竜巻
「ねえ、お父さんってどういう事?」
雲空島を目指してイギリスから出発してから姉ちゃんが聞いてきた。
「はっ! まさかフェインは私たちの本当のお父さんってこと!? 私って人間とウェアウルフのハーフだったのか!!」
「ちがうから」
俺は少し興奮している姉ちゃんを落ち着かせてから説明をした。
「フェインって二児のパパなんだって」
一緒にいた海香までそれを聞いて数秒固まっていた。見た目から年齢がわかりにくいからそう言うのは全くと言っていい程予想ができないのだろう。俺も予想ができなかったから初めて聞いた時は同じような反応をした。
「そう言えばボルク」
「なんだ?」
そんな二人をほっておいて俺はボルクに話しかけた。
「雲空島に行く目的ってなに?」
「そこに行ってとあるアイテムをもらう。顔見知りだから問題ないと思うぞ」
「とあるアイテムって?」
今度は海香が聞いた。
「秘密だ」
ボルクは教えてくれずに、先に進むように言ってきた。その後のボルクの話によると雲空島まではそこまで遠くなく、朝出発したので今日の夕方には着くみたいだ。
「あといいかな」
蒼井さんが口を開いた。
「分からない事っていうか疑問があるんだけど」
「どうした?」
ボルクがその言葉に反応した。
「なんで敵は僕たちの居場所が分かったの?」
……確かに、言われてみればなぜわかったのか気になる。
「恐らく向こうに『監視者』がいるんだと思います」
カイエンが落ち着いた声で答える。
「監視者って何?」
「まだ推測の域を出ないので何とも言えませんが…恐らくガーゴイルかと。ガーゴイルは右目に千里眼、左目に透視眼を持っていてその視線からは逃げられないと言われています」
そんな奴がいるのか。はっきり言ってそいつは早めに潰さないとまずい気がする。
「あともう一個あるんだけどいいかな」
蒼井さんがカイエンの言葉の後にまた口を開いた。
「竜王と対立してるのって僕達だけなの?」
「いいえ」
「じゃあなんで僕たちをピンポイントで狙ってくるの?」
「それは………わかりません」
「一番危険だと思われてるんじゃない?」
姉ちゃんが冗談ぽく言った。
その後も俺達は飛び続けて、ちょうど日が沈みかけてあたりが橙色に染まった頃に雲空島の近くにまで着いた。ボルクはもう見えてるぞって言ってるけど俺には島らしきものは全く見えず、見えてるのはとてつもなく巨大な竜巻だ。
「ねえ、どこ……?」
姉ちゃんが辺りを見回しながら言った。みんなで探しているけど全く見つかる気配すらない。
「そこ」
ボルクが俺の腕のところからひょこっと顔と手を出して巨大な竜巻を指さして言った。
「………は?」
「だからあの中」
またもボルクが竜巻を指さして言う。
「いやいやいやいや、おかしくない? だって竜巻の中だぜ?」
「うん、竜巻の中。大丈夫だから、中は風強くないから」
こいつわざととぼけてるのか?
