をする形になった。リーダーらしきエルフは攻撃をしてこない。俺と蒼井さんはその三体の攻撃を何とかさばきながら攻撃の気をうかがう。するとフラスが俺達の後ろからサポートの魔法で三人のエルフの足元を凍らせて動きを止めてくれた。そして俺達はその一瞬の隙を見逃すことなく三人に、俺と蒼井さんは電撃と風を纏った正拳を叩き込んだ。でも一発ずつしか叩き込めずに三人の足元の氷がバキィと音をたてて砕けて三人のエルフは左右に跳んだ。すると間髪入れずにリーダーのエルフが剣の先が俺達の方にすごい勢いで突き出して来た。

 俺は避けることは困難だと判断して鱗を出して、蒼井さんは小さな竜巻を出してお互いに防御しようとした。が、完全に防御することは出来ずに突きそのものは鱗で止めることは出来たが、とてつもない衝撃でガードに使った右手がビリビリと痺れてしまった。

「ぐッ………」

 狙いは蒼井さんではなく最初から俺だけだったのだ。

 蒼井さんは俺の方を横目で見て無事なのを確認してから、刃のような風を纏った手刀でそのエルフに向かって攻撃をくりだした。エルフは驚異的な反応速度でその攻撃に反応して後ろに跳んだ。スタッとエルフが着地してからエルフの左頬からわずかな血が流れた。エルフは手の甲で血を拭いながら俺達をにらみつけてきた。

 するとフラスが俺達にスピードアップの魔法をかけてくれた。俺は少し驚いたが、エルフたちの方をチラッと見てから地面を強く蹴って走り出した。そして俺は鋭い爪の形を模した電撃を両手に纏ってエルフに向かってまずは右手を振り下ろす。肩のところから腰のところあたりまでその爪で切り裂いた後にそのエルフの傷口からバチバチと音がしてその傷の上を電撃が走った。

「ごはぁ!!」

 そのエルフはその一撃で気を失って倒れた。

 俺は続けて別のエルフに攻撃を仕掛ける。そいつとは少し距離があったため、雷銃を素早く取り出して三発弾を打ち込んだ。でもリーダー格のエルフが剣でそれをすべてはじいて俺の方に向かってくる。俺もそっちに走っていきエルフの前でアッパーを繰り出した。いつもよりもフラスの魔法のおかげで動き全体のスピードが速くなっているおかげか、それはガードされずにエルフの顎に勢いよく当たった。俺はすかさずに左手でエルフの頬にストレートをぶち込んだ。そして一瞬の隙ができたと同時に蒼井さんがエルフの腹あたりにパンチを入れてからその拳を中心に小さな竜巻を起こす。

 するとガガガガとと音がしてリーダーのエルフの体がものすごい勢いで回転しながら後方に吹っ飛んで壁に大きなくぼみをあけた。そのエルフは力なく地面に倒れるとそのまま動かなくなった。

 俺はいつでも攻撃できるように構えながら近づいて行って死んでないことを確認した。周りを見ると既に他のエルフは倒れていた。恐らく蒼井さん達が倒したのだろう。

「済まない」

 俺の口からは自然に言葉が出ていた、なぜそう言ったのか理由は分からないけど。俺は倒れたエルフ全員を見てから蒼井さん達の方を見た。

「行こう」

 蒼井さんのその言葉に俺達は頷いてカーテンのようなドアをくぐった。

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