会話
俺達は一旦家に戻ってありったけの食糧を袋に詰め込んでからルイ達のもとへ飛んで行った。
戻った時はルイの目はいまだ閉じたままだが呼吸はさっきよりもしっかりしていて、ちゃんと回復はしてきているようだった。とは言ってもまだ弱弱しい。
周りにはいまだおぞましい量の血の跡が残っていた。さっきは気付かなかったがところどころに小さな肉片が転がっている。
俺は右手で口を押えて吐き気を抑え、フラスに様子を聞いた。
「はっきり言って生きてるのが不思議な状態だったよ。今は少し安定してきてるけどまだまだ油断できないね」
二人とも額から流れてくる汗など気にも留めず、治癒を続けていた。
俺は姉ちゃんからハンカチを受け取りフラスの汗をぬぐってあげた。
「ありがと」
フラスは少し口角をあげてそう言った。でも視線はずっとルイの方を向いていた。
海香も俺と同じことを考えたのかソラスの汗をぬぐってあげていた。ソラスは何も言わず、視線を海香の方に向けることもなく、ルイの治癒を続けた。
その後ルイは何とか一命をとりとめたものの、治癒は二人がかりでも半日以上かかってしまい終わった時には辺りは暗くなっていた。時刻は深夜の零時をまわっていた。
ルイは傷口もしっかり閉じていて、しっかり呼吸をしていて、生きているとわかる。来ていた服は大半が爆発で焼け焦げてしまった為、さっき一緒に持ってきたジャージを着せた。
フラスとソラスは額にびっしりと汗をかいていて疲労もしているのが目に見えてわかる。半日以上ずっと気を抜かずに治癒をしていたのだから無理もない。
俺と蒼井さんとフェインはそれぞれルイとソラスとフラスをおぶって姉ちゃん達と一緒に帰った。因みに俺はフラスをおんぶした。蒼井さんがソラスを、フェインがルイを担いだ。フェインも肩に怪我をしてるはずだが「関係ない」と本人は言っていた。
俺は家に帰るまではずっと不謹慎だが自分の煩悩と闘っていた。背中に当たる二つの柔らかい大きなメロンに疲労して荒くなっている呼吸、肉付きのいいきれいな太もも、すべてが色っぽくて俺の理性の壁が崩壊しそうになった。しかもこういう時に限って普段よりも壁がもろくなっているから大変だ。チラッとフラスの顔を見ると、ぷるんとしたフラスの唇のおかげで壁に穴が空き、俺の背中で眠っているフラスが「ん……」と声を出してもぞもぞ動いてくれたおかげで、それだけでも壁にひびが入るのに二つのメロンがほんの少しこすれただけで、またひびが入る。あと一撃少し大きいのが入ってしまったら理性の壁が崩壊というところで家に着いた。
俺は何とかフラスを本人の部屋のベッドに寝かし、海香に「あとは頼んだ」と言って自分の部屋に戻った。部屋を出る時海香の不思議そうな顔が見えたが、いろいろとギリギリだったのでスルーして自室に戻った。
部屋に戻ってからベッドに横になり、一息つくとボルクに「よく耐えたな」と言われた。俺は少し間をあけてから無言でうなずいた。
その後ルイの目が覚めたのはあれから二日程たってのことだった。因みにフラスとソラスは八時間程で起きた。ルイが目覚めるまでは普通に、とまではいかなかったが何事もなく過ごした。
ルイは目が覚めてすぐに体も満足に動かないのに、みんなを部屋に集めた。
全員が部屋に来た時のルイの第一声は謝罪の言葉だった。
「フレイムギア様、ボルテックス様、そして皆様、数々のご無礼申し訳ありませんでした。お詫びと言うわけではありませんが、僕の知っていることをすべて話すのでどうかお許しいただきたい」
ルイは土下座をして、今までとは違った丁寧な口調でそう言ってきた。
みんながその姿にぽかんとしている中、ギアが口を開いた。
「頭をあげろ」
ルイはそれに従う。
「話してくれ」
今度はボルクが威圧のこもった口調でそう言った。
「はい。まずは人間の方々のために幻界と幻獣について簡単に話しておきます」
ルイはそう言って俺達人間の方を見た。