「だからどうやって行くのあの中に?」
今度は海香が聞いた。俺と同じことを思ってたみたいだ。
「それは私にいい考えがあるよ」
フラスが海香の腹の部分から顔を出して言った。
「どっから顔だしてんのよぉぉ!!」
海香が顔を赤くしてフラスの顔が出てる自分の腹のあたりを殴った。
「おふぅ……」
フラスはそのタイミングに合わせて顔を引っ込めて、結果的に海香は自分の腹を自分で殴る感じになってしまった。幸いあまり力はこめてなかったらしくそんな痛くないようだ。
「それでいい考えって?」
俺はフラスに聞くと、今度は海香の腕のとこから顔を出して言った。
「力ずく」
ですよねー。そんな事だろうと思ってました。
フラスは人差し指を立ててウインクしてごまかしてるけど結局は無理やりってことか。
「この竜巻なんか変だよ」
蒼井さんがいつの間にか竜巻の近くにいて右手を前に出して言った。
「この竜巻外からかなり入りづらくなってる。そのかわりに中からは簡単に出れる仕組みになってて、外から生身で入ったら普通の人間ならバラバラになるだろうね」
蒼井さんのその言葉を聞いて海香と姉ちゃんは血の気が引いていて青くなっている。
「でも、僕達は」
蒼井さんがほほ笑みながら俺達の方を向いて言った。俺は蒼井さんの方を向いて少し口角をあげながら
「普通の人間じゃない!」
拳を前に突き出して言った。
「……ばかじゃない?」
「男子ってこういうのがあるからやだ」
「人間の男って無駄にアツいんだね」
後ろの方から女子達の冷たい声が聞こえてきた。
「じゃあ出来たら呼んで、家の中にいるから」
姉ちゃんがそう言うとフラスはポケットから手のひらサイズの家を出し、ボタンを押して家を大きくした。今回は空中で浮いたままだった。
女子達は俺達の返事を待たずに家の中に入っていってしまった。
俺のテンションは若干下がってしまったが、それでもまだまだテンションは高かったので蒼井さんと共に竜巻に向かって行った。
「とりあえず、僕からいい?」
蒼井さんが目を輝かせながら言ったので仕方なく俺は先を譲った。
「なんかこういうのってワクワクするよね!童心に帰っちゃうよね、まあ帰るには相手がでかすぎるけどね」
蒼井さんはいつの間にか手に風斧を持っていた。
「技考えたんだけどさ見てて」
いつもの蒼井さんよりも三割増しでテンションが上がってる気がする。
「ハァァァァァ!」
蒼井さんは風斧を構えて力を込めるように声を出している。すると風斧の刃の部分に風が集まっていき、刃の形をした巨大な風が刃を包んでいく。風に形があるというのもおかしな話だが、実際にそう見えているのだ。
「うらぁぁぁぁ!!!」
その声と共に構えていた風斧を振り下ろし、刃の形をした風がゴウッというすさまじい音を出して竜巻の方にとんでいく。
「おぉ―――!」
俺は驚きの声をあげてしまった。
蒼井さんがとばした風は竜巻の方に向かっていったが、その風よりも竜巻が起こす風の方が強く、それはあっけなく消えて言った。
「……まあこうなるのはわかってたけどさ、昔からさ必殺技とかに憧れてついに自分だけの必殺技をもてたんだよ?一回くらいやってみたいじゃん? 僕だって男の子だし」
蒼井さんもやっぱり俺と同じ男なんだなあと改めて感じた。
「次は俺ね」
「どうぞ」
俺は雷銃を出し、竜巻に銃口を向けて構えをとる。
試しに電撃を流し作った弾を撃ってみる。その弾は竜巻に当たる事すらなく、風で押し返されて下に落ちて行ってしまった。
今度は超電磁砲を撃ってみる。あれはかなり体力を持ってかれるのし、多分当たっても突破出来ないだろうから抑えめに撃ってみる。バチバチッと音がして、撃った超電磁砲は案の定竜巻に当たりすらしなかった。
「………」
「………」
二人の間に沈黙が流れる。
「……………」
「……………」
俺達はお互いの顔を見合わせてコクリと頷いてから、それぞれの武器を手に持って構えをとる。
俺達は無言のまま竜巻に近づき、
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
蒼井さんは無我夢中で風斧を振り回し、俺は弾を連射しまくる。
そして俺は雷銃をしまい、体中から竜巻に向けて電撃を放出する。蒼井さんも風を起こしまくる。
「………で、何も起きずに帰ってきたと」
姉ちゃんが玄関で呆れたように言った。
「はい」
「申し訳ない」
俺と蒼井さんはバテバテになっていてその場に腰を下ろしながら言った。俺達が戻ってきたころには辺りは真っ暗になっていた。
「考えてわかんない?」
海香が俺達を見下ろすように言った。
「アッハッハッハッハッハ」
「プフフフフフ」
二人の後ろで笑っている魔女二人はほっておいて俺達は家に上がり海香たちが用意してくれていた飯を食べた。因みにおかずにから揚げがあったのでボルクのテンションがかなり上がっていた。
その後はとりあえずあの竜巻攻略は明日することになったので俺は風呂に入ってその日はすぐに眠りについた。