「幻界は五頭の最上位幻獣であるドラゴン達が監視、守護していることで争いもなく平和な世界でした。その世界で幻獣達は、比較的人間達とよく似た生活をしています。物の売買や娯楽施設などあり、勿論貨幣も存在します。それはすべて五頭のドラゴンと竜王キングのおかげと言っても過言ではありません。でもある日そのドラゴン達が戦争を初めてしまいました。理由などは各々聞いていると思うので省きます。その戦争のおかげでたくさんの力の弱い幻獣が死にました。なのでドラゴンや戦争を憎んでいる幻獣も少なくないです」
ルイは正座したまま全員を見回した。
「少し話しがそれました。僕を捕まえた奴が口が軽いやつだったんでいろいろと聞き出せました。まずフレイムギア様、ボルテックス様以外のドラゴンについてです。まずはアスガルト様、アスガルト様は竜王側につきました。残りの二体のフウリ―様、スイレイン様は行方不明です」
「行方不明だと? どういう事だ?」
ボルクが少し強く聞いた。
「……そのままの意味です。見つかっていないそうです。生きているかも不明です」
「そうか、続けてくれ」
「はい、フェイン様が倒してくださいましたドワーフですが、あれは本当に人間の手によって機械化されております。私はその人間に会ったことも名前を聞いたこともないので何とも言えませんが、確かに人間に改造してもらったらしいです。私が首にしていたペンダントも人間が作ったものです。幻獣が機械化することによって普通なら出来ないような動きや攻撃、守備なんかも出来るようになります。簡単に言うとパワーアップです。実際に対峙したフェイン様ならよくわかると思います」
フェインが軽くうなずいた。
「そしてあなた達がここにいると教えてくれたのが奴らです。だからもうすでにこの場所はばれています。正確には詳しい場所まではばれてないとは思いますが、それでも時間の問題です。あと今動いている奴は大抵が竜王の部下、という立場を利用して好き勝手やってるのばっかです。竜王の側近は閉じ込められてる竜王を護衛することを第一に考えてますので余計なことは全くしません」
俺達のことがばれてるのは結構まずいことの気がする。
「そして竜王は常に上位のA級以上の幻獣たちが守っていて近づくのは困難です」
そしてルイはみんなを見渡してから続けた。
「僕が知ってるのはこのくらいです。他に聞きたいことがあれば僕が知っていることならばお答えします」
「じゃあいいか」
フェインが右手をあげて言った。ルイが「どうぞ」と言うとフェインはすぐに喋り始めた。
「お前を捕まえた奴って誰だ?」
「……ヒュドラです」
ルイが少し間をおいて答えた。
「ヒュドラってどういう奴?」
姉ちゃんが聞くとその質問にはカイエンが答えた。
「九個の首を持ち、性格も獰猛、好戦的で体の大きさは私より少し小さいくらいで、実界にいる蛇という生物のような体を持っています。毒を使った攻撃が得意でそのタフさも異常です」
考えただけでもその姿がおぞましいのがわかる。
その後俺は少し気になってたことを聞いてみることにした。
「幻界にはどうやって行くの?」
前にフェインが限界に行ったときは教えてくれなかったので少し気になっていたのだ。
「幻界と実界の移動には大きく分けて二つの方法があります。一つはしっかりと門をくぐっていく方法、もう一つは魔法で移動する方法です。門をくぐっていく方法は実界のどこかにある門をくぐる方法です」
「どこ?」
「それはフェイン様が教えるな、と目で申しておられますので言えません」
フェインの方を見ると確かにルイをにらみつけていた。
「魔法の方は、魔女の、それもその中でも上位の者しか出来ない瞬間移動の魔法でいっきに幻界までとぶ方法です。こちらならその名の通りどこにいてもすぐに幻界と実界を行き来できます」
「私には瞬間移動の魔法はできないよ」
俺が聞くよりも早くフラスが答えた。フラスに無理ってことは恐らくソラスもできないだろう。
「あとはとくにはないな」
ボルクがそう言うとみんな別々に部屋を出て行った。
「あぁ、お前ら」
廊下で俺と蒼井さんと海香と姉ちゃんはフェインに呼び止められた。
「明日武器渡すからな」
フェインのその言葉に少し嬉しくなってから、俺は部屋に戻った。




